死線
実際にその場にいたとしても落ち着かないことはある。シェイラは自身が思ってよりも緊張しており、この場にいることを後悔していた。パーティというのは社交の場であり、親しくないとも話をする必要がある。特に貴族の場合は会話だけでなく情報収集も兼ねているため、それなりの教養と社会情勢、マナー、言葉を覚える必要がある。シェイラは動物であり、知識も豊富なわけではない。ましては喋りがそこまで上手でなく、話をするのはカツナリとシュウコぐらいのものだ。
こちらから下手に声をかけることもできない上に誰がどのような貴族なのかすらわからない。シュウコは終始、周りを気にしていた。とりあえず、ご飯を食べようとするが何をするのかもわからず、この服は動きにくい。
「シュウコ、落ち着いて。」
隣にはピンナが居た。彼女はパーティに慣れているらしく服も着こなしている。元々、スタイルが良い上に鍛えられた筋肉はしまっており、健康的な美を意識させる。これではもてるだろうなとシェイラも納得するしかなかった。
「今はみんな話をしているけど、問題はその後の出し物よ。その出し物の間に私たちは移動する。何人かはすでにここを出ているけど彼らは慣れているからね。さて、私たちも端に移動しましょう。」
そういわれてもシェイラの緊張は抜けなかった。思っている以上に人混みが苦手なのが分かってしまった。ゆっくりと周りを観察すると若い人が少ないことに気が付く。
「ここのパーティーは本当に社交場の意味が強くて多くの人が参加するの。堅苦しいこともないからいろんな人が参加する。でも、そういった中でも交友を深めようとする人は切るから注意が必要だけど、私と一緒にいれば何もないと思うわ。」
そういいながらもピンナもいろいろなところに目線を移動させている。このパーティーの参加者を確認することもあるだろうが、それ以外にも経路などを確認する必要もあるのだろう。
しかし、この状態で移動ができるのだろうか。歩くにしても動きにくいこの服装を好きにはなれなかった。
「少し不味いわね。軍の方がこっちを見ているわ。今すぐ移動しましょう。情報が洩れていては厄介よ。」
ピンナとシェイラはゆっくりと会場を後にする。街を出るルートは頭に入っているが、それを敵に気づかれないようにしなくてはいけない。おそらく、エマーソンなどはうまく…。どうやらそうでもないらしい。遠くから争っているような声が聞こえる。ピンナはスカートを剣で短くし、走っていく。同様にシェイラもスカートを短くする。後ろを確認したが尻尾は隠れているようだ。
「どうやら気が付いたみたいね。どこに回し者がいたのかしら。」
場所に着くとエマーソンが戦っているのが見えた。周りには複数の死体があり、その中にはエマーソンの部下の死体もある。敵兵は全部で10人。援軍もあると考えればすぐに加勢するべきだ。ピンナが後ろから敵兵を切りつける。思わぬ援軍に相手も驚いている間にシェイラも1人の首を飛ばした。
敵兵は少し距離を置きながらこちらを見ている。
「助かった。思ったよりも手ごわい。援軍も呼ばないことから暗部だと思われる。しかし、知られているとは思わなかった。予想外だ。思ったよりも反乱軍と国の軍隊の情報網が確立されている。」
後ろを向くと20人の男たちがいた。彼らは援軍ではないようだが。
「反乱軍と結託しているのか。厄介な。」
「とりあえず、逃げるのがいいわね。少なくとも路地ぐらいにはいかないと後ろから刺されるわ。」
3人はすぐに走っていく。その間も彼らは後ろからしっかりとついてくる。
「撒けないな。」
「まずいわね。」
2人は止まり、シェイラは少し経ってから止まった。
「さて、ここで迎え撃つか。」
「そうね。シェイラ、戦うわよ。」
シェイラは剣を構えた。すぐに男たちが姿を現す。路地のため、3人通ることができるぐらいの幅である。3人は敵兵を切り込んでいく。相手も連携がうまくそう簡単には切られることもなかった。相手は20人ほどこちらは3人しかいない。どうするかとシェイラが考えていると、頭を瞬時に動かした。どうやら、上にも敵兵が潜んでいる。
「今のは弓矢か。くそ、本当に厳しいな。」
エマーソンは敵兵と剣を交わしながらつぶやいた。
「部下は。」
「もう少しで到着だが、1人は任せられる奴が。」
シェイラは隣に何かが落ち来るのを感じ、後ろに剣を振るった。
「遅いぞ。」
「上の敵兵が多くて困りました。ではエマーソンさん交代しましょう。」
彼の剣は驚くほど速く、相手が切られているのもわからないぐらいだった。敵兵は徐々に後退を始めている。すでに暗殺が失敗した時点で彼らは失敗しているのだから。士気はそこまで高くない。それに混成軍であるので統制が難しいようだ。
「何とかなりましたか。」
彼も息をつきながら周りを見ていた。この周りに敵兵はいないようだ。
「思った以上に手ごわいわね。」
そういって4人はビエットを後にした。




