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偵察成果

 みるみるうちに景色が変わってくる。景色もぼんやりと見えていたが、はっきりと見えるようになってきた。ここは盆地になっている。策を仕掛けるにはもってこいだが、それはあくまでも攻めたときの話。相手軍の虚を突くには良いだろうが、そこまでの余裕があるかどうか。

 人間達は旗を持っていた。円の中に星が5つ描かれているマークである。そのマークは白と黒で書いている。これが5つの国が連合しているというマークであれば楽なのだが、そう簡単なものではないかもしれない。国旗には現状を反映しているものと歴史を表しているものの2つがある。この国旗のことも調べる必要がある。


「相手は1匹だ。ばらけることはせず班でまとまれ。弓矢兵は歩兵の中に1人入れるようにしろ。そうすれば相手は下手に攻撃できない。各体長は従来通り4班を持ち、指揮をしろ。歩兵は盾を敵に常に向けておけ。」


 本当に声の通る男だな。俺はハビエルの翼から少し顔をのぞかせた。

 男は多少の無精ひげを生やしており、背丈よりも遥かに大きな槍を持っていた。槍には国旗が彫られているように見える。体の大きさは俺よりも少し大きいぐらいか。人間としてはそこまで大きくないだろう。しかし、その体つきは筋肉粒々ではなくしなやかな柔軟性を持っているようであった。顔は整っている。体に合っているような中性的な顔をしている。彼からこんな大きな太い声が出ているとは思えない。


「ん、今のは。」


 男の声が聞こえた。俺はハビエルの翼を2回叩いた。ハビエルはすぐに上昇を始めた。弓矢を2,3叩き落とし、離脱した。


「どうしたのじゃ。」

「あの男に俺の存在がばれてしまったかもしれません。」

「そうか。しかし、そのようなことは些細なことじゃ。それよりも持ち物を探るのじゃろう。」

「ええ。」


 相手軍の装備を見ていた。彼らは中世のような格好に似ている。ほとんどの兵は槍を持っており、同時に盾も持っているようだ。盾は大きなものではなく、大きな盾でも人間の上半身を隠せるぐらいのものである。素材はわからないが、鉄のように見えた。鉄であればそれなりの技術があると思うが、盾の厚さはそれなりに分厚く、見るからに重そうであった。

 胴体には木の皮のようなものを着ている。その中にくさび帷子を着ていれば、防御力がそれなりにあるだろうが。全員がそういったものを着ているようには見えなかった。来ているのはあの男ぐらいである。それにあの男は鉄の鎧も着ているようだ。


「少し見てあなたたちが何とか勝てた理由が分かりました。」

「言い方に棘があるのじゃが、分かってよかったと思うぞ。」


 この他の兵站について調べる必要がある。何か相手に秘策がある場合、俺たちの作戦がぶれることがあるだろう。殲滅であれば作戦の完璧さが求められる。何としても兵站の量は見ておかないと。そういえば、森には動物たちも入っていないということだったな。入っていないということは何も知らないということだろう。

 森には動物がいるということだったが本当にいたのは動物だったのだろうか。もしそれが人間の場合、動物たちは奇襲を受けることになるだろう。


「あそこの森の中に入ったことはありますか。」

「いや、ないの。入ったものは全員帰ってこなかったからの。」

「では、行ってみましょうか。」

「…、さすがにまずいような気がするが。もちろん、もう一度周りを見てからです。周りを見てこれ以上何も把握することができなければ、森の中に入る必要があります。」

「そこまでの必要があるのか。」

「あります。この森は動物の森まで続いています。今はここに兵站を持っていなくても、もしこの森の近くではなく我々の近くに兵站があると思えば、奇襲を受ける可能性があります。今の状態で奇襲を受けてしまえば、決定的な隙ができます。俺であれば大量の油で森を焼くことを考えますから。」

「…、それは怖いの。混乱して済めばいいが。」

「すまないでしょう。彼らはすぐに引き上げればいいだけです。今回の戦いはそういう意味では難しい戦いです。」


 ハビエルは薄っすらと体温が上がったような気がした。彼もこの考えを聞くと怖いのか。彼もまた、人間を恐れているのかもしれない。


「しかし、それをどう防ぐのかの。今の話では防ぐのは本当に難しいと思うのじゃが。」

「そのために策を講じるのです。我々の負けは分かっています。では、その負けを事前に防ぎ、相手を殲滅させる。そのように誘導するのです。」

「誘導か。そんなことが可能なのか。」

「難しいことは分かっています。」


 でも、やらなければならないんだ。負けは許されない。


「もちろん、俺だけでは森に入りません。ハビエルは不向きでしょう。」

「さすがにの。それでどうする。」

「私を近くに森の中に降ろしてください。そして、シェイラの部隊とクライドの部隊を5名ずつ森に入るように言ってください。」

「…。それは我々の森の近くか。」

「そうです。さすがにこんなところで一人になってしまっては死ぬしかありません。そのような愚行はしませんよ。さて、これからもう一度見てみますか。」

「そうだの。でも、これ以上探しても何も出ない気がするの。」

「フラグを立てては駄目だろう。」

「何か言ったかの。」

「いえ。」


 俺たちはその後、周りの森を上から見まわし、軍にも突撃をしたが、何も見つけることはできなかった。俺はできるだけ隠れていたが、どうもあの男には何かをつかまれたように思った。



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