冒険者登録
俺とシェイラは部屋を出た。宿を出た俺は改めて財布の中を見た。中身はマイルズからもらったものだ。貨幣には種類があり5つの種類がある。ジルという大陸名であるこの名前をとっている。
ジル銅貨、ジル大銅貨、ジル銀貨、ジル金貨、ジル白金貨の5つ。銅貨が1円、ジル大銅貨は100円程度。ジル銀貨が5000円、ジル金貨が3万円程度。ジル白金貨が10万円の印象を受けた。今回の宿にはジル金貨10枚を払っていた。話を聞くと2か月以上滞在できるだけの支払いと聞いている。しかしながら、これはあくまでも日本の基準であって、この異世界では貨幣の価値が高い。
1日に消費するお金は平均、大銅貨5枚ほど。これが一つの家族の消費量である。元の世界では千円程度と聞いていた。こちらの平均収入が低いのだ。平均収入は15万円ほど。しかし、彼らには保険や雇用などは確約されていない。だからこそ、少しだけ収入が多いのだろう。
「思っている以上に人は多いね。」
「そうだな。」
俺は大都会を見ている。それに比べれば多くなんてない。むしろ少ないぐらいだ。何万にもいないだろう。精々5千人ほどだ。それが多いとはとても思えない。それでも大きい方であるのかどうかは確かめたいところだが。しかし、人数を考えると以前の戦争で失った人数はかなりの痛手のはずだ。
「戦争に負けたにしては活気があるな。」
「それは私も思っていた。」
もしかして情報規制を敷いているのか。何万人もの死者が出ている戦争ですべてを隠しきることはできないと思うのだが。実際には大事にしないように隠しきることができるだろうが、かなりの無理をしているのだろう。
ここの住人はそんなことも知らずに過ごしているのだろうか。
俺は少しずつ町の中を見ていた。八百屋や商店などもある。しかし、売っているものが少ない。元の世界とはかなり違うな。商人のルートが確立されていないのではなく速度の問題だろうな。値段も高く設定されているかもしれない。
「町はそこそこだが、これ以上は発展しそうにないな。」
「活気がないから。」
「それもあるが、若い人の数が少ないだろう。人口が増えなくては町も大きくならない。そういったものだ。」
あとは農業と工業だが、ここの旨味はそこではなく国の玄関である。人口が増えない理由も玄関口であることも理由だろう。魅力を感じて出ていく人間もいるだろう。そう考えると人数は増えることはない。其の上、若者がいないとなるとあまり先の未来は明るいものではない。
だが、そもそも強みがあるのであれば強みをうまく生かせば回復も早いはずだ。しかし、マイルズの話を聞いたときは王の施策が良いからと話を聞いたが、本当に王に何かがあったのだろうか。普通の王ですら施策はある程度行うはずだ。
「ここがギルドの建物か。」
「すごくでかいね。」
建物の大きさは近所のスーパーほどに大きい。この町の家の平均の大きさから言えば4倍以上の大きさである。これぐらいの大きさがいるということはそれだけの人が利用しているということだ。
俺は扉を開けた。あるのは大きなビラが貼ってある。大昔のものか。変わった男のように見えるが。今は関係ないか。隣には沢山の椅子と机が置いてある。一般人と冒険者が話をしているところもあれば、商人と一般人とが話をしているところもある。ギルド内で商談もしくは依頼をしている人もいるのだろう。
みんなが並んでいるところがあったので、そこの後ろに並んだ。周りにはいろんな格好の人間がいる。騎士みたいな人間もいれば俺と同じような格好をしているものもいる。やはりこのギルドは冒険者としてとらえている者もいれば派遣者登録みたいな形の働き方をしているものもいる。
「登録はここでいいのですか。」
「ああ、大丈夫だか、兄ちゃんはその年で冒険者登録は初めてなのか。」
「はい。」
「珍しいな。普通なら10歳ぐらいで一旦は登録するのだがな。」
「田舎の出身のもので。ところでどうして10歳ぐらいで。」
「それは魔法の部分が大きい。10歳ぐらいで魔法の能力はある程度見極められる。」
そういうことか。その時には国が行うのだろう。魔法を使えるだけでかなりの大きな戦力となる。戦力になるのはどれくらいかわからないが、身分もなく雇えば国力にもつながっていく。遺伝の影響はあるとは言ってもそこまで大きくない。魔法の能力はほとんど遺伝することはない。だからこそ、魔法の使える人間は重用される。
「しかし、魔法を使用することはそんなに簡単なことはないのでしょう。」
「それはそうだ。だがな、その計測器で数字が出ている以上能力は高い。」
…。計測器はそこまでの能力が測れるのか。
「まあ、数はかなり少ないし運試しという程度だが、やる価値はあるだろう。それに10分で終わるからな。兄ちゃんには魔法は使えないだろうけど。」
「…、そうか。」
「普通はそのくらいの時には何かしら魔法が発言する可能性がある。」
確かにそうかもしれない。
「ああ、そろそろだな。」
気が付くと前がすいていた。順番が回ってくるのか。
「ありがとうございます。」
「いや、大丈夫だ。」
「では、次の人来てください。」
俺は前に進んだ。
「後ろの方は知り合いですか。」
「ええ。私の連れです。」
「分かりました。彼女はこちらに来てください。一緒に登録をいたします。基本的には別々に行いますが、パーティの登録もしますか。」
「そのパーティの登録とは何ですか。」
「説明します。」
冒険者登録とは別にパーティ登録というものがある。下級任務では一人で行うのだが、上級任務になるとパーティでの任務が多くなる。人数は3人から5人だが、それ以上のパーティを組んでいるところもある。組織単位で行動する冒険者もいるらしい。一番大きな組織で500人ほどの人数がいるらしい。もはや傭兵団ともいえるほどの大きな組織になっている。
「パーティは基本的に一蓮托生です。パーティの中で犯罪を行うなどした場合、すべてのメンバーが罰を受けることになります。その中でもリーダーは罰の度合いが大きくなります。だからこそ、知っている人間を仲間に加えます。」
この規則では信頼を置けない仲間はパーティに入れることはできない。だから、昔から知っている人間をパーティに入れるのだろう。
「しかし、その時にもお金が絡んできますから、結構なメンバーが変わります。初めから変わっていないパーティは1割以下です。そこまで深く考えて組む人はいません。とりあえず組む人が多いですが、信頼を置けるようなあなた達で組みませんかという提案です。すぐではなくてもいいですが、下級任務でも人数が必要なものがあります。」
任務を考えるとシェイラとはパーティを組むのが良いのだろう。今回はとりあえず組むのがいいだろうが、本来ならもう少し考えないといけないはずだ。友達でいるのと一緒に仕事をするのは違う。
「シェイラ、大丈夫か。」
「うん。大丈夫。」
「では、お互いの意思疎通が測れたということでパーティの申請を上げます。」
「分かりました。」
「では、これから魔法の鑑定をします。この魔法鑑定は誰かに情報が洩れてはいけないので個別に行います。まずは名前を書いてください。」
日本語を相手はわかるのだろうか。俺は日本語を書いた。いや、ばっちりと日本語だ。
「はい、シェイラさんとカツナリさんですね。」
「では、カツナリさんはこちらに来てください。」
俺は彼女についていった。
「実はその年で受けるような人はほとんど魔法の適性はありません。」
「分かっています。」
「そうですか。良い人に会いましたね。冒険者になる人はたいてい大小ありながらも魔法を使える方が多いです。ない人は日雇いで冒険者登録をする形となる方が多いです。」
冒険者の活動は便利屋の印象が強いが階級が上がっていくにつれて魔物の討伐が多くなる。其の上、強い魔物が多い。過去には竜の討伐があったらしい。最近では聞かないとのだが。
「最近は魔物の出現率が少なくて少し不安になっていますけどね。」
「魔物が少なくなっていることはいいことではないのですか。」
「単純に減っているのであれば大丈夫よ。でも、魔物同士で戦っている場合には注意が必要。」
理由は魔物が魔物や人間を倒して食べることによって強くなっていくからである。魔物は本来、人間が倒すと魔石を残して消えるが、魔物が倒すとなぜか魔物の死体が残る。その魔物を食べて大きくなっていく。
「厄介なのは進化でね。進化をすると10倍以上も強くなってくるから注意が必要です。」
「そうですか。できれば会いたくないですね。」
「普通の人間であれば数秒で死ぬので注意してください。」
数秒の間に注意をすることはできないだろう。すぐに死ぬのだから。
ある部屋に着いた。
「ここの部屋の話はしないでください。部屋には2日間以上あなたの情報が残ってしまいます。一緒のパーティを組む女性にも言わないでください。できるだけ話さないように。」
2日間も情報が残ってしまうのは大変だな。言わないのは当たり前だが、ここに情報がある限りは安全ではないのではないか。
「そういう方は多いですが、こちらの情報は守られています。その時の手順を全く同じにしないと情報はとることができません。では時間がないので先に鑑定をしましょう。」
「分かりました。」
「では、こちらを。」
渡されたのはナイフだった。
「少しだけ皮膚を傷つけて血を出してください。」
「はい。」
少しだけ傷をつけて血を出した。
「ではそのままこの板に手を付けてください。」
俺は手を付けた。そうすると部屋に模様が浮かび上がる。
「今、鑑定をしています。部屋の模様が変わっていきますが、そのまま待っていてください。」
部屋の模様は次々と変わっていく。初めは青い海を印象付けるような模様だったが、今は紫の花が咲いている。その花は枯れていき、太陽が照り続いている。これは本当に鑑定しているのだろうか。
周りが変化する様子を見ていたが、何かを見つけたように景色の遷移が止まる。
「では終わりましたので、部屋を出てください。」
「終わったのですか。」
「はい。あなたは何もありませんでした。」
「へ。」
「魔法の才能はかけらもありませんでした。」
「まあ、そうだろうと思いましたけど。」
「知っているのは悪いことではありません。できないことをやろうとするのは時間の無駄です。」
…、夢を持った子供がここに来たら泣くだろうな。でも、これぐらいのほうがいいかもしれない。中途半端に言われるよりはよいことだろう。
「はっきりと言いすぎでは。」
「もうそういう年ではないでしょ。」
何かずれを感じるのは俺だけだろうか。
どちらにしても、俺に魔法の才能がないのであれば、別のところに向けなくてはいけないが、何に目を向けようか。
「考え込むのは別のところでやりましょう。今、計ったのは魔法の可能性ですが、もう一つの可能性があったようですね。」
彼女は紙を見ていた。そこにはへんてこな文字が刻まれている。
「謀略ですね。」
「もはや、冒険者ではないですね。」
「確かにそうですが、立案には向いているようですね。」
…就職活動をしているような気がしてくる。しかし、冒険者向きではない能力だな。今すぐ何かできる話ではない。仲間もいない中で謀略をするのは難しい。そもそも、謀略をするっなんだ。
「早く移動しましょう。シェイラさんが検査できません。」
「すみません。」
俺はその場を後にした。
部屋には鈍く光る星があった。




