1話 プロローグその1
宮様が行き詰って書けなくて悶々としていたら、変な電波を受信しました。
「魂のピコマシンボディへの定着率…… 98%…… 99%…… 100%…… 成功したようですね」
「う~ん……」
「目が覚めましたか?」
「あ、はい」
目が覚めたと思ったら、目の前に絶世の美女の顔が見えた。
こんな美人のお姉さんなんて、俺にはとんと縁がないはずなんだけどなぁ。
そういえば、寝る前って何してたっけ?
うーん、思い出せないぞ。
というか、この美人のお姉さんはどちら様でしょうか?
「美人だなんて嬉しいこと言っちゃって。お姉さんサービスしたくなっちゃいます」
「あ、ありがとうございます?」
「それで、貴女の身体をピコマシンで創り変えました」
「ピコマシン? ナノよりも小さな単位のピコのことですか?」
「ええ、そうなりますね」
ナノマシンを通り越してピコマシンかよ。いったいどれだけの科学技術があれば、ピコマシンなんて作れるんだ?
ん? いま、猛烈に嫌な予感がしてきたのだけど……
ピコマシンで身体を創り変えたということはですよ?
つまり、この身体は…… 人間ですら…ない?
「ピンポーン! 正解です」
「もしかして、心読めてます?」
「まあ神ですから、貴女の心を読むなど朝飯前というヤツですね!」
「神さまでしたか。納得しました」
女神様ってヤツなんでしょうね。
ということは、だ……
やっぱ、俺って死んだんだろうなぁ。
まあ、自分が死んだという記憶はないのだけどさ。
「それで正解です」
だから勝手に人の心を読むなと……
そう言っても無駄でしたね。なんせ相手は神さまなのだから。
「まあ、ぶっちゃけると貴女は私の眷属みたいなモノです」
「つまり、神の眷属として異世界転生ということでしょうか?」
「話が早くて助かります」
自分で聞いといてなんだけど、異世界転生って本当にあったんだ……
というか、俺という一人称に違和感があるのはなんでだ?
私の方がしっくりくる気がするな。
そうか、この身体が女性タイプの身体だからなのか。小ぶりだけど、ちゃんとおっぱいもありますので。
女神様が呼ぶアナタも貴方じゃなくて貴女って聞こえるしね。
というか、死ぬ前の私の性別ってどっちだったんだ?
うーん、思い出せないや。
「自分の姿が気になるのでしたら確認してみますか?」
「鏡ってあります?」
「いま用意しますね」
そう言った女神様は、何もない空間に姿見を出現させた。
魔法ってヤツなのかな? いきなり出てきてビックリしたよ。
まあ、神さまなら何処からか物を取り出すのも簡単なことなのだと思っておこう。
うん、主に私の心の安寧の為にも。
「これが私の顔ですか? 美少女ですね」
美少女も美少女。お人形さんみたいにも見えなくもないけど、神秘的なオーラを醸し出しているような感じがします。
さすがは、神さま謹製の身体なだけのことはあると思います。
女神様ってば、良い仕事してますね!
「貴女は私の眷属なのだから、貴女を可愛い姿形にするのは私の義務です」
「ありがとうございます」
ふんすとドヤ顔をする女神様、可愛いです。
「でもここまで美少女だと、自分がナルシストになりそうで少し怖い気もしますね」
「美男美女は多かれ少なかれ、多少はナルシスト入ってるわよ」
「そういうモノでしたか」
「ええ、自分の容姿に自信を持っているとも言うわね」
鏡で自分を見て全体を確認をしてみますと、身長は比較対象がないので解り難いけど、150cm弱といったところでしょうか?
胸は少し小ぶりで、Bカップぐらいでしょうかね?
二重まぶたで、お目目がクリっとしていて、ちょっとタレ目なのが特徴だと思います。
タヌキ顔とでもいえばいいのかな? なかなか愛嬌があって可愛い顔だと思いますね。
髪は普通に黒髪で肩に掛かるか掛からないか程度のミディアムショートといったところですね。
年齢は14歳ぐらいの顔立ちに見えます。まだ幼さが残っているので女子高生には見えません。
といいますか、この身体は全裸でしたよ。
ちなみに、縦に一本筋が見える不毛地帯であります。
このままでは、姿見に映った自分の姿を見ながら自慰行為をしてしまいそうで、非常に危険であります。
そうか、ナルシストが入ってるというのは、こういうことなのかも知れませんね。
「あの、女神様? 服や下着とかを頂けないでしょうか?」
「服はワンピースのコレでいいかしら?」
そう言った女神様は、また何もない空間からピンクのワンピースを取り出してみせた。
もうちょっとやそっとのことでは驚かないぞ。
「薄いピンク色だと、落ち着いた感じの色合いで良いですね。遠慮なく頂きます」
「私の髪の毛を糸にして編んだ服だから、防御力増し増しで不滅のワンピースだからね」
それって、神器とか聖遺物ってヤツじゃありませんか!
遠慮しておいたほうが良かったのかな? 主に私の心の安寧の為に。
何も考えないで、いそいそと服を着ましょう。
というか、ブラジャーを手前でカチッとフックを留めてから後ろに回すのを自然とできるということは、私の前世は女性だったのかも知れません。
女装趣味の男性だったとかでは断じてない! ないったらない!
ショーツはお尻を全部包み込むスタンダードなショーツで助かりました。
お尻全体にフィットして安心感が違いますね!
ワンピースを頭からかぶったら、次は靴下を履きましょう。
靴下はアンクレットですね。これが一番楽な靴下だと思います。
最後に靴を履いて完了となります。
靴はチャコールブラウンのローファースリッポンって感じのカジュアルなタイプの靴ですね。
「似合ってるわよ」
「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」
お世辞だとしても似合ってるとか言われると照れちゃいますね。
「ちなみに、前世の記憶は知識を除いて消去させてもらいましたので、悪しからず」
「は、はぁ」
なるほど…… 実際、昨日までの記憶が思い出せないのだから、そうなんでしょうね。
まあ、神さまなら何でもありなんでしょう。
「それで、私は異世界で何をすればいいのですか?」
「自由に生きなさい」
自由とか言われても、いまいちピンときませんね。
神さまから使命を与えられたほうが、目標があって気が楽な感じがしますし。
これが人に使われるのに慣れた小市民的な発想というヤツなのかな?
「俺TUEEEをしてもいいですし、知識チートでNAISEIしてもいいです。また、国を創っても構いません」
「国を創るのは面倒くさいので、パスの方向でお願いします」
というか、俺TUEEEできるんですか。さすがは異世界転生だな。
「ピコマシンのスペックは伊達ではありません。試しに脳内で検索してみて下さい」
「検索…… うおっ!?」
いきなり目の前に火狐のブラウザが立ち上がったので、びっくりした。
なるほど、これは確かにチートだ。
「便利でしょ? 現代人にはネット環境がないと不便だから入れときました」
「ありがとうございます。これは助かります」
「それと、そのピコマシンボディは、ドラゴンのブレスを食らっても大丈夫です」
ドラゴンのブレスでも死なないとか、どんだけ高スペックな身体なんだよ。
うん? まてよ。
「もしかしなくても、この身体って寿命がなさそうな気がするのですけど?」
「原子爆弾の爆心地に居れば、その身体でもさすがに壊れると思いますよ」
つまり、核兵器はドラゴンブレスよりも強力ということですね。
そして、それぐらい威力のある爆弾でなければ私は死ねないということですか。
ほぼ永遠に等しい寿命だなんて、逆に罰ゲームのような気がしないでもない。
でも、神さまも寿命なさそうだし、その神の眷属なんだから仕方ないのかなぁ。
「まあ、ぶっちゃけると、私が下界に降りられないから、私の代わりに下界を楽しんでねということです」
「女神様の代わりでしたか」
下界に降りられないって、神も万能ではないということなのか。
だから女神様は、私を観察してそれを楽しむのつもりかな?
「貴女を送る予定の世界の文明がちょっと停滞していてね。貴女を送り込んで発展の起爆剤にしたいのよ」
「それって俗にいうところの、中世ヨーロッパ的な世界ということですか?」
「だいたいそんな感じで合ってます。当然ですけど、魔物、モンスターの類いが居る世界になります」
まあ、だからこそ簡単には死なないようにと、ほぼ不死身に近い身体を与えられたのでしょうね。
でも、気がかりがなことがあるんだよなぁ。
「ご、ご飯が不味そうで、転生する前から気が萎えるんですけど……」
あと、中世ヨーロッパ的な世界というのは、不衛生な世界のはずだし。
「その身体は、水以外の食事を必要としません」
「水だけでいいんですか?」
水だけしか必要ないというのは、それはそれで寂しいですね。
もっとも水が飲めるのであれば、固形物も食べられるのでしょうけど。
「核融合炉の燃料に水素が必要ですから、水の補給は必須ですね」
まあ、なんとなく私の身体の中に、小型核融合炉でも内蔵しているとは思っていましたけど、ビンゴでしたか。
ということは、この身体って見た目に反して結構な重さがあるみたいですね。
「具体的な水の必要量はどれぐらいです?」
「定格出力の場合で、毎時15ミリリットル消費する感じになります」
ということは、24時間で最低でも360ミリリットルの水が必要ということですか。
このボディは、かなり省エネの身体みたいですね。人間だったら最低でも一日に2~3リットルの水は必要ですしね。
「私が水を蓄えられるタンクの容量はどれだけあります?」
「24リットルですね。つまり、無補給で75日間は連続で稼働できるということになります」
「無補給のまま75日間を過ぎたら、私はどうなってしまうのですか?」
これをちゃんと聞いておかなければ、雨に濡れなければスリープ状態のままとかかも知れませんしね。そんな状態はごめんでござるよ!
「省エネモードに移行して、人間と大差ない能力しか発揮できなくなります。詳しいことは、後で自分のスペックを閲覧して確認してみて下さい」
「わかりました」
えーと…… ああ、これですね。どれどれ……
・定格出力 50万キロワット
・最大電圧 34500ボルト
大型の火力発電所一基分と同等の出力とか、本当にありがとうございました。
これぞまさしく、エコロジー! 究極の自家発電ってヤツですね!
ってやかましいわい!
このプロローグって、そのままファンタジーモノに使いまわしができるなw
うん、いつかファンタジー小説にチャレンジしてみよう!
次話は今日の夕方に予約投稿済みです。