頭突き女の告白
彼女は、妙な癖を持っていた。なんでか知らないけれど、他人に頭突きをするのが好きなのだ。自分でも、どうして身に付いたのか分からないその癖は、別に嫌いな人に対して向けられる訳ではなく、むしろ好きな人に対して向けられて、だから彼女の友人達は、そろって彼女の頭突きを警戒してる。
ヤツの頭部には気をつけろ!
もちろん、彼女自身も気を付けようとは思っているが、ついついぶちかましてしまう事もある。友人達は、そんな彼女の性質を、ふざけてこんな風に説明したりする。
「ほら、牛とかの動物が、ツノをぶつけ合ってメスを取り合うでしょう? なんか、そういうのと関係あるのじゃない?」
彼女は自分に非があるとは認めつつも、一応はそれにツッコミを入れる。
「あたしは人間よ! それに、メスだし!」
しかし、とは言いながらも、少しは不安だったりもした。あたしは、一体なんなのだろう?
そんな彼女が恋をした。
相手は、二歳年上のサッカー部。背はそんなに高くはないが、運動神経が良さそうで、そして、頭突きも得意そう。
しばらく悩んだ末に、彼女はその先輩に告白をした。
「先輩、お願いします! あたしと、つき合ってください!」
駄目元覚悟の思い切っての告白だったが、結果はなんとOKだった。先輩は彼女の告白を受け容れた。
「ありがとうございます!」
別に、そういう事をする筋でもない気がしたが、それでも彼女は興奮のあまり、その時その場で頭を下げた。――思いっきり。
ゴン!
その瞬間、鈍い音が響いた。
見ると、目の前で先輩が倒れてる。頭に大きなタンコブを作って。
次の日、彼女が先輩に頭突き勝負を申し込んで、そして見事に勝利した、という噂話が学校で流れていた。
朗読を作りました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm23623821