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言い争い


 俺はピンナとグリンを見ていた。この2人にはギルドの最初で出会ったが、その後出会うことはなかった。この時期に依頼を出してまで俺たちを呼び寄せようとしているのか。それともグリンのほうで何かわかったのか。

 俺が警戒をしているのはグリンのほうである。彼の父親が研究者であることは以前の話で分かっている。アージニアのほうでなくなったということだが、時期が一致していれば彼の話は本当になる。そして、わざわざ父親の死の原因を探っているのはなぜなのか。


「2人に指名を出したのは私たち。」

「どうして。」

「あなたたち、討伐任務を一度も受けていないでしょ。私は初めて会ったとき、男の君はともかく女の子には才能があることが分かっていた。だから、討伐任務を受ける時に合わせて声をかけようとしていたけど、訓練をする割に慎重すぎるから今回に無理やり参加させようとしているの。」


 ギルドのお姉さんが前に出る。少し肩が張っている。もしかして怒っているのか。


「ピンナさん、今回の件は越権行為ですよ。一構成員が強制的に討伐任務を受けさせるなど言語道断です。」

「そうか。不思議なこともあるものだ。最初の任務の選定の際には受付では何もしないことになっているが、3回目ぐらいで動物や魔物の討伐任務を受けさせる義務があるだろう。それを無視しているお前たちはおかしいのではないのか。それも越権行為だ。いかに薬草を多く集める人材であったとしても一通りのことはさせておくべきだ。いずれ来る日のためにな。」

「しかし、彼らのことについて私たちは話し合い、今回の結果になりました。あなたたちにそういった権利はありません。薬草を取るだけの簡単な仕事かもしれませんが、役に立つお仕事です。現にシェイラさんには多くの指名依頼が発生しています。」

「簡単だとは思っていない。私も経験があるからな。彼女みたいに効率良く採取なんてできない。だが、今の話と我々の話はまた別だ。」


 2人はにらみ合っていた。しかし、ピンナが俺たちにそこまでの肩入れをする意味が分からない。ギルドは利益を出す冒険者に対して守るのは当たり前だが、ピンナは優秀な冒険者であり、傭兵でもあるはずだ。今更、下級の冒険者が必要であるとは到底思えない。

 また、グリンも目的が見えない。接触が必要であればこのような形で一緒に行動する必要はない。父親を捜しているのであれば俺を頼るのは何か感じるものがあったのだろうか。


「カツナリ、どうするの。」


 シェイラは言い争っている2人を見ながら俺に囁きかけた。あの2人に答えは出ないだろう。どちらも正しいのだから。


「受けるのがいいだろうな。」

「どうして。」

「俺たちの目的は勧誘だが、その前には知り合いになる必要がある。少し話をしているだけでは勧誘すらできないだろう。」

「でも、目的が見えないけど。」

「確かにそうだが、危険を冒さなくては手に入れる物も手に入らなくなる。それはシェイラもわかっているはずだ。」

「うん。わかった。カツナリを信じる。でも、危険だと思ったら逃げてね。この中では一番弱いのはカツナリだろうから。」

「…。わかっているさ。」


 俺は言い争っている2人に声をかけた。


「どうした。」

「ピンナさん。ご指名ありがとうございます。今回の件ですが、我々は初めての討伐任務となります。ご指導込みでお願いしても大丈夫ですか。」

「何を言っている。そのつもりで声をかけていたのだから当たり前だろう。」

「カツナリさん、無理する必要はありませんよ。嫌であれば断ればいいです。」

「気持ちはうれしいですが、階級の金の方に直接指導していただけるのはまたとない機会です。冒険者としてはかなりよい経験になるかと思います。」

「しかし、」

「懸念はわかりますが、我々は冒険者です。確かに今回の依頼はギルドの利益にそぐわないかもしれませんが、自由である冒険者にギルドが介入していいとは私は思っていません。」


 受付の女性は少し考えて戻っていった。


「ふむ、正式に依頼書を発行しているようだな。正論には正論か。君は良い性格をしているな。」

「ピンナさんに言われてもうれしくありませんね。今回は我々にとってもよい機会であるのは確かですし、魔物の討伐の仕方を教えてくださるのであれば拒否する方がおかしいですからね。あえてあなたはそうしたのでしょうけど。しかし、受付の女性と揉めるまで演技をする必要はありましたか。」

「いや、そこは受付の女性があまりにも必死になっているのが面白くてな。少しからかったのだ。あそこまで怒るとは私も予想外だった。」

「話はまとまりましたか。」

「グリン、この4人で魔物の討伐任務を受けることになりそうだ。君もわかっているがシェイラとカツナリ同様無理をするなよ。魔物は恐ろしく手ごわいからな。動物のようにはいかないと思っていてくれ。」


 グリンは神妙に頷いた後、こちらを見ていた。


「カツナリさん、依頼書を発行しました。依頼者が添え状にサインをした段階で任務は終了となり金銭がもらえます。2人は薬草を採取することに関してはすでに一番詳しくなっています。ギルドとしてはあまり危険な任務には出ていただきたくありませんが、冒険者としての志までを否定したいわけではありません。」

「分かっています。適性をみるにも一回は受けていた方がいいですからね。」

「準備はできているのか、近くに魔物が出るという噂を聞いているから早く行きたいのだが。」

「分かりました。行きましょうか、ピンナさん。」


 俺たちはギルドを出て、草原へと向かった。


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