表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/77

第21話 成瀬美亜の苦難

「なんでよっ!」


 成瀬は再生数が落ち続ける自身のチャンネルを見て、机をダン! と叩いた。


「なんでこんな再生数が落ちるわけ!? こんなにエロい格好してるのにっ!」


 部屋で1人喚き散らす成瀬。その形相はとても人前に出せるものじゃない。


(もしかして葉村(アイツ)、私を逆恨みして私の不評をまき散らしてるんじゃない? そうよ、このアンチコメントだってアイツの自作自演の可能性があるわね……きっとそうに違いない!)


 ストレスは正常な判断力を奪う。

 自分を責める、ということができない成瀬は他の誰かに責任を負わせないと平静を保てない。自分の失敗は誰かの責任。そうしないと前に進めない。

 彼女の他責思考は葉村に向かっていく。葉村がいなくなってから彼女の動画の落ち込みが始まったからだ。葉村がいなくなったことも、動画のアンチコメントが増えたことも、全て自分の行いが原因なのだが……それに彼女が気づくことはないだろう。


「あん?」


 スマホがピコンと鳴る。

 メッセージだ。相手は飯塚敦――


《大切な話がある。ギルド本部のマスター部屋に来てくれ》


「こんな時に……めんどくさいわね!」


 無視したいところだが、さすがに自身が所属するギルドのマスターの誘いは断れない。

 成瀬はいやいやながらも身支度し、いつもより服を着こんで部屋を出る。



 --- 



 フェンリル本部・マスター部屋。

 フェンリルの本部は一階が酒場、二階が会議室、三階がマスター部屋になっている。マスター部屋は飯塚専用の部屋で、彼が仕事をする際に使用する部屋なのだが……なぜだかダブルベッドやシャワー室がある。


 そのマスター部屋のソファーに成瀬と飯塚は向かい合って座る。


「それで、用事ってなぁに? 敦君」


 心の内は不満が蔓延しているが、表には出さず、いつもの媚びた笑顔を維持する。

 飯塚は手を組み、


「……あの野郎、お前の元サポーターの片腕野郎……アイツ、S級シーカーの唯我阿弥数のギルドに入ったらしい」

「は?」


 成瀬は飯塚の前にもかかわらず、つい声を上ずらせた。

 その額には血管が浮かんでいる。


「どういうこと?」

「俺が行方不明になった日、アイツ、唯我と一緒に行動していたんだ。それで気になって調べてみたら、アイツの在籍がオッドキャットになっていた!」

(あのバカが……私より良いギルドに!?)


 メラメラと、成瀬の心で火が燃え上がる。


「しかもアイツ、妙な機械の腕も手に入れてやがった。なぁ美亜! なんなんだよアイツ!! ただの雑魚じゃねぇのか!! なんだってあんなカスがS級のギルドに入れるんだ!?」

(そんなの私が聞きたいわよ!!)


 成瀬にとって、葉村は下にいないといけない存在。

 所属しているギルドのランクが、葉村より下という事実を成瀬は許せない。

 成瀬は葉村を自分より下に引きずり落とすため、一芝居をうつ。


「……きっと、唯我も()()()()()()に掛かったのね。私みたいに――」


 涙を浮かべ、成瀬は言い放つ。

 飯塚は「どういうことだよ!?」と身を乗り出す。


「アイツ……魔法を利用して盗撮とか盗難とか普通にするのよ。唯我は多分、盗撮写真をネタにギルドに入れるよう脅されたのね。私も、着替え中の写真とか入浴中の写真とか撮られて、それで脅されて、ペアを組むように強要されたし……」

「なんだと! あの野郎~っ!! お前があんなカスと組むなんておかしいと思っていたんだ! 脅迫とか、マジでクズだぜ!!!」


 正義感に燃える飯塚。成瀬は密かに口角を上げる。


「だけどアイツばかり責めないであげて! アイツがああなったのは幼馴染の私のせいでもあるから……もう1度、アイツを私達のギルドに入れましょう! 今度はちゃんと、幼馴染として、アイツを更生させるから!」

「美亜……お前って奴はどこまで慈悲深いんだ! わかった! なんとかしよう!」

「い、いいの敦君? 私達の問題にあなたを巻きこんじゃってさ」

「いいってことよ。俺に任せておけ! そうと決まれば、アイツを俺達のギルドに引き込むために、何か作戦を考えないとな……奴の手元にある美亜や唯我の写真も没収しねぇと……」


 張り切る飯塚を傍目に、美亜は小さくため息をつく。


(ま、今はこれでいいわ。後はこのアホが火種を作ってくれるでしょう。なんでオッドキャットにアイツがいるのかわからないけど、あんな雑魚を唯我阿弥数が必死になって守るはずもない。徹底的に粘着すれば、あんなのすぐに切り捨てるはず)


 飯塚は厭らしい笑みを薄っすらと浮かべる。

 葉村の手元にあるというアビスと成瀬の盗撮写真を想像しているのだろう。成瀬は飯塚の心の内を読み、ぞわっと鳥肌を立てる。


(盗撮写真なんて無いってのに、ホントアホねこの男)


 益々自分のギルドが低レベルだと感じ、成瀬の怒りが増していく。


(ちっ! 絶対後悔させてやるわ。あの能無し……!)

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

よろしくお願いしますっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ