04
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彼女は、モンスターの残した汚物の山を見て息をのむ。俺は畳みかけるように言葉を続けた。
「あんたの手はお祈りしかできないのか?」
俺はそう言いつつ手を動かす。この繰り返しがこれから毎日続く。彼女はどうするだろうか。
「……分かりました」
女性騎士は覚悟を決めた様子でうなずいた。そして何度かためらった後、悪臭を放つ汚泥に、美しい籠手で覆われた両手を突っ込んだ。
「うぐっ……!」
汚物の中の膨れ上がったモンスターの死骸が破裂した。美しい鎧は飛び散った汚物で見るも無残な姿になり、きれいな金髪や整った顔に腐った粘液がべったりと付着した。すさまじい不快感だろう。
「おい……」
「気になさらないで……下さい」
女性騎士はえずきながらも、両手で汚物をたっぷりとすくい取ると、手押し車の中に入れた。悪臭の中、髪から顔にまで汚物にまみれていく。
そしてもう一度。今度は赤黒い腐肉の中に手を入れて、それをすくい取って手押し車の中に入れる。三度目。泡立った黄色い粘液をすくって手押し車の中に入れようとする。
「これは……何ですか?」
俺は簡潔に答えた。
「モンスターの膿汁だ。蛆がわいているな」
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