王の異変
カツナリはヴァルガの元へ走っていた。極秘でシュウコが教えてくれたのだ。ヴァルガが倒れたと。しかし、昨日まで元気にしていたように見えた。一体どうしたのだろうか。扉の前にはシュウコが立っている。
「シュウコ、容態は。」
「すみません。分かりません。鼠たちが教えてくれたので。今から入るところです。」
「じゃあ、開けてくれ。」
「開けても大丈夫か。」
小さな扉から鼠が顔を出して、鍵が開いた音が聞える。重たい扉をシュウコは開ける。その先にはヴァルガが横たわっている。表情から見るにはそこまで重体ということでもないようだ。カツナリは脈を計った。少し早い気がするが動物と人間は脈の速さも違うだろう。外傷などはなさそうな上にゆっくりと眠っているように見える。
シュウコは少し青ざめた顔をしていた。何か変なところでもあったのだろうか。
「カツナリにはわからないかもしれませんが、動物たちには最低限の防衛反応が残されています。今の状態の王はそれ自体もない状態。すなわち完全なる休息を取っています。これは異常なことです。」
馬などは寝るのも立ったままというのを聞いたことがある。それはこの世界の動物たちにも当てはまるのか。ヴァルガの場合は物音がすれば起きる。その程度のことであろう。しかし、その反応がないこと自体が病気もしくは重大な疾患である可能性もある。
「今まではこんなことがあったのか。」
「ヴァルガ王はありませんでした。」
「では、このような状態になった動物たちがいると。」
「ええ、しかし何もなく死んでいきました。」
何もなく死んでいくだと。それは寿命ということか。人間でいえばそういうことだろうが、本来はあり得ない話だ。年を取るにつれてどこかの機能が落ちていき結果的に老衰による死亡と診断されるだけだ。あくまでも何かしらの疾患はある。
しかし、動物たちにはその知識があるとは思えない。どういった病気だ。
「しかし、このようになったということはヴァルガ王もいずれ近く死ぬのを想定しておかなくてはいけません。カツナリが来てくれてよかったと思っています。あなたは我々に多くの筋道をつけていく。私たちはそこを通るだけで充分ですから。」
「そういうが、今回の王の交代の話はこっちも想定外だぞ。俺は人間と同じくらい生きると思っていたからな。」
完全ある想定外である。ヴァルガがいることが前提であった。モニクを攻めるにしても圧倒的な武力を示すことができない場合は人間の反乱にあう。そうすれば統治などできなくなり計画が頓挫する。人間を使って様々な物を交易するのがまず目的であるため、協力者は必要だ。いくら、反乱軍が一緒に動いているとしてもそれ以上に動物たちの活躍がなかったら反乱軍が統治することになる。
「とりあえず、ヴァルガに話を聞いてからだ。出陣はもう少し先だから体調を聞いたからでも遅くないだろう。俺たちはヴァルガが出陣できる前提で計画を練る。」
「しかし、」
「確かに無理かもしれない。だがな、ヴァルガが居なかったら統制ができないだろう。それを見越したうえで何かできるであればやる。できないだろう。」
シュウコはうなだれていた。無理もない。絶対的な王であるヴァルガが倒れてしまっては何もできないのだ。それは仕方のないこと。しかし、その先を見るのは今生きている者である。それを忘れてはいけない。
カツナリは自分ができることを列挙していく。そして、すべてこなしていく。それがヴァルガのためになる。それを見ていたシュウコは別の行動を開始する。カツナリはあえて見ないことにした。シュウコにはシュウコのやるべきことがある。それはおそらくカツナリはできないことである。そのためには早く組織化しなくては。カツナリは行動へ移すことに決めた。




