第32話 フェンリル作戦会議
フェンリル本部3階マスター部屋。
部屋のソファーに飯塚と成瀬は向かい合って座っていた。
「それで、最後の1人は決まったの? 敦君」
「ああ。そろそろ来るぜ」
マスター部屋の扉が開き、男が入ってくる。
「おや、私が最後ですか」
現れたのは糸目で、白い長髪の男性。細身で背が高く、爽やかな笑顔を浮かべており、一見穏やかな印象を受ける。
「あら、随分とイケメン君じゃん。こんなのウチに居たっけ?」
「つい数日前に入った新入りさ。名は――」
「ウルです。ウル=ウェンディア」
「外国人? まぁいいけど、強いのコイツ?」
「いまウチに居るB級の中じゃトップだ。もちろん俺達には及ばねぇが、戦力としては申し分ねぇ」
「評価して頂き光栄です」
ウルは丁寧に頭を下げる。
「ところで、ギルドデュエルに向けて訓練などはなさらないのですか?」
「必要ねぇだろ。相手はサポーター、雑魚だけだぜ」
「油断は禁物では? どんな雑魚が相手でも念入りに……」
「うるせぇな。俺に口答えする気か?」
ウルを威圧する飯塚。
ウルは笑みを崩さぬまま、一歩下がる。
「失礼。口が過ぎましたね」
「訓練は私もパスだけどさ、当日の動きぐらいは決めておいた方が良くない? 合流を目指すのか、それとも単独で動くのか……」
「単独だろ。3人で手分けしてカスサポーター共を探し、見つけ次第撃破。それが1番手っ取り早い」
成瀬は飯塚の案に眉をひそめる。
「単独はちょっとヤバくない? あっちが合流して3対1とかになったら流石に手こずるわよ?」
「なんだ、サポーターなんぞを怖がってるのかお前。可愛いやつだな」
「そんなんじゃ……」
飯塚の賛同を得られないとわかった成瀬はウルに目を向ける。
「アンタはどう思うの? 合流派? 単独行動派?」
「私は飯塚様の作戦に賛成ですよ。単独で動いた方が色々と好都合です」
「好都合って、何がよ?」
「何がでしょうね~」
バカにするように肩を竦めるウル。
成瀬はウルに対しムッと唇を尖らせるが、飯塚の前ゆえにウルへの不満はひとまず飲み込んだ。
「A級2人にB級1人……負けるはずがねぇ。心配はいらねぇよ美亜、俺が全員ぶっ倒してやるからよ!」
飯塚はグッと親指を立てる。
飯塚の決め顔に対し、成瀬は背筋に鳥肌を立たせるが何とか笑みを保つ。
そんな2人の様子を、ウルは興味深そうに観察していた。
それ以上特に作戦会議は進展せず、飯塚が成瀬をひとしきり口説いた所で解散となった。
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時は刻一刻と過ぎ……決戦の日が訪れる。
迷宮都市東エリア、廃墟地。そこに選手、アビス、ギルド協会員が集まる。
オッドキャット選手――葉村志吹、一色冴、数原凛空。
フェンリル選手――飯塚敦、成瀬美亜、ウル=ウェンディア。
さらに見学者としてオッドキャットギルドマスター唯我阿弥数。
審判として、ギルド協会員が3名。合計10名が揃う。
オッドキャットvsフェンリルのギルドデュエルが始まろうとしていた。
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