表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/66

支配者の考え

森がざわつく。木々が揺れ、鳥が飛んでいく。地面は徐々に荒れ果てて草木が倒れそうになる。この森の中で今まで大きな戦いはなかった。各部族の支配者同士が争い、勝った方に従うというのが動物界の掟である。種を守るために全員を巻き込むことなく戦いを終結させてきた。しかし、今回の戦いは大きく異なっている。人間と同じように種族全員で戦っている。


「さっさと降伏すればいいのにな。」

「そうもいくまい。今回の沙汰は王とてやりすぎである。」


 カテーナの配下、カメレオン族は一斉に反旗を翻したと周りは見ていたが、ヴァルガはむしろそれが普通であると思っている。種族長に従っているだけであって王でヴァルガに直接従っているわけではない。カメレオン族は温和であり、あまり戦いを好まないと聞いていたヴァルガは情報が誤りではないかと疑った。すぐに戦うことにはなったが。カメレオン族は擬態するのがうまく基本的戦術は奇襲が多い。その中でも群を抜いて強かったカテーナは奇襲することなく、ヴァルガと対等に戦うことができた。

 下の攻撃を難なく躱したヴァルガはカメレオン族に拳を叩き込む。爪でひっかけば即死する可能性がある。ヴァルガとしてもシュウコから人間の国への侵攻作戦を聞いているうちにそもそもの頭数が居なくてはという思いがある。特に隠密で侵入できるカメレオン族は戦力になる予定だった。そこまでの人望がカテーナにあったとは思っていない。しかし、積もり積もった不満がここにきて爆発したのだろう。ヴァルガも許しはするが、これ以上の騒ぎになれば先を見据えた決断をしなくてはいけなくなる。


「シュウコ、周辺はどうだ。」


 シュウコは周りの状況を確認し、種族間の連絡役を担っていた。シュウコは元々の性格ゆえに興奮すると暴れだしてしまうため前線に出すことはできない。武力はクライドと同等であるが、理性を保てていないためクライドのほうが強いと言える。シュウコ本人もあまり戦うことは好きではない。


「カメレオン族単独の反乱ということですね。以前の戦いにカメレオン族はほとんど関わっていませんから勝てると思っていたのでしょう。」

「そもそもほとんどの部族が参加できていないだろう。」

「その通りなのですが、それは棚に上げているようですね。」


 虫族なども含めると数十万という数がいるため、すべての動物たちが参加する戦争は実質不可能である。今回の戦いも少数精鋭を目的としていたため、罠を張ることができるもの、もしくは作戦に合致するものなど厳選して兵士を選んでいる。次回の作戦でも同様のことが起きる。今回の反乱の目的は戦争ではなくカテーナに対する罰則の不満が多い。それに関してはヴァルガもどうしようもなかった。本来であればカテーナを監禁して更生してもらうつもりだったが、そうもいかなかったのだ。

 そのことも棚に上げて反乱を起こしているカメレオン族にも腹が立つが、蛇族のカーリンにも腹を立てている。この状況を予想できなかったのかと。基本的に予兆があるため、それなりに対策はできるはずだが、カーリンも動揺しているのだろうか。


「さすがに全滅させるには惜しい。できれば制圧で終わりたいが。」

「各所で制圧の話を聞いておりますが、こちらの被害もないわけじゃありませんのですべてが制圧という形では終われません。カーリンにも罰が必要でしょう。」

「そうか。避けられそうにないか。」


 ヴァルガは空を見上げていた。


「避けられないのであれば最善を尽くすしかあるまい。」


 ヴァルガは向かってくるカメレオン族を爪でひっかいた。ザクロのように頭が切れる。緑色の血がヴァルガに降りかかった。他のカメレオン族はその様子に驚いて一瞬体が止まる。彼らは殺されることがないと決めてかかったに違いない。しかし、ここは紛れもなく動物の国であり、強い者が弱い者を束ねる。


「遊びはこれまでだ。カメレオン族。俺も今までは遠慮してきたが、そこまで徹底抗戦するのであれば考え方を改めよう。」


 そして、跳躍しもう一匹のカメレオン族の頭を踏み潰した。潰されたカメレオン族の体は全く動かない。ヴァルガはカメレオン族を数として捉えるように見ていた。対等の動物ではなく家畜として見ている。いや、それ以下か。家畜は主人に従順である。


「ここからは蹂躙である。者ども好きにするがいい。」


 配下の動物たちが一斉に襲い掛かる。虫たちの攻撃は特に避けようがない。数も多い上、小さいので体中に寄生されると徐々に体力を消耗する。ヴァルガはカメレオン族を滅ぼし、見せしめにすることにした。今までは種の存続を考えていたが、反乱を許すところまで行っている以上、恐怖で一旦は支配するしかない。次の世代で温和な王に任せるようにしよう。


「よいのですか。カメレオン族は。」

「そうだな。しかし、ここで一旦締め付けが必要だ。皆が理性を持ち、長く生きたせいで本来の動物の本質を忘れかけている。いいことでもあるが悪いことでもある。人間と戦ううえで甘えなどあってはならない。人間は我々よりも狡猾だ。カツナリを見れば分かるだろう。」


 シュウコも遠くを見ながら同意した。


「…。そうですね。王の判断にゆだねましょう。」


 カメレオン族はその夜を持って完全に滅びた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ