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新たな魔物と新任務

 俺は街を歩いて考えていた。いくつの不特定要素もあるが、こちらに有利な条件が多くある。問題はモニクの動向にある。モニクの軍が駐留する限り、生見やマイルズが協力してくれたとしても俺たちの作戦が成功する確率は非常に少なくなる。

 街の中には兵士が多い。しかし、その兵士の表情が暗いのも変わらない。マイルズのことが関係しているわけではないだろう。違う感じする。何かが違っている。明確にはわからない。

 商店にも行ってみると商店には傷んだ野菜が並んでいる。これを店頭に出しているということはこの傷んだ野菜が今出せるいいものであるということか。前の世界では安いものを主に出していた。この世界では一番良いものを店頭に出す。この世界では鮮度を長く保てないため、こういった形になっている。貴族などは店頭を見て商談を行う。

 魔物の影響があるということだろうが、それだけではない。兵士がいるため食料を供給している。これでは住民に不満はたまるだろう。


「カツナリ。」

「どうした。シェイラ。」

「クライドと話をした。彼が待つことは問題ない。でも、違う問題が発生していると聞いた。」

「なんだ。」

「魔物が多いらしい。クライドは怪我をしていなかったけどこれ以上多くなると手に負えないと言っていた。」

「魔物か。」


 やはり、魔物の影響があるのか。シェイラの持ってきている袋には魔石が入っているのだろう。クライドが持っていれば多くの魔物が引き寄せられる。


「しかし、随分と多いな。」

「うん。そう思う。ここまで出現するというのは魔物の出現が当たり前になっているということ。世界が少しずつ変わっていくと思う。」


 この街を見ていればわかるが、魔物対策はしているものの厳重な警備をしているわけではない。大型の魔物が出れば撃退することはできそうにない。何とか食い止めることはできると思うが。


「冒険者たちは変化についていけるだろうが、市民はなかなか。」


 俺はその危機感を感じていた。人の国が荒れることは俺たちにとって良いことだ。しかし、魔物が増えることはいいことではない。人間は多くのことを学び、培い実行できるまでの力を持っている。しかし、その力を持つまでが時間がかかる。前の世界では銃が発明され、戦争が変わった。この世界でもそういった革命がおこる可能性はある。

 冒険者はまだいい。魔物の任務も経験している人が多く、様々な人が死ぬのを見たこともある。だが、市民はそうではない。ほとんどの人が死とは無縁の生活をしている。そんな人たちはそのような死地に送られたら絶望して動くことすらできない。

  俺はふと嫌な予感がするのを感じた。シェイラも周りを見渡している。


「…何か来る。」

「大きいのか。」

「かなり。この街が滅ぶかもしれないほどの。」


「オオオオオオオオオオオオオオオ」


 上空の歪んだ空間から大型の龍が出現する。おおよそ、人が倒せるような魔物ではない。俺は上空を見上げていた。龍はゆっくりと旋回する。街を見ても人間を見てもそこまで驚いてはいないようだ。

 むしろ、僥倖と言える。龍が襲って来れば俺たちは簡単に負ける。俺はずっと龍を見つめていた。その龍も何かを見つめている。市民も先程の声を聴いたのだろう。多くの人が出てくる。ギルドの周りでは忙しく動き回っていることだろう。

 ふと、龍がモニクの方面を向く。龍は体の向きを変えてモニク方面へ去っていく。俺は足の力が抜けて座り込んだ。冒険者や兵士は全員がその場に座りこんでいる。

 魔物との戦闘を経験している者はすべてあの魔物の強大さを目の当たりにしている。その中でギルドの受付の人が走っている。多くの冒険者に声をかけている。


「カツナリさん。」

「はい。あなたは。」

「緊急会議です。拒否権はありますが、この街から出ていくことになります。参加してくれますね。」


 さすがにあの魔物はどの生物にとっても脅威だ。あの魔物が出現すれば何もかもが吹き飛んでしまうだろうな。もはや人間だけの話ではない。


「もちろん、参加します。」

「シェイラさんもよろしいですか。」

「うん。」

「では、開始は1時間後。おそらく多くの冒険者が来るため、外で行われると思いますが、指示に従ってください。」


 ギルドの人は去っていった。


「シェイラは遅れて来い。クライドに話してきてくれ。」

「分かったけど、何を伝えるの。」

「龍のモンスターの話とモニクが壊れることになるかもしれないと。その時には任務は失敗だ。」

「…、カツナリ、それでいいの。」

「本当は良くない。だが、ここで命を投げうる意味がない。それにあの龍をどうにかできる作戦が思いつかない。」

「それは私も一緒。悔しいけど。」

「だから作戦の中止もあるということだ。ギルドのほうはリーブルに来た時の対策であると思う。その作戦は結局モニクに行くことはなく、見捨てることになるはずだ。下手に大きな災害を自分たちの街へは呼び込まないだろう。」


 下手に龍を指摘して街が滅びては意味がない。しかし、あの龍はいったい何をしに行ったのか。モニクには何かあるのだろうか。

 あの方向はクライドがいる方向と同じだ。少し俺は気になったが、今はギルドに行く。


「頼んだ。シェイラ。」

「分かった。話をちゃんと聞いておいて。」

「了解。」


 俺はギルドのほうに向かって歩いていく。ピンナが目の前から歩いてきた。


「カツナリ、シェイラは。」

「少し外に出ている。」

「今回は大掛かりにはなりそうにないわね。」

「やはり。」

「さすがにあの龍をどうにかできる人はいない。撃退が限界。もちろん、軍で戦えばどうにかなるかもしれないけど、今の状態で戦えるほどの軍隊と反乱軍は統制が取れているようには見えないから。」


 階級が金の人が言うのであればあの龍はどうにもならない。あくまで災害として考えよう。さて、そうなると今後の作戦を組み立てよう。


「そういえば、モニクから援軍要請は。」

「ないわよ。さすがに。敵軍よ。小さい国とは言えそう簡単に要請をすることはないと思うわよ。」


 そうか。モニクは協力関係ではないか。まあ、反乱軍と同調することぐらいだからそこまでの国ではないか。ギルドの支部があるだろうが応援には行けないだろうな。


「そうですか。」

「君は少し人間臭いな。冒険者をやっていくと人間として見れなくなる時がある。」

「それは。」

「あと話そう。着いたぞ。みんな待っている。」

 


 俺が想定していたよりも多くの人間が来ている。彼らはあの龍対策に関われる人物であるということ。それ以下に人間はここに呼ばれない。もちろん、人柱的に役に立つことも考えるが、ギルドはそんなことを考えない。あくまでも人材を大切にする。


「多くの人が集まった。今回は全体で集会を行う。理由は先ほどの魔物である。措定では10メートルを超える巨大な魔物である。形態はわかっていないが、単独行動をとるタイプであり、ある程度理性がある。理性がなく衝動に駆られる魔物ならばリーブルを襲撃している。それがされなかったということは何らかの目的をもっているということである。」


 理性がある魔物が存在するとは思っていなかった。俺が考えている魔物は人間を見境なく思ってくる動物とは言えない異形なものである。しかし、今回の龍は明らかに意思を持っている。出現しているときに何かを探していた。それは俺も感じていたことだ。

 運が良かったのかわからないが命が助かったのは事実だ。


「本来ならばここまでの徴収をかける必要はないが、住民が逃げるのも準備がいる。もちろん、この街から去る冒険者もいるだろう。ギルドもそれは止めない。命があっての人生だ。好きに生きればいい。しかし、逃げ切れない場合には戦う道しか残っていない。そのために集まってもらった。」


 その通りだ。逃げることができなければ戦うしかない。それぐらいの気構えは冒険者が優れている。他の戦いを見ている体験している人間は覚悟ができる。その覚悟がどの程度大きいかによって対応も変わる。


「最初に言っておくが、単独で戦っても勝てない。それだけは頭においてくれ。昔の英雄ならともかく今の世の中にそこまでの英雄はいない。だからこそ、集団で戦うしか残っていない。ただ、ここで重要なのはどの攻撃が有効であり、どの攻撃が効かないのかが分からないということだ。それを踏まえると遠距離での攻撃と近距離での攻撃を併用することになる。それは分かるな。」


 大型の魔物の場合には集団戦となる。最初に遠距離での攻撃を行いながら、近距離の攻撃者が近づいていき、攻撃を仕掛けていくという攻撃となる。その後、魔物がどのように感じるかよって戦い方が変わってくる。物理攻撃が効く場合は近距離と遠距離での両方で戦う。反対に魔法での攻撃しか有効でなければ術師を守りながら攻撃を与えていくことになる。実際には魔法攻撃しか効かない魔物は数が少ない。


「前衛は重装備ができるやつに任せる。その他は各々に戦うことになるが、近接攻撃しかできず、重装備ができない奴は隠れているように。」


 無駄に突っ込んでも駄目だということか。しかし、それでは戦う冒険者が少ない。


「隠れて弓を射ろということだ。あんなに大きな的だ。ある程度、近づけば簡単にあたる。魔法が防御された場合、術師は即座に撤退し、住民を誘導しろ。」


 魔法が使えて、近接攻撃ができる冒険者は本当に数が少ない。


「作戦は以上だ。大型魔物が出てきた際には対応するように。」


 冒険者は解散した。しかし、どこか表情は暗い。あの魔物が来た時点で負けるということはわかっているのだろう。どうにかしようにも何をすることができない。


「カツナリ、少し話がある。今から宿に行ってもいいか。」

「大丈夫ですが。」

「敬語を辞めておけ。では、また後でな。」


 一旦、俺は立ち止まった。何の話だろうか。




 俺はピンナを見ていた。少し焦っている表情に見えるが…。しかもこの時期に…。ピンナはこちらを見ながら頭を下げた。


「生見を助けるためにシェイラの力を借りたい。」

「生見が囚われているのはどこになる。」

「コパン。彼はそこにいる。」

「ここからは3週間かかる。」


 ここから3週間。作戦に支障が出るな。しかも作戦がうまくいかない可能性もある。それにモニクでの作戦を1人で行うのは難しい。行うにしても慎重になってしまうため、うまくいかない可能性もある。

 クライドを使う手もあるが、体が大きすぎて人間には見えないだろう。やはり俺1人で作戦を行う。少し難しいな。


「ピンナのほうも大変だろうが、さすがに3週間は…。」

「しんどいか。」

「ああ。こちらも動いているからな。そう簡単に協力をすることが難しい。何とかしてあげたいのはやまやまだが。」


 俺は素直にそう答えた。彼女は反乱軍の一人だから隠す必要もない。しかし、彼女がこのように言うということは彼の地位はかなり危うい。この危機を脱すれば大丈夫かと思うが。しかし、この反乱軍がどこに行くのか見当がつかない瓦解することがなければいいが。


「そうか。」

「しかし、どうしてこんなことを俺に頼む。シェイラに言えば済むことだろうし、周りにも協力者がいるだろう。」

「誰が味方かわからない状態で彼を救出することは困難を極める。私の周りにも味方がいるけど、誰が内通者かわからない。みんな疑心暗鬼になっているから協力者も募れない。」


 俺の考えは安直だったな。思っている以上に難しい状況。俺はマイルズのほうを何とかしたいが。そんなことを考えているとシェイラが入ってきた。


「カツナリ、私は彼女と一緒に生見を解放してくる。」

「本当か、シェイラ。君がいればきっと解放することができる。」

「何を言っているんだ。シェイラは作戦を忘れたのか。」

「違う。ピンナにも手伝ってもらいたいことがあるから生見の解放を手伝う。」

「その条件とは。」

「王都で囚われているマイルズの解放を手伝うこと。それが条件。」


 …とんでもないこと言うな。


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