軍師として
「あと、20分くらいしたら皇宮に着きます。」
シェイラが後ろから話をする。もうすぐ着くのか。それよりも彼らは緊張感を増している。
「人間が嫌いなのは雰囲気でわかる。しかし、君たちでは作戦を立てることはできないだろう。」
「それはどうしてだい。」
オーブリーは触角を動かしながらも話をする。彼の触角の動きは徐々に早くなっている。
「この後に及んで話をする時点でだよ。」
「どういうことです。」
「単純な話です。ここは森であって、人間は一度も踏み入れていないです。また、森の外側も同じ。」
「ええ、そうですが。それが何か。」
「そこには罠を配置していますか。」
3人とも首をかしげていた。
「罠とは何です。」
「罠は重要だ。今回の戦いでは重要な役割を果たすだろう。個人の武勇だけではなく、別のところでも勝ち戦へと雰囲気を変えていく。」
「そうですか。では、早めに動いた方が。」
「だからこそ、各部族の情報が必要になってくる。自分たちの罠に引っかかるほど馬鹿なことはないですから。」
動物たちは罠を張る側でなく、張られる側が多い。気が付いた時には手遅れになっている。罠にかかってしまえば外すことはできない。最近の罠は無理に外そうとすればますます深みにはまっていく。そんな感じはギャンブルに似ている。したことはないし、漫画や小説で見ただけど。
「わかりました。部族の特徴に一番詳しいのはシェイラです。シェイラ、話を。」
「ややこしいことはない。覚えることが多いだけ。あなたなら覚えられる。」
シェイラが説明をしていく。部族は主に12族長によって占められている。その下に36の部族がいるという構図らしい。ただ、この部族は単純に強さで決められているわけではなく、各分野によって分けられたとのこと。それは今までの動物での暮らしが関係している。
「強さで分けてしまうと生活形態の違う、馬とライオンが同じ部族にいることになります。これでは部族としては成り立ちません。環境があまりにも違いますからね。例えばライオンが頂点として下に狼族と犬族がいる形ですね。ちなみに猫族は別になります。12族には入っておらず、36族の中にいます。ここら辺が少しややこしいですかね。」
「それで指示系統には問題ないのですか。」
「問題ありません。12族に分かれているのは個人の強さでなく、生活形態によって分かれております。強さで分けると各部族が乱立し、混乱いたします。例えばこの前のカメレオン族がよい例でしょう。彼らは非常に武力に優れる部族ですが、12族に入っておりません。あくまでも12族長がいるだけであり、12族というのは時の部族長によって変わると思ってください。ただ、今までで変わったことは一度もありませんが。」
カメレオン族は蛇族の直属の部下にあたるらしい。個体によっては蛇族を凌駕する武力を持つ物もいるが、位置づけは36族の中に入る。猫族は豹族の直属の部下となり、猫族の下には鼠族がいる。同じ36族の中でも上位と下位が存在しているとのことだ。少し口調が気になるけど、教師役に徹しているのだろうか。
「また、表で説明をしますが、簡単に説明します。」
話をまとえるとまず、12族には牙族、蛇族、豹族、鷲族、蜘蛛族、蜂族、猿族、熊族、犬馬族、幼虫族、成虫族、鱗族がいる。この中には単独で族を名乗っているものと判別が不可能なため、大まかに分けている部族、正確に分かれている部族の3種類がある。
単独で部族を名乗っているのは蜘蛛族と蜂族である。蜘蛛族はたくさんの個体が生活しており、個体によって生活形態が異なり、個体差も大きさから強さ、食べ物まで千差万別であるため、単独で部族を形成している。蜂族については大きさが異なることと、常に集団で生活することが多いため、1つの部族としている。
判別ができないのが、昆虫の幼虫族と成虫族である。この2つの部族は飛行できるものと地を這う個体に分かれているらしい。言葉が発することができないのもこの2つの部族の特徴であるため、この2つは個体別に判別するしかない。ちなみに先程まで治療してくれた芋虫は幼虫族に入る。
「様々な種族がいるのですべての種族を把握している物はおりません。カツナリはどうしてすべて種族を覚えておく必要があるのです。戦争に必要のない種族もいますよ。」
「断言できますが、戦争の前線で役に立たなくても後方で役に立つ物は多数います。芋虫がその1つの種族でしょう。戦争では役に立たないかもしれないが、後方支援にて負傷者の手当などはできるはずです。適材適所に動物を配置していれば有利でしょう。人間には特殊能力を持った人間は限られています。その点、動物では補えることが多いようです。」
後方支援は嫌われることが多い。なぜかというと役割を全うして当然だという印象があるからだ。特に人間の世界では昇給や上役への昇進などに直結することが多いため、それぞれの思惑が絡まりあう。その点、動物はそのようなことにはならないような気がする。あくまでも動物たちがこのままでいればの話だ。人間のように権力争いに没頭してしまってはもう動物とは言えないだろう。
「表以外はすべてあなたに教えた。本当は細かなところもある。でも、それはカツナリが調べるべきところだと私は思っている。軍師という役割が本当にどこまでの役割を担うのか私は知らない。知らないけど、あなたは知っている人を殺し、知らない人を殺すように指示をする。だから、あなた自身が知っておくべき、そしてあっておくべき物たちのはず。」
そうだ。シェイラが言っていることが正しい。俺は見知らぬ動物たちに命令をして、人間を殺すように指示し、反対に動物たちを死地に向かわせる。彼らの運命を決めているのは俺ということになる。
俺の後ろに何かが見える。それは何かわからないけど、きっと軍師や政治家、将軍などが見ている世界なのだろう。俺には光がないから、闇しか見えない。光を見失わないように。そして、大事な部分を闇に飲み込まれないように。




