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しかし、復興作業が続くある日のことだった。
皆の心のよりどころとなったイヴェットのところに、一通の手紙が届けられた。
次の日の朝。
「申し訳ありません、ウォーレスさん」
市街地への石材を運ぶ馬車を手配していた俺に、イヴェットがやってきた。
「どうした? 昨日の手紙に何か書いてあったのか?」
「フランキスクス隊に出立の命令が下りました。教皇庁に戻れとのことです」
「そりゃ急だな。教皇も人事をお間違えになるってことか」
「いえ。猊下は私たちの派遣を祝してくださいました。むしろ……」
「むしろ?」
「ラエティア公ファルネーゼ枢機卿の考えではないかと。あの方は私たちを私的な騎兵隊にしたいと常々仰っていました」
ファルネーゼ枢機卿のことは知っている。聖職者と権力者の二足の草鞋を履くしたたかで強欲な奴だが、芸術に理解があるパトロンでもある。
「いいじゃないか。ラエティアと言えば文化と芸術の花開いている土地だろう?」
「私たちはラエティアではなく――」
イヴェットが何かを言いかけ、すぐに口を閉じた。
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