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高利貸しの夫婦

作者: 時雨笠ミコト

うーん、設定甘かったらごめんなさい

あるところに、裕福な夫婦がありました。

夫は俗に言う高利貸しで、非道な方法でがっぽりと儲けていました。

しかし、二つ年下の美しい妻はどこか抜けた…のほほんとした人で、『夫は芸術家の逸材を見つけては早期発掘し作品を買って支援した結果、偶然儲けている』と信じ込んでいました。

夫もそれを理解していて、妻に自分が高利貸しをしているということがバレないように、関連の書類や電話に気を配って上手く隠していました。

妻についている女中達は、妻が思い違いをしていると理解していましたが、夫は凄い審美眼の持ち主なのだ、と事あるごとに自分たちに嬉しそうに語る純粋無垢な妻を傷つけたくなくて黙っていました。

妻は類稀なほどの良い人で、可能な限り出来ることは自分でするし、体調を崩したり働きすぎたりしないよう、何かとつけて女中たちを気遣ったり、体に良いものを差し入れしてくれていました。

だから女中たちも、彼女が傷つかないように、話を合わせて微笑んでいました。

そんなある日のことでした。

女中たちに一つの朗報が舞い込みました。

長年子宝に恵まれなかった妻が、妊娠したと言うのです。

妻の念願が叶ったと、女中たちは滂沱の涙を流して喜びました。

妊娠に喜んだのは夫の母親…姑も同じことで、念願の孫だと手を叩いて喜びました。

姑は『妻に精神的負担がかからないように、自然溢れる場所で養生したらどうか』と提案し、夫も二つ返事で了承しました。

女中たちは養生先にもついていこうとしましたが、妻は長旅になりそうだからと女中を置いていくことにしました。

夫も同伴する予定でしたが、仕事が立て込んでしまい妻の一人旅となってしまいました。

それがいけなかったのです。


しばらく経ったのち、妻が家に帰ってきました。

ですがその時、妻は目に包帯を巻き、車椅子に乗っていました。

絶句する皆に対して、妻は落ち着いたまま説明を始めました。

「帰ってくる途中に、事故に遭ってしまった。後遺症も残った」と。

子供は、とは誰も聞きませんでした。大きかったはずの妻のお腹が元に戻ってしまっていたからです。

我が事のようになく女中たちに、妻は優しく声をかけました。

「もう妊娠できない体になったわけではない、実家が裕福なのでもう一度妊娠するために手も貸してくれるだろう」と。

女中たちは、泣きながらも頷きました。

そして車椅子でも動きやすいように段差を無くしたり、目が見えなくても匂いが良いとわかる花を生けたりと、妻が生活しやすい空間を作ることに努めました。

対して、夫は妻の後遺症を良いことに、堂々と妻の目の前で高利貸しの仕事をするようになりました。

妻が「なんの書類を書いているのですか?」と聞けば、夫は「期待の新人画家の個展を開くための書類だ」と嘘をついて誤魔化していました。

女中たちは苦言を呈そうとしましたが、『夫が自分の前で仕事をしてくれるようになって、一緒にいられる時間が増えた』と喜ぶ妻の手前、何も言えずにいました。


それから暫く後、夫が真っ青な顔で部屋の中をうろうろしていました。

「随分足音がしますが、どうかされたんですか?」

と妻が聞けば、夫は一言、「破産してしまった」と言いました。

「……破産?どうして?」

夫は言葉に詰まりました。妻に高利貸しの事など言えません。

何故か自分の高利貸しの書類、その写しが流出してしまい、一気に叩かれてしまったのです。

女中たちも困惑していました。夫は本当に慎重で小賢しい人間だったので、こんな失敗をすると思っていなかったのです。

「大丈夫です、私の実家に掛け合いましょう。今ほど大規模にはできないでしょうが、生活に支障がない程度の立て直しはできると思います」

妻がたくましく言い切り、夫は泣きながら妻に感謝しました。

その後、夫は妻の実家からの融資を得て小さな銀行を立ち上げ、良心的な金利で人気を得ました。

夫は妻の目の前で堂々と仕事をするようになり、出張なども減って二人は幸せそうに暮らしていました。

特に妻は夫と共に過ごす時間が何より幸せだ、と前から公言しておりましたので、本当に幸せに毎日過ごしておりました。

災い転じて吉となるとはこのことか、と女中は微笑みながら妻の横に薔薇を置きました。

薔薇は匂いも強く、見えなくとも楽しめるだろうとも思ってのことです。

妻は喜んでこう言いました。

「あら、綺麗な黄色い薔薇ね」

ホラーとは(哲学)

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