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森の探索

 簡単な戦後処理は終わった。死体を焼いて、骨は簡単な墓地を作り埋葬している。捕虜はいない。本当は1人いるが、俺は捕虜ではなく寝返りを期待する人間であると思っている。そういった人間は捕虜であってもかなり丁寧に扱う。では、今は何をしているかというと、

俺たちは丹念に周りを見て回っていた。敵兵が本当にいないか確認をするためである。森が近くにある以上は森に火をつけられた場合にはもう手遅れになる。火薬や燃料もないため火をつけてもすぐに消えるとは思っているが、万が一を考えればこの周辺を探索する必要がある。今のところ誰も見つかっていない。死体は沢山あるため、一つのところに集めている。個人的には丁寧に扱ってほしかったが、無理に丁寧に扱えというつもりはなかった。彼らも人間に迫害をされている以上、そういった扱いになるのは当然とも言えた。それに死体の量が多いため、埋葬するだけでも一苦労である。

 森の偵察隊は4隊に別れて行っている。以前の奇襲部隊のように奇襲されることを考えて50人を1つの隊とした。各部族長が隊の中心にいるがシェイラとクライドについては率いていない。その怪我では休んでいなくてはいけない。本当に重症だ。2人は最後まで行くと抵抗していたが、ヴァルガとシュウコの優しい説教と教育によりついてくることを断念したそうだ。さぞ、大変だっただろう。だが、その俺も同じような状況にいるのはなぜだろうか。


「カツナリ殿、あなたも休んでいただきたいのですが。」


 俺は無理やり本陣に残り、偵察部隊の指揮を執っていた。もちろん、実際に行くことはできないので、ハビエルの部下の小鳥を使いながらではあるが。そこで少し休むつもりがかなり寝てしまったので、今回のことになってしまっている。


「いや、先程休んだから大丈夫なのですが。」

「そうでしたか。それが足の怪我であるのを理由にした失神であったとしてもですかね。すみませんが、カツナリ殿の顔は今まで以上に蒼白です。もう少し、自身をご自愛されてはいかかですか。」


 この副官のロルフが来てからというもの、こうやって愚痴をいろいろ言われる。もう少し口を休めてほしいのだが、もしかしたらそのためにヴァルガから派遣されたのか。余計なことをしないでほしい。彼は熊族の1人である。族長までではないがシュウコの護衛を一時は任されていた。しかし、現在は副官になっている。補助業務がしっかりでき、実戦経験も豊富であるため、副官には向いていたらしい。うるさいのが傷だが。

 捜索範囲は以前の戦いよりも少し先に行ったぐらいであるとのこと。これは敵兵を探索するという趣旨に反しないようにするためだ。我々は今、戦争したいわけではない。いずれはこの森が手狭になるため、外に出ていかなくてはならないことは明白である。しかし、今回の戦いで同族が死んだことや馬の肉の供給によって、食料についてはひと段落できると思っている。相手の軍にもかなりの被害があると思われるため、早々の遠征はないだろう。そう考えれば、ここの2,3年でどこまで国力を伸ばせるのかということになる。

そもそも遠征軍にハビエルが最初に攻撃したのはもっと先であったと聞いている。今回の捜索範囲よりもかなり遠くである。距離的には10キロ以上は離れているはずだ。その距離を考えれば、敵軍はかなり前から兵站を運ぶために準備をしていた可能性がある。初めから偵察に来ていたのは分からなかったが、我々が思っている以上に作戦を立てていたのだろう。それよりも気になることがある。ここの森には動物が住みついているというのを少し聞いたことがある。どのような動物かは聞いていなかったが、この国の動物たちが警戒するのであればかなり強いはずである。


「今はどこまで探索をしていますか。」

「はい、奇襲部隊の地点から4キロぐらいですが。」

「少し妙だな。」

「何がですが。」


 個人的な感想ではこの森に人間が簡単に侵入できたのがおかしい。ヴァルガやシュウコが警戒するほどの動物がいるのであれば、真っ先に弱い人間を襲うはずである。しかし、現在の探索では動物も見つかっていない。死んだ人間を食べることもしなかったらしい。草食動物が多いとしても、草食動物だけ俺が戦争前に思っていたのは人間が住んでいる可能性がある、もしくは人間が猟に来ているということだった。しかし、実際にはそのような形跡はない。では、以前、この森に入っていた動物たちが殺されているのはなぜなのか。ヴァルガが言ったように森に強い動物が住んでいることもあり得るが、ここの動物の体格はかなり良く強さも普通の動物ではない。

 本当にいるとすれば、ここから逃げた動物か。しかし、そんな動物がいるのか。森の動物たちは縄張りを…。そうか。縄張りを作らない動物か。それなら可能性がある。どのような経緯ではぐれたのかは分からないが。餌も多くないこの森でどのように生きてきたのだろうか。それも人間にもばれずにどうやって過ごしてきたのか。


「一旦、探索隊を集めてくれ。」

「はい。しかし、時間がかかると思いますが。」

「大丈夫だ。それにこれ以上は危険な可能性がある。」

「…危険ですか。」

「そうだ。これ以上深く進めば未知の動物に出会う可能性があります。もちろん、推測ではありますが。戦後で兵が少ない状況でそこまでの不確定な動物を相手にはできません。」


 副官は首を傾げた。それはそうだろう。人間は敵ではないことは分かっている。しかし、動物であれば彼らであっても負ける可能性はある。特に不意打ちを狙われては命を落とす可能性もありうる。ただ、大人数で動いているためこちらを襲ってくることはないだろうが。


「分かりました。その噂は聞いたことがあります。クライドさんからも忠告を受けておりました。すぐに撤退しましょう。」

「そうだな。」


 そう思っていたら、ヴァルガが走ってくるのが見えた。彼はこちらに向かっているが何かを気にしながらこちらに向かっているように思う。


「何か急いでいますね。」

「そうですね。何かあったのでしょうか。」

「知りませんね。しかし、あまりいいことではないかもしれませんね。」


ヴァルガはこっちを見ながら言った。


「呼んだか。」

「いや、呼んでいないけど。」


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