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陰キャラな僕と陽キャラの彼女  作者: 赤白 青
14/21

大会へ活動開始


「明日のおかずはハンバーグとピーマンの肉詰めとチーズインハンバーグね。」


全部ハンバーグじゃん。芹奈ってそんなにハンバーグ好きだったのか。


「ちょっと芹奈、ハンバーグ過ぎない?」


当然の疑問ではある。僕は芹奈がハンバーグ好きなのかと思って納得したが、芽依が納得してないところを見ると、芹奈がハンバーグ大好きっ子ってわけではないのかもしれない。


「だって彩りはアタシがなんとかするけど、味は彼氏次第じゃん。どうせ作るなら同じような種類は一斉に作っちゃった方が良くない?」


マジかよ。あの芹奈からこんなにまともな答えが出てくるとは。いつも自分勝手で非効率な芹奈がこんな効率的なこと言うなんて。

それだけ本気なんだね。いや、もしかして体調が悪いのかもしれない。そう思ってるとすかさずビンタをされた。


「顔がムカつくのよ。」


じんじんと痛みを発する頬を手で抑えながら、いつもの芹奈であることに納得する。ビンタされるなんて僕はいったいどんな顔をしていたのだろう。ポーカーフェイスのつもりだったのだが、そうじゃないという事だろう。にしても理不尽だよね。ホント、こんな子を妖精だなんて祭り上げるこの学校には見る目がないやつが多い。ちゃんと中身をみないと。人は見た目よりも中身が大事だよね。


「またムカつく。」


僕が両手で頬を抑え、ボディがガラ空きになったのを見た芹奈はサッと構えを変えて、強烈な正拳突きを発した。体の中にメキメキと入り込んだ拳は口から臓器が飛び出しそうな程の威力だった。弁当食べてたら絶対に全部吐いてたよ。口に胃液が上がってきて、吐きそうになるのをなんとか抑え込み、僕はよろよろと近くの椅子に座り込む。

マジでシャレにならん。鳩尾を少しかすっただけでこの痛み。わかってるのかどうか知らないけど、鳩尾にモロに決まってたら僕は恐らく立てていないだろう。芹奈ヤバい。怒らせると大変危険だ。


「芹奈、少しやり過ぎじゃない?」


「ご、ごめん。つい殴っちゃった。大丈夫?」


芽依が心配して背中を擦ってくれる。

ついであんな一撃くらったこっちの身にもなって欲しいものだ。けど珍しく焦った様子で申し訳なさそうにする芹奈を見て違和感を覚えた。いつもならこんな狼狽えないのにどうしたんだ?


「大丈夫だよ。」


「あ、アタシなんで殴っちゃったんだろう?ホントごめん。」


芹奈は勢いよく頭を下げると走って教室を出て行った。


「芽依さん、僕は大丈夫だから行っていいよ。芹奈をお願い。」


「わかった。ありがとう。」


芽依は芹奈を追って出て行った。芹奈らしくない行動に僕も心配だったが、まだ体が痛くて動けないので芽依に任せることにした。

そして、教室に残された英都はゆっくり僕の元に歩いてくる。そして振り返り何故か僕に背中を向けて語りだす。


「女の拳に耐えてこそ、真の男よ。」


コイツはいったい何を言ってるんだ。

そうだ、これは良いタイミングかもしれない。これ以上英都の戯言に付き合う必要はないだろう。


「なんで芽依さんに告白するの辞めたんだ?英都らしくなくない?」


「ふっ、気になっちまうか。」


恋バナとかは基本あまり興味はない。だからあまり興味はないのだが、例外もある。

朝から告白しようとして、その相手にボコボコにされた友人の告白結果が気にならないやつは居ないだろう。


「実は大会が終わるまで待つことにしたんだよ。」


「空手の大会があるのか?」


「ちげぇーよ。まあ大会もあるけどよ。うまいもん甲子園だよ。大好きな女が頑張ってるのを邪魔したくねぇんだよ。大会が終わるまでは仲間として支えてやりたいんだ。」


どうした、どうした。本能で生きてるやつの言葉とは思えない。けど、芽依は英都の告白をどう思ってるのかよく分からなかったからな。万が一フラれたらチーム内もゴタゴタしそう。そういう意味でも英都の決断は立派だと思う。これも本能の為せる技かな。

その後、昼休み終わりにはなんとか立てるようになり、午後も授業を受けてバイトへと向かった。



数日後

僕らは芽依の号令の元放課後、家庭科室に集まっていた。


「書類選考の日が決まりました。」


芽依は両手を広げて喜び、僕らに大会概要をを報せる用紙をみせる。書類選考なんかあったんだ。知らなかった。未だにどんな大会か僕知らないんだよな。


「これから料理を仕上げて行かないとね。」


芽依の笑顔は本当に嬉しそうでこちらまで楽しくなるような、気持ちにさせる。

けど同時にプレッシャーも感じる。食べてもらえるということは僕の料理で合否が決まるかもしれないということだ。

少し胃が痛くなる。ここは行くべき場所は一つだ。時間がない。急がないと。


「芽依さん、ありがとう。じゃあ僕バイト行くね。」


「彼氏、今日バイト休みって言ってなかった?」


「そうだけど、早く料理上達しないとだから教えてもらいに行ってくるよ。」


僕はバックを抱えてバイト先まで走った。

お店に入ると、店長が馴れた手付きで仕込みをしている所だった。


「なんじゃ、譲。今日はバイト休みじゃろ、忘れもんか?」


「いいえ、大会の日程が決まったみたいなので、店長に更に料理を教えてもらおうと思って来ました。」


「譲・・」


店長は仕込みの手を止めてカウンターから出てくる。


「バカヤロー、なんでバイトに来たんじゃあ。」


店長からの強烈なビンタを頬にくらう。正直殴られる意味が分からなかった。


「今から戻れ。」


「どこにですか?」


ここ最近は慣れてきて店長にビビらず返事が出来るようになった。ある意味これに関しては成長したと思っている。


「学校に決まっとるじゃろおうが。全員に謝って料理を作ってこい。そしてワシの所に持ってこい。」


店長の威圧的な言葉に何を言い返しても聞いてくれる雰囲気ではない。なんでみんなに相談するんだ。料理に詳しい店長に聞いた方が合理的でいい料理が出来ると思うんだけど。仕方なく帰ろうと振り返る。


「お前がワシを頼ったのは合理的な判断だ。専門家に聞くのは正しい。けど最初に頼るのはワシじゃなくてチームメイトだろ。お前は一人で料理を完成させるのか?」


店長が言うことは最もだ。あのとき僕はみんなの声を聞けていなかった。あの時誰か一人でも僕に全てを任せると言っただろうか?言ってない。みんなで考える為に芽依は僕らを集めたハズだ。それなのに僕は一人で勝手にプレッシャーを感じて、逃げるようにここに来てしまった。まだ学校に居るかは分からないけどまず、みんなに謝ろう。そして一緒に考えてもらうんだ。


「まずはコンセプトとメインの食材を決めろ。」


「ありがとうございます。」


アドバイスはしないと言っていたのに、やっぱり店長は優しいな。

僕は再び学校へと走って戻った。

学校に戻り、まずは家庭科室へと向かう。

ドアの鍵は開いていたのだが、誰も居なかった。やっぱり帰っちゃったか。急いできたので、肺が苦しい。頑張って走ったけどダメだったか。


「彼氏、そんな息切らしてどうしたの?バイトは?忘れ物?」


振り返ると芹奈とダンボールを抱えた芽依が立っていた。二人共まだ帰ってなかったのか。


「勝手にバイト行ってごめん。一緒に料理を考えたくて戻ってきたんだ。」


僕は二人に頭を下げる。芹奈のことだからビンタされることは覚悟している。


「ごめん、もう料理決めちゃった。」


あれ?どういうことだ。逆にもう遅かった的な感じなのかな?

芹奈に一枚の紙を渡され見ると、そこには一枚の料理の絵が描かれていた。芹奈のデザイン画だろう。


「料理のコンセプトはドキドキ、ワクワクスマイルだよ。それでメイン食材はこれ、桃」


コンセプト長いな。まぁそれはいいか。

芹奈は芽依が抱えているダンボールに手を突っ込むと桃を一つ取り出した。


「スイーツはダメ何じゃなかったけ?」


確か大会概要の紙に書いてあったハズだ。あと他にもなんかダメだった気がする。


「スイーツじゃないよ。メイン料理に使うの?」


「どうやって?」


「それを今から考えるのよ。」


なるほどね、芽依の抱えてるものは材料か。

これは前から決まってたって感じだな。店長、コンセプトとメイン食材は決まりました。

そして、料理はこの絵からしてハンバーグ。


「なんでハンバーグなの?」


「彼氏が作った中で一番美味しかったっていうのと、アタシのデザインはそれが一番良いと思ったからよ。」


芹奈のデザイン画にもう一度見る。

確かに彩りは良い。何よりハンバーグに笑顔のマークを描いているのは在り来りではあるが、自分たちで描くと思うとワクワクする。

ここから僕たちの料理は始まるんだ。


ブーブーブーブー

スマホが震えるので見てみると店長からの着信だった。無視するわけにもいかないので電話に出る。


「明日からバイトの時間は20時からじゃ。それまでにワシの所に毎日新作を持ってこい。今日は初日やからな勘弁したるわ。」


「今話してるんですけど、明日形にするのは厳しそうです。」


今コンセプトと食材を決めただけで、明日も平日で学校があるのだ。とても店長を納得させられる料理が出来る気がしない。そもそもまだレシピのレの字も出来てないんだ。


「ダメだ、期限は明日の20時までだ。お前は大会の期限の日にも同じことを言うのか?その日の最高作を持ってこい」


ダメだとは思っていたけど、やっぱりダメだったか。店長の言ってることもわからなくはない。期限がないといつまでも納得出来ないかもしれない。書類を送る期日だって決まっているのだ。限られた時間で最大限の力を出せるようにするしなきゃ。


「あとお前のご両親には電話して、許可を取っておいた。」


「何をですか?」


「大会まで住み込みで働くことの許可じゃ。理解のある両親を持って幸せものじゃのぉ。」


学校で料理を考えて、バイト先で料理を学ぶ。これが一番合理的な形なのかもしれない。けど、僕の両親はよく許可したな。


「着替えとかはもうこっちに持ってきてあるから、今日から店の方に帰ってくるんやで。」


用意早すぎない?店長の行動の速さには驚かさせれる。今日からしばらくは料理漬けの日々になりそうだけど、芹奈の為だ。仕方ないかな。


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