03
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幼い日の記憶が疼く。大災禍で壊滅した故郷。生き残った俺たちは食料と水を奪い合った。もう限界だと思った時、ようやく災害派遣協会のフィクサーが到着した。
後で、聖座教会の救助が遅かったのは、内部の派閥争いが原因だと知った。それ以来、教会には幻滅していた。
故郷も家族も失い、ドブネズミのように生きてきた俺と、輝かしい女性騎士。その違いに、俺は妬みを感じていた。
「そうか。そこまで言うなら手伝ってもらおうか」
俺は大穴に汚泥を捨てると、彼女を連れて以前は市場だった場所に戻った。そこは辺り一面汚物と粘液と腐肉で覆われている。
「この汚物を全部大穴に放り込んでから火をつける。それまで、ひたすらこれを運ばなくちゃいけない。じゃあ、手伝ってくれ」
俺はそう言うと、シャベルを使い汚物を手押し車に乗せ始める。周りのフィクサーたちも黙々とそうしている。女性騎士は当惑した様子で俺を見た。
「どうした? 早くしてくれ」
「あの……私にもシャベルを下さいませんか?」
当然だな。俺はわざとぶっきらぼうに言った。
「もう一本もないみたいだ。手で片づけてくれ」
「手で……」
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