最初の会議
皇宮にはほどなくして会場に到着した。俺が思っている以上緊迫感が増しているように感じた。お出迎えもちろんなかった。それが何か不測の事態を予測させる。普通であれば、ヴァルガ王がお出迎えしてくれたように思っているけど。
俺がうぬぼれているのだろうか。
「少し、緊張感があるね。」
オーブリーが俺に話かける。彼の触角はある方向を向いて止まっている。おそらくは会議室のある方向だろう。便利なものだ。
「俺にとっては少しどころではないのだけど。」
「それはそうだろうね。人間と動物の殺気は違うものがあるからね。人間は見える物に対し殺気を飛ばす。動物は見えないものにも殺気を飛ばす。ここが人間と違うところだろうね。」
人間も熟達者の域に達すれば感じることができる。だが、それはあくまでも殺気を感じることができるのであって、殺気の出所までは探ることができるのは稀である。達人でもそこまで見抜ける人はいない。
「どちらにせよ、この3人がいる限り、君には怪我をさせることはないさ。」
「頼もしいね。今後もお願いしたいけどね。」
「それはあなた次第。会議で何かを得ることができればあなたの一定の立場は保証される。」
立場を得ることをどのように実現するか、それが課題なんだけどな。それこそ、ゲームのように成功したり、選択肢があったりするのだろうが、それはできない。一回が本番。当たり前のことなのだけど、現実感がないとどうしてもそのように思ってしまう。
「会議では発言することが求められます。会議では議題というものが決まっているかと思いますが、この国の会議では議題は決まっていません。持ち込むものと決まっています。」
「それが本当なら会議はいつも行われていることになりますけど。」
「それはありません。1か月に1回ぐらいしか行われませんよ。」
その会議では発言することさえ難しいのか。一体、どんな会議だ。3人が言っているように簡単に発言できないのであれば、新しい立場を守ることどころか、着任をすることさえ難しいぞ。ヴァルガは何をもって大丈夫だと言っていたのだろうか。
ヴァルガには何か得策でもあるのか。いかにオーブリーの協力を得たとはしても、11族長は俺を反対しているかもしれない。少なくともあのカメレオンは反対に回るだろう。そう考えれば。
「カツナリ様、少し難しく考えすぎではありませんか。」
シュウコは廊下から太陽を見ていた。彼は何を見ているのだろうか。
「我々はいつもすぐに決断をしていました。今とは違い、本能や勘と呼ばれるもの。それは全く理性も理屈もなく情報もない状態でのものでした。確かにたくさんの同胞が亡くなりました。それは仕方のないことです。しかし、私は生きています。もちろん、カツナリ様、あなたも生きています。人もその大きさになるまでに死ぬ人が皆無なのですか。」
「いえ、残念ながら亡くなる方もいます。少数ではありましたが。」
「そうですか。あなたのいた世界が平和だったことは非常によくわかります。今もあなたはここにいないような気がしているようですね。ただ、あなたはここに存在し、これから危険な会議に出ます。そこには一部仲間がいますが、基本的に仲間を期待することができません。あなたはそこに向かっていくのです。あなたは逃げることはできない。」
「そうですね。」
「言っては何ですが、あなたは怖がっていない。でしたら、楽しんではいかがですか。」
「楽しむ。」
「あなたが何に怯えているのか、不安に思っているのかわかりません。でも、怖がっていないのは現状ではよいことです。」
何が言いたいのだろうか。
「もう少し人生を楽しんでください。この会議も楽しんでください。そして、生きていることを実感し、軍師として成長してください。」
…。少し勘違いをしていたようだ。そうだ。この世界に来たとしても、俺の人生は続いているのだ。俺が思っている以上に複雑に。昔、歴史を勉強すればよかったとか、治政について学べばよかったとかではなく、今まさに人生が動いているのだ。自分の可能性を試すことができるのだ。以前の世界よりも環境はいいではないのか。
「良い表情になりましたね。軍師は辛い地位でしょうが。あなたならできます。今なら、ヴァルガ王の言っている意味が分かりました。現状ではあなたが適任でしょう。」
…本当にそうなのかな。いまいち自信がないのだが。
「さて、入りますか。」
「まだ、すべての部族が入っているわけではないようですが。」
シュウコは重厚なドアを開いた。
「カツナリ殿、来られたか。私の隣に来てください。」
ヴァルガに声をかけられたが、敬語であるし、俺をお客として扱っているようだ。もしかして、これがヴァルガの言っていた安心しろということなのか。シュウコが俺の肩に手を置いた。彼は首を少し横に振った。そして、席の方を向く。
座っているのはヴァルガとオーブリーを含めて6人、6匹なのか。どちらにせよ、その中にはカメレオンの姿も見られる。
「そなたが迷い人の人間か。よく来られたな。迷い人よ。」
「よく言うよ。我々でも守っていたヴァルガ王の命令を無視したくせに。」
「オーブリー、少しわきまえろ。」
ヴァルガ王がオーブリーに対して注意をする。オーブリーが俺に対して触角を俺に向けている。
「カテーナ、君はカツナリ殿に怪我をさせたという情報が入っている。その情報はすべての部族へ通告をしている。彼に謝ることもなく、初めて会ったようにふるまうのはおかしいと思うが。」
「しかし、ヴァルガ王、人間は我々にひどいことをしたはずだ。許されるはずがない。」
「ふむ、そうか。では、我々は人間に対して殺しもしないし、虐げもしなかったということだな。カテーナ。」
なるほど。それは確かに異なっているな。少なくとも殺しはしているだろう。カテーナが人間嫌いなのはわかっていたが、ヴァルガに直訴するまでに嫌いだとは思ってもみなかった。確かに俺を襲うのはやりすぎではないかと思っていたが。
「それは言葉が悪いでしょう。ヴァルガ王だって親族を沢山殺されたはず。それなのに人間を恨むことはないということですか。」
「確かに恨んではいる。しかし、カテーナみたいに関係のない人間を殺すほどに恨んでいるわけではない。それぐらいの分別はあるつもりだ。」
しかし、恨んではいるということか。もしかしたら、俺も何か影響があるかもしれないから気を付けないといけないな。
「さて、カテーナ。席についていろ。そろそろ、全員が揃うころだ。」
どれがどの種族が全く分からない。わかるのはカテーナ、オーブリー、ヴァルガのみ。シェイラとシュウコは族長ではないからな。
「さて、皆が揃ったな。議題は決まっていなかったが、一部を除き、敵国が攻めてくる気配が濃厚になったため皆を徴集した。協力感謝する。そして、もう一つの議題に興味を持ってもらったかと思うが、ここにいる釘嶋勝成は迷い人としてここに迷い込んだ。純粋な人間だ。動物から人間になったわけではない。そして、何かの動物だったわけでもない。しかし、話をしてみてあることに気が付いた。彼は我々が持っていない知識と経験を豊富に持っている。今回の戦争より仮ではあるが、軍師という要職についてもらうこととなった。」
皆があきれた顔をしているように見えるが本当に大丈夫なのか。
「軍師というのは軍において戦略や戦術を練り、実行を行う役職だ。もちろん、細部まで彼が携わるわけではないが、彼は他部族の連携も見ながら判断し、我々を勝利に導くことになる。」
彼が言い終わった瞬間に羽が上がった。おそらくは鳥族なので、鷲族になるのか。
「彼が言うことには絶対に従わなければならないのですか。さすがに全権を彼に預けると言っても私たちが何とか納得しても部下はさすがに徹底できません。多くの個体数がいる上に部族も多く分かれている。」
ヴァルガ王は手を挙げた。
「もちろん、それは懸念事項として挙がっている。しかし、これは各部族長が頑張ってもらうしかない。彼がどのように戦力を振り分けるか不明だが、ある程度、彼の指示に従わないのであれば、彼を軍師の役職に就ける意味がまるでなくなる。」
鷲が言っていることは正論であるのだが、こちらの指示に従わないのであれば俺が指揮を執る意味は本当にない。ヴァルガかシュウコが指揮を執ったほうがましだ。
「これに関しては反論を認めない。彼の指示に従わずに負けたとしても彼の責任ではなくなる。おそらくは皆が混乱ですることは考えてはいるが、最小限にとどめること、彼に言われたとおりにやることが必要だ。」
誰しもがヴァルガの圧力によって閉口せざるをえない。本当にこのやり方が正しいのであろうか。もう少し、何か彼らが少しでも納得する方法はないのか。しかし、彼らを説得するにも人間の俺では難しいように思う。
「少し聞きたいのだが、そこの人間が指揮を執る理由を教えていただきたい。確かに指示を出すことは必要なのはわかっているが、無理にそこの人間がせずとも別の動物に伝達し、指示をだすことも可能なはず。わざわざ、彼が前線に行く必要はないと思われるが。」
猿の動物が俺に向けてしゃべる。無理に俺が指示を出す必要はないのだが、今回は前線に出ないといけない。彼らがどのように戦っているのはもちろんのこと、それ以上に人間がどのように戦っているのもみないといけない。人間の装備も確認したいところだ。
しかし、いまだに人間が攻めてくる実感がわきにくいのはこの会議の雰囲気だろうか。
彼らの表情を見ると攻めてくるのは本当なのだろうが。
「その上、現在、組織上別々になっている種族を集合させる、もしくはまとめるというのは現実的ではない。さすがに勢いだけで勝つことができる相手であればいいが、そうもいかないだろう。」
組織の話をされるとは思っていなかったが、以前より心配をしていた種族もいるのだろう。人間と争っている現状で種族間のいざこざは足を引っ張るものでしかない。
「そうだ。だが、種族を纏めるのは想像以上に大変だと思うが。」
「兄上様。」
「シェイラよ。いかに密命といえども私には教えてもよかったのではないか。叔父上も知っておったぞ。」
俺が見ているのは豹であった。体格は4メートルあるだろうか。シェイラは俺と同じ180センチぐらいだから2倍近くあるのか。
「人間よ。自己紹介がまだだったな。俺の名はクライドという。関係をわかってくれたとは思う。我々が意識統一したとしても簡単には統制ができないだろうな。俺たちでさえすべての族を抑えることは難しい。それが君にできるとでも。それも動物でもない人間が。」
俺は答えてもいいのだろうか。彼の問いには答えることができる。
「カツナリ殿、それはできるのか。我でも一族を管理してはいるが、弟ほどうまくはない。」
「それはうまくやっていないからではないと思います。よく見て判断をしたいのですが、おそらくここには台帳がないです。それを改善することがまず、一点目です。すべてを覚えようとしてもなかなか覚えるものではありません。特に人間の眼からして虫などはほとんど一緒に見えます。もちろん、動物も例外ではありません。」
問題はもちろんあるが、それは仕方ない。徐々にやっていくしかないのだ。
「カツナリ殿、それは確かに間違ってはいないですが、時間がかかりませんか。」
「時間はかかります。ですが、私や私が命令をしたものが担当するわけではありません。この任務は族長にやっていただくようになります。簡単なことですが、私がやっている時間はないですし、何よりも族のことをよくわかっていません。族長のことも何人か知りません。そんな人が訪問しながら台帳を作成していては何年もかかります。台帳の基本型ができるまでは族長管理にし、報告のみを私かシュウコにしてください。そうすれば来年には基本型が作成できます。」
オーブリーが触角を動かしながら、俺の方に向いた。
「カツナリ殿、それはいいとして、今回の戦いの作戦はどのようにするのです。」
「オーブリー、俺はこいつを軍師とやらに認めたわけではないぞ。そもそも、人間なんぞにこの重要な役割を任せること自体おかしい。」
「それは我に対する反逆ととらえてもいいのだろうかな。ハビエル。いかに君が空を飛べるとはいえ、飛ぶ前に仕留めることができる俺であれば、よい勝負になるかと思うが。」
ヴァルガは椅子を軋ませながら、言葉を発する。椅子は悲鳴を上げるように鈍い音が響く。しかし、あの椅子も金属などが使用されていて丈夫そうだがな。
「ヴァルガ王、落ち着いてください。この場は会議の場です。戦いの場ではありません。」
「わかっておる、シュウコ。ここでは戦わない。別のところで戦うだけだ。」
さすがにこれは見ては入れないな。
「ヴァルガ王、さすがにそれはよくないかと。」
「うん、どうした、カツナリ殿。」
「仲間内で戦っても敵が喜ぶだけです。そんなに力が余っているのであれば、敵兵を倒すほうに向かったほうがいいかと。」
ハビエルがこちらを見る。
「ほう。確かにそれは君の言うとおりだな。では、何か策があるということかね。」
「いや、まずは確認したいことがあります。これを決めなくては私も方向性が見えなくなります。」
皆が姿勢を正した。
「それは何だ、カツナリ殿。」
「敵兵を殲滅するのか、撃退するのか。どちらにするのかということです。」
この森での撃退と、殲滅であれば撃退が簡単である。森の中で誘うことができれば、こちらの優勢が変わらず、各個撃破が可能である。人数を減らしていけばおのずと撃退という流れになるだろう。それに追撃も比較的無理なく継続できる。本当にうまくいけばだが。
「どちらも勝つということでは一緒だよな。」
クライドはシュウコに確認をしている。さすがにこの場で尋ねるのはやめてほしいところだ。馬鹿が悪いことでないのだが、ここで披露することでもない。しかし、誰も注意をしてないところを見るといつものことなのだろう。
「はあ、カツナリ殿。申し訳ないが、説明を頼めるか。あと、2つの違いで何があるのかも教えてくれ。」
「わかりました。では、説明しましょう。まず、撃退と殲滅についてです。撃退は戦に勝ち敵を退けること。殲滅は敵を滅ぼすこと、所謂皆殺しです。」
「それは分かった。しかし、何が異なるのだ。勝つことは同じなのに。」
「クライド殿、撃退ということは敵を逃がすことになりませんか。」
「確かにその通りだが。」
「逃がすということは敵の本国に我々の存命を知られるとともにこの国のことも知られることとなります。反対に殲滅であれば相手に知られることはなくなります。私は今回、撃退を考えています。ともに利点と欠点がありますが、それは今から説明しましょう。欠点は相手に情報を与えてしまうことになります。これは仕方のないことです。相手の兵士が生きており、話すことができれば情報は洩れます。」
さすがにそこまで恐怖で支配させることはできないだろう。相手は市民ではなく兵士である。全員が下っ端であれば違うだろうが、編成上、そういった事態には陥らない。
「それを聞くと殲滅のほうがいいかと思うのだが。」
「理由はもちろんあります。殲滅であれば、情報が出ないということはあります。また、敵兵に知られることもないので援軍や再度の編成も遅らせることができます。」
ヴァルガはこちらを見ていた。おそらくは今の話を聞いて、殲滅のほうが利点があると思ったのだろう。しかし、それでは困るのだ。
「殲滅の方に利点があるように思いますが、実は違います。それはこの国の状況にあります。」
「この国の状況。」
シュウコがこちらを見て話かけてきた。
「そうです。この国は自給自足ができそうですか。どうも話を聞くにはそのように思えなかった。特に肉食動物は我慢をしている状況でしょう。ここには余分な動物などいないのですら。」
そうなのだ。この国はいずれ滅ぶ。内紛によって。内紛は近いうちに起こる。早くて2年以内か。それぐらいの間に国を何とかしなくてはいけない。ともかく自給率を何とかしないと犯罪国家になりかねない。
「確かにその通りではありますが、そんなに急を要することですか。私も宰相をやっておりますが、そこまでの危機感はありません。」
「シュウコはこのように言っているが、カツナリ殿はそこまで気にする必要はないのではないか。」
「簡単に言いますが、自給率の低下は非常に良くない。特に人間の世界ではなく、動物の世界で共食いが発生するとこの国は崩壊するような気がしています。それまでに食料を安定、もしくは入手先の確保となります。」
皆が黙ったように静かになる。考えているのか。それとも違うことを考えているのか。
「それにしても、撃退の意味が分からない。カツナリ殿、貴君が何をもって食料を確保するのか。」
「簡単な話です。領土を増やすしかないのです。」
ヴァルガは口を開けたままになっている。さすがに考えたこともなかったのか。他の動物たちも驚いた顔をしている。ここの動物たちは守ることだけを考えていたのだろう。
「カツナリ殿、少し飛躍しすぎてわかりません。どうして、食料自給率と領土が関係するのですか。領土は周りにあり、畑などはできます。牧草地帯も確保できるでしょう。それなのになぜ必要なのですか。」
「それは養殖という考え方にあります。養殖はうまくいかないことも考えて土地を広く囲む傾向にあります。その上、天候の不順によって草などが育たないこともあります。それを考えれば、今の土地では何かあった時に飢餓に襲われます。」
おそらくではあるが、天候の不順が今までなかったのだろう。これからもないとは思わない。むしろ、あると考えるべきである。日本みたいに安定的な供給が確立されていれば、ここまでの心配をする必要はないが、この国には国交がないため、供給はないはず。
「確かにそれを考えるとあなたの考えは少しわかります。ただ、この話と撃退の話がつながることになるのですか。やはり、殲滅にした方がいいのではないかと思いますが。」
「カツナリ殿には悪いが、シュウコの言うとおりだ。もう少し利点がなければ撃退で話を進めるのは難しい。」
果たしてわかってもらえるか。人間の種族は彼らが思っている以上にしつこいのだ。
「…人間はあなたたちが思っている以上にしつこく、執念深い面を持っています。その上、研究にも力を入れている。あなたたちは同族の動物を実験に使うことはできますか。」
全員が顔を見合わせる。
「それをしてしまうのが人間です。私がいた世界では一時期、人体実験を行っている国がありました。その国は滅びましたが、反対に人体実験をされていた種族は転々に移り住み、数をかなり減らしました。詳しい内容は覚えていませんが、他にも私の国でもあったことです。動物たちはどうなのかわかりませんが、今言ったことと共食いは別の話でしょう。人間のほうが罪深く、忘れやすく、そして賢い。」
「ふむ、それが何だというのだ。その議論と撃退の話では全く異なる。」
カテーナはこちらを見ながら意見する。彼はそう思うだろう。その上、人間を思っている以上に恐れてもいる。その恐れが人間の軍を見たときに影響しなければいいが。
「関係があります。仮に殲滅できたとしましょう。人間は少し間待ちます。もしくは期限をもって作戦を終了する。彼らは何かと感じ、再度兵を派兵します。これは斥候と言われるものでシェイラが担当している業務になります。相手の国がどれほどの軍事力を持ち、影響力を持つのかわかりませんが、敗けたことが分かれば彼らは2つほど考えるはずです。」
腕を組みながらヴァルガは俺を値踏みしてくる。
「1つ目は資源があるかどうか。2つ目は何かを行うために十分な広さがあるかどうかです。この2つを調べるでしょう。そして、本当の任務はどのようにして敗れたか、また相手の戦力を確認すること、これを主の目的とするはずです。」
「それは当然だな。カツナリ殿ならどうする。」
オーブリーのほうを見た。蜘蛛は待ちが長いため、こういった分析を行うのかもしれないな。さすがに獲物が取れないところで狩りをするわけにもいかないし。
「少し変わったやり方ですが、200名前後の兵を組織し、1つ目と2つ目は全員で調べます。そして、主の目的を調べる前に半分を帰します。帰した兵はこれまで辿った道のりをすべて記述しながら帰ります。そして、休憩場所や補給地点を確認します。残った100兵で調査を行います。ただ、調査が相手の国に見つかった段階で終了とします。これは冷静に事を運んだ場合です。」
「他にも何かあるのか。」
「はい。相手の主の近親者、もしくは親しい間柄の者が亡くなっていた場合、彼らはすぐにも攻めてきます。それこそ、全軍で。」
「それは本当か。」
「最悪の場合ですが。しかし、兵が本国へ帰れば、少なくとも別の者が王を止める可能性があります。今の状態で殲滅はできたとしても、彼らの主力部隊を討つほどの力は我々にはあるようには思えません。」
カテーナは机を舌で叩いた。円をかたどり舌が机を貫通する。破片がこちらにも飛んでくる。
「貴様、我々を愚弄するのか。我が武勇は。」
「そんなものが今、何になりますか。あなたたちはそれで負けたから、ここに逃げ帰っているのです。身の程を知らないのはあなたでしょう。個人の強さで戦の勝敗は決まることがほとんどなくなっているのです。」
「カツナリ殿、言い方を考えてくれ。ここにいる全員がカテーナと同じ状況になっているのだ。彼ほど過激な言い方をする人は少なくなったが、今でもそういった方はいる。まあ、彼の族に多いのだが。そちらにせよ、言いすぎだ。気を付けてくれ。」
クライドはそう言った。彼はこちらを見て、何かを訴えるような目をしている。何を訴えているのかわからない。
「わかりました。撃退で私は提案をしたい。」
「ふむ、決を採るまでもないと思うが、殲滅をしたいものは手を挙げろ。」
動物たちは全員が手を挙げている。
「カツナリ殿、頭ではわかっていてもなかなか変えることはできないものだ。この会議は合議制であるので、カツナリ殿の案は却下となる。では、もう一つ、仮ではあるが今回の戦争に限りカツナリ殿を軍師として認める物は手を挙げろ。」
これには9人が手を挙げている。
「これも決まったな。手を挙げていない物も軍師として認めろ。これはとりあえず、今回の戦争のみだ。この戦争の後にまた決議をとる。では、解散しよう。」
軍議はこれで決まったが、今後の展開をどうするのか考えなくてはいけない。殲滅をするのはかなり難易度が高いが、できないことはない。しかし、本当にどうしようか。




