07
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正午になると、俺もイヴェットも汚物まみれだった。ガスマスクは、瘴気の一番濃いところで働く連中が使っているから、俺は顔を布で覆っている。
鎧を脱ぎ、俺と同じように顔を布で覆ったイヴェットは痛々しい姿になっていた。下着にまで汚物が染み込んでいるだろう。可憐な女性騎士が、半日で底辺の労働者のようになってしまった。
「昼飯の時間だ、騎士さん。少し休むぞ」
「私はまだできます。あなたはお休みになられてください」
「あんたが倒れたらこっちが迷惑なんだよ。いいから休め。ここでは俺の方が先輩だぞ」
「では……お言葉に甘えて」
イヴェットは顔の布を取り、大きく息をつく。シャベルを地面に突き刺し、座り込んでしまった。肉体的より、精神的に疲労困憊だったらしい。
「こんな地獄に来るなんて、あんたも不運だな。なにかの懲罰か?」
「いいえ。自らの意志です。しかし、カラブリアの現状を書面では知っていましたが、この悲惨さは想像以上でした」
「つまり、あんたたちは揃いも揃って世間知らずってことか」
俺はイヴェットの隣に座った。彼女は俺の悪口にも怒らなかった。
「ええ、私たちはそうなのでしょうね」
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