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「でも、あんたは逃げなかった。男でも泣いて逃げる汚物の山に、あんたみたいな世間知らずが立ち向かったんだ。それは認めてやるよ」
「そんなことは……」
イヴェットは口ごもる。そしてしばらく黙った後で話し出した。
「私は教会騎士として、正義を執行し、信仰を尊ぶ日々を送ってきました。ですが、実際に大災禍で苦しむ人たちを助けたいと思い、隊員と共に来たのです。ウォーレスさん、何も知らない私をお使いくださり、ありがとうございます」
「ははっ。説教臭い物言いだな」
俺は鼻で笑ったが、すぐに嫌な気分になった。イヴェットの澄んだ目を見ていると、自分の浅ましい部分を突きつけられる気がしたからだ。だから俺は立ち上がった。
「待ってろ。食事を持ってくる」
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