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「それにしても、灰色烏が古巣に舞い戻るだけならともかく、大仕事を持ってくるなんてな。一体誰に頼まれたんだ?」


 俺は注がれた密造酒を久しぶりに味わいながら答える。


「私用だ。つまり、これは俺の依頼だな」

「……信じられないな」


 マーロンは当然驚く。こいつは昔から几帳面な奴で、どんな相手からでも金を取り立てていた。疑うのも当然だろう。俺は正直に言うことにする。


「惚れた女のためだ。悪いかよ」


 次の瞬間、マーロンは大笑いした。


「はははっ! そうかそうか!」


 だがすぐに笑うのをやめ、再びマーロンは周りの連中に怒鳴る。


「聞いたかお前たち!? 我らの灰色烏に女ができたそうだ! 祝杯をあげるぞ!」


 周りの歓声をよそに、マーロンが興味深げに俺に顔を近づける。


「しかし、女の頼みで枢機卿を失脚させる――か。あんたの女はずいぶんと高くつく奴だな」


 そう思うのも無理はないだろう。


「いいや。これは俺の個人的な仕事だ。女には教えない」


 マーロンは拍子抜けしたらしい。手元が狂ってテーブルに酒がこぼれた。


「無償の愛って奴か? らしくないな」

「惚れた弱みって奴だ。女のために一世一代の大仕事ってのも悪くないだろう?」


 俺がそう言うと、ウォルターは俺の肩を叩いてからうなずいた。


「いいとも。五本指に連絡しよう。盗賊ギルドもあのジジイには何度かツケを踏み倒されている」


 五本指。俺が引退する時に、ギルド長の代わりに任命した五人の幹部のことだ。全員灰色烏の一声で動くことだろう。

 久しぶりの悪徳。でも、今回俺が盗む理由は依頼でもなければ私欲でもなかった。



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