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「いえ、命令をいただいたからには動かなくてはなりません」
「すぐにここを出るのか?」
「なるべく出立を引き延ばしてみます。カラブリアの再建を見ずに去るのは残念です」
「惜しいな。あんたは聖座教会の誇りだ」
俺が口にしたのは本音だった。彼女が被災地で奔走する姿は、まさに聖女のように見えただろう。
「……すみません。僭越でした。ファルネーゼ枢機卿についての発言はお忘れください」
「ああ、分かってる。誰だって口が滑る」
去り際、俺はイヴェットに聞いた。
「あんたは本当にここに留まりたいのか? ラエティアでお飾りの騎兵隊として暮らすよりも、人々を助ける仕事がしたいのか? 本気でそう思っているのか?」
「もちろんです。私は主に、ひいては苦しむ人々に仕える騎士ですから」
イヴェットは即答した。迷いのない目をしている。こいつが騎兵隊を率いれば、どんな被災地にも希望を届けられると俺は確信した。
カラブリアを離れるのは俺が先のようだった。
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