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「食べたら少し休む。あんたは駐屯地に戻るか?」
俺はイヴェットに聞いた。
「差し支えなければ、ウォーレスさんと共に働きたいと思います」
「あんたは隊長だろう? 指揮はいいのか?」
「部下の指揮は副隊長に任せています。私は隊長として、率先して奉仕する姿勢を示したいのです。私を新米として使ってください」
「とんでもないお人よしだな。教会騎士ってのはみんなそうなのか?」
「そうであることを願っています」
俺は驚くと同時に呆れた。いや、賛嘆したんだろう。
「それと……」
イヴェットは立ち上がると腰の剣を抜いた。剣に誓う儀式でもする気か? と俺が思った瞬間だった。
イヴェットは片手で自分の金髪を束ね、そこに刀身を当てる。俺が何か言う暇もなく、彼女の剣は長髪を切り落としていた。
「これは、今は邪魔です」
男のような短髪になったイヴェットは、それでも気丈に笑みを見せた。だが、俺には見えた。彼女の手が髪を切る時、一瞬ためらったのを。
確かに汚物の清掃に長髪は邪魔だ。だが、女性が断髪する残酷さを、俺だって理解できる。俺の前で、イヴェットは被災地の苦楽を共にすることを行動で示したのだった。
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