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 「おはよう裾野君。今日やることだけど……」


如月綾乃は笑顔で淡々と予定を俺に伝える。ふと横眼に映る佳麗な黒髪は、すーと長く不純物などなかった。

 なし崩し的に級長になってしまった俺なのだが――少しはこの笑顔にやる気を出させてもらっているかもしれない。


 「おっけ。それじゃ仕事いってくる」

 「うん。頑張って!」


柔らかな光差し込む教室から一歩出ると、すーと風が通った。涼しい。


 「先生、おやようございます」


ぺこり。


 「おっ裾野探した探した。私に探されるようならまだ級長としてはいっちょ前じゃないな」


そう出会いがしら担任の木村先生は俺の頭をポンポンと叩いてきた。


 「そりゃ強制でしたからいっちょ前もなんもないですよ。はは」


遅刻と言う口実を無くす代わりに級長に任命されてしまったのだ。別に遅刻でもいいのに。


 「な~に。まぁいずれ級長をやっててよかったと思える日が来るから心配するな」

 「文脈読み取れてます?」

 「もちろん。国語教諭だからな」


文脈は読み取れなかったみたい。


 「まぁそんなことよくて明日の予定だな。現社、生物……」


「頑張って!」っと言われてしまった仕事なのだが大したことはなくただ明日の予定を先生から聞くだけ。なんだこれ。


 「こんなところだ。最近調子はどうだ?」

 「どうだって……。別に変ったことはないですが」

 「そうか。だがいつの日かその変わらなかった日々に眩しさを覚えることがある」

 「先生急にどうしたのですか?朝から重いですよ。シロノワールですか?」

 「ハーフサイズがちょうどいいが違う!つまり私が言いたいのは――青春しろよ、少年!」


にやりとする先生。多分先生になっていってみたかったリストを更新したのだろう。

 でも先生は文脈を読み解いてくれない。いつもそうだ。


 「先生、やっぱり文脈を読み解いていないですね……」

 「それでも学生時代は国語、現代文は特に点数高かったのだけどね。まぁいい……」


点数マウント。何がしたいのだろうかこの先生は。


 「大人になるとそんな些細な事気にしなくなるんだよ。だからな、その高度な感受性があるうちにたくさん感じろ。考えろ。思え!」

 「はぁ」

 「早いようでもうホームルームの時間だな。後で連絡黒板に書いとけよ


先生は俺を級長にして自分の言いたかったことリストを消費するために任命したのかもしれない。いやそうだ。

 はぁ。朝からめんどくさい……。


       ×        ×        ×


如月 綾乃


 はぁ。朝からめんどくさい。


 「うん。頑張って!」


私は微笑みを作ると裾野はそそくさと行っていった。扱いやすい。というか裾野、ど。れぐらいの身長なんだろう。私とさほど変わらないから……165といったところだろう。

 でもほんとにこはるん……。じゃなくて小春が言っていた通り私の本質は八方美人のよう。


 「やあ、おやよう如月さん。級長大変そうだね?」


大変そうと思うなら変わる?なんてことは私の胸にしまっておく。でも100の心配より1の支援。男の子はこれをわきまえてほしいわ。


 「おやよう神谷さん。別にそうでもないよ。裾野君もいるし」

 「裾野君ね……どうなの?彼?」

 「どうなのって別に良い人だよ」


否……ただの無能。私がいなければ何にもならない。


 「そうなのね。わかった。今日もよろしくね~」

 「よろしく~」


この旨の挨拶が朝は5つ6つ起こる。本当に朝はめんどくさい。級長もめんどくさい。

 気怠げな雰囲気漂うこの教室。私はポツリと佇む。

 ふと中庭の方向を覗くと桜が舞っていた。こちらはまだ葉桜ではない模様でとても美しい趣を醸し出している。可憐だ……。


 「ふぅ」


やっと朝が過ぎてゆく。私は朝が嫌い。まだ嫌い。

 そよ風香る教室が—————気怠く感じる位。

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