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新たな作戦と動物の変化

カツナリは森の様子がいつもと違うことに気が付いた。動物の森では通常の森とは違い監視役がいる。動物は通常、縄張りに入った動物を警戒する。あくまでも警戒である。長時間入れば排除の対象となるが、反対にその縄張りに入った動物もそれは分かっている。言葉をしゃべることのできる動物たちはそれに加えて監視をしている。特に警戒すべきと動物を確かめ監視し続ける。

人間であるカツナリはその対象になる。個人の武力はそこまで強くないが、知恵があるためカツナリは監視を続けられる。その監視が全くないような気がしている。毎回、森に入っているときに確証はないものの、何かに見られている感覚があった。


「カツナリ、何かあったみたい。」

「それぐらいは分かるが、何があったのだろう。カテーナを討つということは聞いていたが。」


 カツナリはとりあえずヴォルガに会えばことの経緯ぐらいはわかるとも思い歩いていた。

その時に大きな影が見えた。


「カツナリ、帰ってきたか。思ったより早かったな。」

「クライド…、元気が少しないようだな。」

「いや、少し気になることがあってな。カツナリに聞いてもらいたいと待っていたんだ。俺だけでは答えが出ないのでな。」


 カツナリは話を聞いていたが、気になる部分があった。それは蜃気楼の部分である。空間が歪んで出てくるのは魔物である。それだけを前提にするならば彼は魔物になったということになるが、一体何が原因なのか。その上、人間を食べると強くなるというのはまさに魔物のそのものである。


「魔物か。魔物を見たことがないから判断しかねるな。」

「それはそうだろうな。俺もカテーナの状況を見ていないから確証は持てないよ。ただ、今の話を聞く限りは確実に魔物化していると言える。しかし、その原因が何かを探ることができなければ防ぐこともできない。」


 結局のところ、魔物はよくわかっていない生物なのでこのような会話になる。しかし、炎を操る魔物など厄介極まりない。しかも、カテーナの巨体がさらに大きくなり、能力も上がったということであれば人間では太刀打ちが難しくなる。

 人間は知識を深めることはできるが、体そのものを強くすることは不可能だ。強化の魔法でさえ、元々の体を強くするだけのもの。体が強くなったわけではない。


「しかし、人間がここにいなくてよかった。」

「そうだな。被害が甚大なものではなかっただろう。その考えも含めてヴァルガに話をしよう。ヴァルガは何をしているのだ。」

「この話の話し合いと縄張りの再選定だ。多くの場所が開いたからな。それでもめている。動物は一旦決めてしまえば楽だが、こういったときは面倒くさい。俺は放浪する部族だからそこまで愛着がないが、鳥族なんかは割と大変だと思うぞ。」


 鳥は毎年同じところに巣作りを行う変わった鳥もいる。そのような鳥は場所が変わると大変である。


「それは大変だが、今はそちらの話をしている場合でない。もっと重要なことがあるからな。」

「では急ぐとするか。」



 ヴァルガは会議室にいた。なんか憔悴している。まあ、同じ話ばかりを聞いていたら憔悴もするだろうな。しかし、誰しも血走っているな。それほどに縄張りが大事か…。人間には理解が及ばないところかもしれない。


「カツナリ、報告がということだったが。」

「ああ。少し長くなるが。」



俺は顛末を話した。


「今の経過に過ぎない。俺たちは彼らに力を見せる必要がある。」

「そうだな。しかし、何かあるのか。」

「簡単だ。国を攻める。」

「戦争か…。」


 ヴァルガは少し顔を曇らせていた。


「カテーナの件は聞いている。しかし、今のままでは食料がなくなる可能性があるだろう。それを補填するためにもいずれは作物を育てるための種がいる。それは人間の世界にしかない。ここにもあるだろうが実りが悪い。人間は改良を重ねているから、その種をもらった方が手早い。」


 ヴァルガはうなっていたが、俺の方を見た。


「カツナリが言っていることは正しいだろうが、軍の編成には少し時間がかかるぞ。」

「分かっている。一年後に攻めることを目標にしているからな。それまでは大丈夫だ。」


 急いでやることでもないからな。それに反乱軍も人数を集めるのに時間がかかる。彼らはどこを中心にして攻めるかは動物の国の軍を見て決めるのだろうが、監視もあるからそう簡単ではないだろう。


「そうか。カツナリにも会議に参加してもらいたいが、動物の縄張りのことは口を出さないほうがいいだろう。とりあえず、その話が終わるまではゆっくりとしていてくれ。後、マイルズとその生見碧という男にも手紙を届けるからどのような鳥がいいか考えておいてくれ。手が空いているものにやらせる。」


 ヴァルガはそういって話を切った。俺はヴァルガに礼を言って会議室を後にした。外ではシェイラが待っていた。


「うまく話ができた。」

「ああ。だが、思ったより縄張りの件はこじれそうだな。少し待った方がいいだろう。」

「うん。クライドのほうも仲間が結構死んでいる。少し時期をずらした方がいいかもしれない。」


 しかし、そんなに時間はない。1年というのはあっという間に過ぎて行く。その間にもいくつかやらなければならないこともある。もちろん、褒められたことではないが、今やらなくては今後に関わる。


「その間にやるべきことがある。ヴァルガには許可を取っていないが、必要なことだ。シェイラ頼んでも大丈夫か。」

「内容による。それがこの森のためになると判断したら動く。」


 俺とシェイラは話を行った。



 次の朝、クライドを訪問していた。彼の役割は重要になる。思ったよりも重労働になりそうだが、うまくやってくれれば少し計画を早めることができる。クライドの様子は良くない。素人の俺から見ても体調が悪いのはわかっている。シェイラの護衛を任せることができるのはクライドしかいない。


「大丈夫か。」

「ああ、そこまで悪くない。ここずっと慣れない考え事をしていたからな。その影響だろうよ。話があると聞いたが、何か用事か。」

「ヴァルガには許可を得ていないが少し作戦がある。今はまだやらなくてもいいことだが、いずれ必要になることだ。早めに対処しておきたい。」

「そうか。話を聞こう。俺たちは別に王へ忠誠を誓っているが、利益になるのであれば基本大丈夫のはずだ。」


 俺はクライドに話をした。


「この話であれば俺とシェイラは実行部隊だが、それ以上にシュウコに話をするべきだ。」

「なぜ、シュウコが出てくる。」

「この問題の主管はシュウコだ。そこには話を通しておけ。彼が怒ることはないだろうが、筋として通すべきだな。」

「なるほど、そこまでは考えていなかった。」


 俺は少し考えていた。シュウコは少し真面目である。良くも悪くも真面目である。この作戦を聞いたらおそらくは反対するだろう。彼はそういう男だ。しかし、彼が主管であるのなら話をするのは当たり前だ。

 では、こうするしかないか。あまりいいことではないな。


「ああ、分かった。だが、話を合わせてくれ。この作戦の肝を教えるとシュウコは反対するだろうからな。」

「それは分かっている。うまくやるさ。」




 俺はシュウコに話をしに行った。


「これに関しては私は何も言えませんね。あなた方はすでに人間の中に紛れて生活をしてきましたから大丈夫でしょう。でも、なぜクライドを連れていくのですか。護衛が必要なのはわかりますが、クライドまで連れていくのは少し過剰かと思いますが。」

「危険なのはわかっているからな。少なく見積もって多くの同胞を失うわけにはいかない。」


 カツナリは1年後の話についてもシュウコに伝えた。ヴァルガが強さを持っている限り、強行すれば簡単に従うだろうが、戦争である限りは士気が高くないと勝率が大きく下がる。ヴァルガのことを疑うわけでなく、文官としてもヴァルガを後ろから支えてほしいという願望もあった。


「1年後と言えばかなり急ですね。マイルズが潜伏しているといえ、かなり大きな賭けだと思いますが。」

「確かにそうだが、国として認められていない以上は貿易なども出来ないため、徐々に衰退するしかなくなる。特に動物の国は寿命が短いものが多いため、知識の蓄積が一部の者に偏ってしまう。できるだけ、文章にできるような人材がほしいんだ。」

「なるほど。それは一理ありますね。では、そのように動きましょう。そこではシェイラにもまた動いてもらいます。」


 シェイラはわずかに頷いた。以前の斥候の失敗が関係しているに違いない。少し表情が暗い。


「カツナリ、あなたは作戦に動くのですね。」

「明日中には発つ。」

「分かりました。私が臨時で許可を出しましょう。うまくやってください。」


 俺はシュウコの部屋を出ていった。


帰りにシェイラが俺の方を見ていた。


「どうした。」

「大丈夫なの。あんなに嘘をついて。」

「嘘はついていない。やることはシュウコに言った通りだからな。その中で異常事態が発生した場合に違う作戦に移るということ。その違う作戦はあくまでも現場に行った時に考えたことと説明するだけだ。」

「それは嘘をついていると変わらないと思うけど。」

「そういうな。これは必要なことだし、今後の展開にも関わる。」


 俺はこの作戦についてはそのように考えていた。本当のことを言えば、簡単に適正な買い物ができればいいが、そうではないだろう。大金を見せれば変な奴は必ず出てくる。その時にちょっとした手違いが起こるだけである。俺はそう思っている。


「どちらにしてもこんな方法を使わなくていいならばリーブルで目標は達成する。」

「そうなるといいね。」

「それはもちろんだ。」


 俺は何となく空を見上げた。そこには鈍く光る星があった。


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