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俺の一言が決壊の決め手だったらしい。
「おうぇえええっ! うぐぇえええっ!!」
耳を塞ぎたくなるような苦鳴が響く。
地べたにへたり込んで、彼女は激しく嘔吐し始めた。カラブリアに到着するなり、汚物の中に叩き込まれたんだから当然だ。
美しいものを汚す快感が俺の胸の中にあった。女性騎士の華やかさに対する嫉妬から生まれた、醜い感情だ。
けれども、うずくまって胃液を吐き続ける彼女を見て、さすがに俺は気の毒になって声をかけた。
「なあ……無理しないで帰ったらどうだ?」
彼女はその言葉を聞くと肩を震わせ、ふらつく足で立ち上がった。
「い、いいえ。私は……続けます。続けさせてください……」
口元を拭うと、女性騎士は汚物のところに戻っていく。そして目をつぶって手を押し込もうとする。見ていられなくなって、俺は彼女に自分のシャベルを突きつけた。
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