開戦
俺は落ち着かないヴァルガの隣に座っていた。ヴァルガの隣にはシュウコもいるが彼もヴァルガを落ち着かせることはできないらしい。そわそわしているだけなら問題ないのだが、戦場で焦りが出るといい方向にはむいていかない。
「ヴァルガ、少し落ち着けないか。シェイラが心配なのは分かるが、ここまで来ているのだから信じるしかないだろう。いざという時には応援を用意している。」
ただ、応援に行くには本隊を倒すことが前提。それがいつまでかかるかわからない。
「そうは言ってもな。以前の戦いがあるから落ち着いていれないのだ。」
「ヴァルガ王、皆が集まっています。声をおかけください。」
集まっているのは豹族、鷲族、蜘蛛族の一部、猿族、犬馬族の5種族だ。この部族は歩兵や騎兵隊としての役割があるため、戦死する可能性が非常に高い。そのため、ヴァルガ王が直接話をすることになった。他の部族に挨拶をしていないわけではないが、各々が作業に従事しているためこのように集めることはしなかっただけだ。
「ここにいる部族は歩兵として騎兵として出陣する。他の留守部隊と工作部隊などに比べて死ぬ可能性が非常に高い。わかっているとは思うが、隣にいるカツナリの作戦がどれだけの策を用いようとも死者が全くなくなることはない。俺も同じだが、ここにいる全員に死が訪れる可能性がある。」
ヴァルガは全員の顔を見ている。ここにいる全員の顔を見ているのだろう。この場であるのが最後かもしれないのだ。
「分かっているな。この作戦はすべて君たちの手にかかっている。罠もそうだが、歩兵や空撃にて敵兵を撃退しなければならない。そして、カツナリの作戦通りに動けば相手は退却しなければなくなるだろう。今回はそういった戦いだ。」
雰囲気が少し落ち込んだ気がする。仕方のないことだ。
「以前の戦いのことを思い出しているのだろう。それは俺も思っている。だが、以前とは違う。それを証明しに行くぞ。」
ヴァルガ王は爪を高々と上げた。
…、俺はそのヴァルガの姿を見てなんとなく不安になった。
ハビエルは空を飛んでいた。街道を通っている兵隊を見ていた。数は2万人ほど。彼らは順調に進んでいる。歩兵隊が前面に出て、騎兵隊が後方にいる。彼らはこの行軍を急ぐ必要はないのだろう。しかし、シェイラの報告よりも行軍の数が少ないような気がしているが。…。森の中に砂煙が見えた。
そういうことか。
「今すぐ、カツナリへ緊急援軍を要請しろ。シェイラに危機が迫っている。兵は多いほどいいが。こちらの人数も維持する必要がある。援軍は5人ぐらいしか出せないと言ってくれ。」
「わかりました。」
本当に間に合えばいいが。ハビエルはそう思いながらも空撃を継続した。
俺は黄色の小鳥がこちらに来るのを確認した。ハビエルの緊急伝令である。この段階でこのようになるとは少し意外だ。伝令を送付したのがハビエルであることも予想外である。
「小鳥の翻訳を頼む。」
「はい。シェイラに危機が迫る。山に砂埃あり。」
…。奇襲を受けているということか。今の状態で頼れる部隊はいないな。しかし、奇襲部隊が崩れると戦略の根幹が崩れる。
「俺が行こうか。」
そうだな。俺はこの男しかいないとわかっていた。




