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別れ

 俺は受付に向かっていた。どちらにしてもこの生活を続けることができない。反乱軍を調べるにしてもアージニアに帰るにしてもすぐには準備できない。できるだけ重荷になるものは置いておく。


「親父さん、急だがこの宿を出ることになった。」

「そうか。わかった。お前は本当によくやってくれた。冒険者でなく内政担当者みたいだったな。」

「ありがとう。」

「正式にいつ出ていくかは決まっていないだろう。だったら泊っていけ。半額でいい。出ていく時には声をかけてくれよ。」


 親父はそういって厨房に戻っていった。そうか。夜か。俺は天井の汚れを見ていた。



 それから、シェイラと一緒に今後のことを話し合った。すぐには出発をしないこと、宿を辞めたこと、ギルドへ挨拶に行き、現在の指名任務を終わらせる。このことを確認した。特に指名任務はすべて完了しておいた方がいい。今回と同じように潜入する場合にはこのギルドの名声は役に立つ。早くも2つの名を持つシェイラは特に。


「少し気になるのが、人間の肉を食べた動物たちとの戦いだ。彼らは隠しているみたいだったが俺には筒抜けだった。もちろん、人間と戦うわけではないから参加する必要もなかった。」

「確かに。今までに人肉を食べた動物はいないのでわからないけど、何か嫌な予感がしたのは覚えている。うまくは言えないけど、何か狂気に満ちたようなといったらいいのか。」


 少なくとも人間の肉が独特であるのは知っている。できるだけ人間の肉を与えないようにするのは味も原因の一つ。人間の肉の味を覚えた熊は人間を襲うようになる。味を覚えるということもあるのだろうが、それ以上に中毒性がある場合には注意が必要である。


「そうか。俺には動物の変化には疎い。シェイラも何かあったら言ってくれ。人間と動物は明らかに違う。いかに言葉を話すとは言え、薬草などもうまく使わなければ毒になることもある。肉食動物に草を食べさせたら大変なことになるだろう。」

「うん。わかった。じゃあ、明日はギルドに行くの。」

「ああ。さすがに話をしておかないと不親切だろう。」


 俺たちは夜ご飯を食べて横になった。この1か月が濃厚であったのは初めて街に来ただけでなく、任務としてきたので濃厚に感じたのだ。単純に冒険者で来たのであればここまで感じなかっただろう。

 俺は目を閉じた。



翌朝、俺とシェイラはギルドに出向いた。ギルドのみんなは別れを悲しむようなことはなかった。冒険者である以上、街に定住する者は稀であり、おおよそ20ほどの都市を回ると言っていたので俺たちが居なくなるのは一般的である。

しかし、指名任務が全部で5つあり、すぐには終わらないことが分かった。俺とシェイラはすべての任務を受けた上で追加の指名任務を断るようにギルドに申し伝えた。これをしておかないと永遠にここから離れることができない。本当にありがたい話である。


「しかし、ここまで指名任務をこなす必要はないのですよ。冒険者には冒険者の都合がありますので、ギルド内でも調整ができます。速度ではあなた方にはかなわないでしょうけど、何とかなる任務ばかりです。」

「問題ありません。そこまで急いでいるわけではないので。しかし、5つとは思った以上に多いですね。」

「当たり前です。何と言ってもあなた方は早い上に量が期待できます。確かにここらへんの薬草はなくなったでしょうけど少し遠くまで行けばすぐに見つけてきますからね。依頼人もそこはよくわかっています。」


 俺たちはすぐに出発した。魔物が多く出現していると言っていたので少し怖い部分もあったが、そこは任務と割り切ると思っていたら、後ろから誰かが追っているらしい。シェイラがあまり警戒していないことから知り合いなのだろうが。

 その姿を見たとき、組み合わせが意外であった。


「生見碧さんですか。どうしてこちらに。」

「少し暇でして。街にいると誰かに見張られていますし。しかもピンナさんと知り合いという話を聞いたので少しついてきたのです。」

「話をしようにもいなかったからね。ついてきた。勝手についてきたのは謝る。あと、グリンの話も一応した方がいいと思ったから。」

「まあ、いいですが。2人はどういう知り合いで。」

「一応、反乱軍の構成員。でも、あんまり活動はしていないけどね。さすがに金階級にもなれば動くと目立つから難しい。」

「そういうことです。ピンナさんは構成員でありながらも活動が限定されているので、運用が難しいのです。その分、彼女が反乱軍の一員であるという確証も得にくいのでしょうが。」

「ならば、ここにいてもいいのか。一緒にいるところを見られたまずいのでは。」

「冒険者は厳密に言えば国に仕えているわけではなくギルドに仕えている。ギルドは建前上国の直轄にはなっているが、そこまで厳しいものではない。ギルド側も構成員が居てもそこまで立ち入らないから知らないと言える。もちろん、ギルド内の情報はすべて報告されるが。」


 ギルドはそれなりに頑張っている。政治の取引にも応じるところと応じられないところを作り、自分たちの地位を守っている。完全に従ってしまったら冒険者はなくなってしまう。


「君たちがどういう出自なのかは聞かない。でも、会ってみて少し心が乱れている。この感じは以前の反乱軍の総帥にあった時、そしてこの国の王に初めて会った時。」

「…光栄ですが、私はそこまでの人間ではありませんよ。」

「今はでしょう。これからいろいろやっていくのです。いやでも有名になりますよ。それに戦場で本当にあなたを見なかったのですか。見ている人がいればあなたを狙いに来ます。」


あの時の人間しかいないが、顔も特徴がなく身長も高いことはなかった。この街が大きくないとはいえ見つけることは難しい。


「あなた方の有利な点は知っている人が異様に少ないということです。先の戦いでよほどの消耗をしているのにも関わらず、国が公表をしないのは何かがあります。国民の無駄な不安をあおるのは別にしても少しおかしいと思います。」


 しかもその人数の人間が死んだのにも関わらず、誰も気が付かないというのも異常である。孤児で集めたとしても人間のつながりはどこかにある。


「綻びがどこから出るにせよ、行動は急いだほうがいい。その忠告をしようと思っていた。私はこの国を恨んでいる。君たちがこの国を打倒するのであれば協力しよう。」

「分かりました。生見殿と同じように連絡をいたします。マイルズ経由になるかもしれませんが、随時報告をいたします。ただ、こちらにも準備があるためすぐにとは言えませんが。」

「それで構わない。私は協力をするだけだから。」


 俺たちは固い握手を交わした。



「お世話になりました。」

「気をつけてな。何かあればこの街によるといい。君たちならいつでも歓迎だ。」

「はい。」


 門番の人と会話をしてリーブルの街を離れた。


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