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異世界の生活文化と研究

「堅苦しい話はここまでだ。この小屋はどうだ。」


 頭を切り替える。

小屋の周りを見てみると1人分の台所には食器と包丁、まな板がある。包丁は石でできているようだ。勉強机と今、座っているテーブル机がある。包丁以外はすべて木製だ。ただ、家とは違い固い素材で作られている。本棚には大量の書籍と紙が置いてある。衣服に関しては貫頭衣のようなものが多い。女性ではなかったはずだが。

 ウォルガは服に気が付いたようだ。


「服か。彼は服にはこだわりはなかったからな。ただ、彼は研究用の服だと言っていた。」

「研究用の服ですか。少し異なるように思いますが。」

「ふむ、俺は迷い人の文化までは知らないからな。もしかしたら、本来は違うものかもしれないが、確かめる術がない。まあ、あの服であれば大きさに気にすることなく着ることができるだろう。確かに女性の服に見えるが、彼が着ているとそこまで違和感はなかった。ただ、外界に行く場合は今の服のほうがいいだろう。彼が虐げられたという話は聞かないが、ここでずっと生活していたのも気になる。偵察してどのような服が一般的なのか調べればいいのだろうが、ここから一番近くの都市は冒険者なるものが多いらしく、一般的なものではないらしい。だから、そこは一度、お前が行って調べるしかない。」


 やはりそこも調べないといけないのか。結局のところ何もわかっていない。一からかさすがにしんどいな。何か一つでもわかることがあればいいのだが。でも、生きているだけましか。あまり多くを望んでも仕方ないだろう。

 ヴァルガは俺の顔を見て言う。


「不都合なことがあるようであれば、シュウコに言ってくれれば大丈夫だ。さて、我々はいったん失礼する。今から3時間後にシェイラが来る。それまでは自由にしてかまわない。」

「その後は何をするのですか。」

「それは決まっていない。こちらの調整もあるからな。その時にシェイラから伝えるようにしよう。」


 とはいえ、あまりやることはないが、食料も水もないようだ。少しはこの小屋の周りを見ておいたほうがいいだろう。ただ、今言った内容から会議で紹介するだけのことか。その後に任務かな。どちらにしても気が進まない。

 ウァルガは思い出したように俺に言った。


「そういえば、名前を聞いていなかったな。迷い人の名前は何という。」

「釘嶋 勝成と言います。」



3人は出て行った。さすがに4人いると狭かった部屋も1人になれば広く感じる。部屋の隅を見てみると埃が少したまっている。幸いにしてゴキブリなどの虫はいないようだ。しかし、本の量が思っている以上に多い。本棚は4メートルぐらいあり、横幅も4メートルぐらいある。実際に読めたらこの世界のことをよく知ることができる。


「と考えたが、読めるわけもないよな。ここは異世界だし。」


 そういいながら本を開いてみる。埃にかかっているので埃を払いながら本の題名を見る。


「人体改造の秘密…。普通に読めるな。」


字は漢字ではないものの、理解ができるというところだろうか。内容を読んでみる。ただ、いきなり難しい本に出会ってしまった。本はカビが少し生えており、慎重に扱う。そのため、戻すのも面倒なので、とりあえず読んでみる。


「人体の改造は現在行われておらず、国での規制の対象となっている。改造というのは外科的なものではなく、あくまでも魔法を使ってのゆっくりとした人体改変である。例えば、失った右手を徐々に伸ばしていき、以前のように動かくことができるようにする。そのような事例を人体改変という。」


 さすがに異世界である。元の世界では義手がふつうである。もちろん、切断した直後ならつなげることができるかもしれないが、時間がたてば治すことは不可能だ。


「魔法の中でも呪術として扱われている魔法陣の中に人を置いて呪いをかけるというものだ。現在ではこういった実験は行われていないが例外がある。それは病の治療である。外科的な手術で治らない場合は薬による薬学療法となるが、それでも効果が見られない場合には魔法での治療に切り替えることがある。例えば、内臓の細胞の突然変異による腐食病は決して治ることがない病気である。体に魔法をかけて細胞の活性化を妨げることは可能だ。しかし、それでは体全体が死に至るため、一部分に魔法をかけるようになる。普通の魔法では広範囲にわたってしまうため、このような場合には詠唱によって効果を変えることができる呪術を用いる。しかし、呪術師と言われる数も少なく20年前に行われた呪術師狩りによりさらに数が少なくなっている。わが国にはいないが別の国には存在するのを風聞で聞いたのみである。

この呪術というのは…」


俺は本を閉じた。以前の持ち主が研究をしていたのは動物を呪いにかけて進化、もしくは人間と同様の知識を付与するというものだろう。しかし、この文章では急激な変化に呪術との因果関係はない。それに呪術にしては範囲が広すぎる。そうすれば、魔法による改変だが、この森を覆う規模となればそれこそ、戦略的な大魔法と言われる魔法ぐらいしかないだろう。もちろん、ここら辺の根拠のもとになっているのはライトノベルだったりする。


「そもそも、異世界に来たのは初めてだからどんな感じなのかも想像がつかない。しかし、本が読めるとは驚いた。ただ、紙の質は日本よりもよくないな。むしろ、海外の更紙よりもよくない気がする。となれば、ここの文化はあまり発達していないのか。」


 それよりも服が気になる。貫頭衣を着るのは初めてだが、着心地はどうだろうか。やはり埃が付いているな。さすがにこれを切るのは勇気がいる。


「着る前に洗わないとだめだな。井戸は近くになかったな。ちょっと外に出てみるか。この近辺なら動物の縄張りもないだろう。」


 服に顔を近づけてみると埃もついているが、匂いもついている。長く放置しておいた匂いだ。扉を開けて外に出てみる。太陽は2つある。どうしても異世界として認識をしてしまう。

不思議なものだった。まだ異世界に来て2日目だというのにすでに環境に慣れ始めている自分に違和感を覚えてしまう。昔、人間は地球で1番順応する動物であるという文献を見たことがあった。服や食べ物がなければ順応はできないが、いったん住み着けば生活ができるということだろう。

井戸を見たことがなかったので、何か設備があるのかと小屋の周りをまわってみたが、水が出るようなものはなかった。仕方なく森へ向けて歩いていく。ふと、木の葉が落ちてきたがそれを見て拾い、その木の葉の形が紅葉に似ていて少し感慨深かった。ただ、紅葉よりも数倍大きかったが。

道というものはないため、木に少し目印をつける。柔らかい木だが、先ほどの木の葉を使って色を付けることはできた。森の中は薄暗く下が見えづらい。だから、木の根を少し踏んでしまい、滑ることはあった。この時だけは感触が違う。明らかに何か柔らかいものを踏んだ時の感触だ。

 気が付いた時には手遅れだった。


「貴様、俺の尻尾を踏んだな。」

「へ?」


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