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拝啓、大予言者様。

作者: purumi

 

 拝啓


 初めまして高名なる予言者様。


 今は亡き貴方に進言したく想い、今日の私の体験を手紙にしたためて贈りたいと思います。



  -----------------回想シーン-----------------------------



 「あ痛っ!」


 頭に何かが当たった。僕は思わず声を上げる。


 「すすす、すみません。お怪我はなかったでちゅか」


 キョロキョロとあたりを見回したのち、やっと足下に声の主を見つけて僕は、唖然とする。

体長十五センチくらいの、金糸のマントを羽織り、頭に王冠を載せた愛くるしいコビト。

どうやらこれが僕の頭に激突した物体らしい、上空から落ちてきて。僕の神経が正常なのなら。


 「あの・・・お怪我、ありまちぇんか?」


 その小さな瞳をウルウルさせながらコビトは、もう一度同じ質問を繰り返す、僕に。

  

 「あ、いや、その・・・あは、別に怪我ってほどのことでもないし。そりゃちょっとは痛かったけど、あははは。大丈夫オッケーって感じかな」


 ハタから見てるときっと、僕の方がうろたえてて言動が不審だっただろう、こっちが被害者なのに。

でも思ったよりパニックになってないというか、冷静に対処しているというか。何にって? そりゃ、この非常識な現実に対して。に、決まってるじゃないか。コビトだよ、コビト。それが空から降ってきたんだよ?


 結構人間って環境適応能力あるんだなあ、だからこんなにも地球上でのさばってんのか、なるほど。・・・など、落ち着いていると見せかけても、これってやっぱ、現実逃避?受け入れがたい現状を目の当たりにして。 

 空から降ってきたコビト?そんな現象が自身に降りかかる確率ってどれくらい低いものなんだよ。霊能力者でも予測不可能なんじゃないか? あっはっはぁぁー、もう好きにして。


 「あの。大丈夫でちゅか?」


 コビトが三度目に話しかけてきた時には、僕はすでにマジで冷静だった。意外。


 「ん、大丈夫だよ。ちょっとビックリしたけどさ」


 本当は「かなり」ビックリしたハズなのに「ちょっと」に置き換わってる。なんに対して見栄張ってるんだろ僕。


 「ああ、良かったでちゅう」


 そう言って僕の無事を心底安堵する。その表情を見ただけで、その人柄の良さがしのばれる。そんなコビトさんだった。でも、アンタいったいナニモノ?人柄って言ったって、本当にヒトなのん?僕はその疑問を正直に投げかける。


 「えっと、君のそのサイズといい、登場してきたシチュエーションといい、一般常識の範疇を軽く逸脱してると思うんだけど。よければ君が何者なのか説明してくれるかな?」


 「ええ、それくらいお安いご用でちゅ。驚かせてしまったお詫びにその他のサービスもいたちまちょう」


 いたちまちょう・・・って、少し舌足らず?そーいや、さっきからそんな言葉遣いだっけ。ま、サイズが小さいから舌が足りないのも仕方あるまい。などとミョーな納得したりして。


 「それでは、改めてはじめまちて。自己紹介もまだでちたね、失礼いたちまちた。ワタチは『キョー・フゥノダ・イオー』と申しまちゅ。ココから三つほど離れた太陽系に属しているノゥスプという星からきまちた」


 「・・・・え?恐怖の大王?」


 「あ、また『恐怖の大王』でちゅかあ。ワタチの名前を発音すると、地球の人にはそう聞こえるみたいでちゅね。前に来たときもノストラダムチュしゃんがそう言ってまちたねえ」


 「恐怖の大王・・・に、ノストラダムス(チュ?)って、あの予言書の?」


 「ノストラダムチュしゃんをご存知なんでちゅか? お知り合いでちゅの?」


 「いや、会ったことはないけどさ。だって、何百年も前の人だぜ・・・って、えっ!ノストラダムスと会ったって?」


 僕は、ノストラダムスが既に故人であること、その予言書なるものの中に「1999の年、恐怖の大王が降ってくる」という説があることをダイオー(フルネームだと長いので略)に教えた。


 「そうでちゅか。彼は亡くなったんでちゅか、なかなか面白いヒトだったのに残念でち。でもそれは、予言書ではなくて日記ではありまちぇんか? だって前に来たときにワタチ、この星の1999年に有給取ってまた遊びにきまちゅ。って言って彼に言ったんでちゅの。彼、わしは忘れっぽいから何かに記しておくとしよう。ってなにかノートみたいな紙に書いてたでちゅもの」


 「そうでちたかぁ。そして、そのときには『もうあんたとは逢えまいが』って。そう言った意味が今わかったでち。どうやら地球人はかなり短命のようでちゅね。あれはついこのあいだのコトなのに。ワタチの有給休暇一回分も寿命がもたないなんて」


 ちっこくてぷよぷよしてて、民族衣装みたいな服が似合ってて、目なんてウルウルでスゲー可愛いのに、ダイオー、いったい歳はいくつなんだ? 僕はそりゃーもう大声で突っ込んださ、心の中で。だって、正面切って言うの、怖かったんだもん、なんとなく。


 宇宙人?人類より遙かに長寿?でもって有給休暇?いったいなんの目的で地球に?


 ウソみたいな話だが、僕が幻覚を見ているんでも無い限り(夢なら覚めれば終わりなのでどーでもいいのだけれど)ダイオーは目の前に確かにいるんだし、十五センチのコビトなんて宇宙人以外にあり得ない気がするし、ましてや彼が空から降ってきたのは事実だ。僕の頭のたんこぶが、その生き証人。

 でも、ダイオーの見た目はとても可愛いけど、その背景をよく考えてみるとなんか不気味な想像が膨らむぞ。そう考えるとちょっと怖くなってきた。ひょっとしなくても地球人より科学水準が上? 遙かに。するってえと侵略者? お約束の。


 「ダイオー・・・さんって、いったい何しに地球に来られたのですか?」


 「なんだか言葉遣いが変ったような気がするでちゅ・・・ええっと、ええっと・・・お名前、なんでちたっけ?」


 「こここ、これは大変失礼をイタしました、ま、ま、まだ名乗ってませんでしたね。僕、いえ、私の名前はゴンザレス斉藤と申しますです」


 「いやだなあゴンザレチュしゃん。有給使って来るんだから、行楽に決まってる

でちゅよ」


 「行楽・・・ですかあ?」


 想像してたのとは違うのほほんとした答えに、安堵と落胆?が、ない交ぜになった気持ちになる僕。あまつさえ語尾がふぬけたように高くなったりして。

 

 「ひょっとして地球人の生体を調べるためにサンプル取りに来たとか、知らないうちに人類に取って代わる準備をしに来たとか思ってるでちゅか?」


 ダイオーのそれは、僕の心を見透かしたかのような答え。


 「あ・・・」


 「ヤでちゅねえ、ゴンザレチュしゃん。あなたがた地球人には大変失礼でちゅけど、こんな未開の地の住人と入れ替わったって、ワタチの星にとってはなんのメリットも無いんでちゅってば。Jランクあたりの惑星の住人にありがちな想像でちゅねえまったく」


 「え・・・」


 「だってそうでちょ? この広大な宇宙で『ほんのお隣りさん』の月にもなかなか行けないような未開の生物を、監視する意味もないじゃないでちゅか。そんな星の生物をサンプルにしたって、何も得る物がないでちゅよ、ワタチたちノゥスプ星人には」


 悔しいけれど、何も言い返せなかった。と、同時に地球人より科学水準の高い(であろう)星の住人が地球に来たワケが、地球侵略などの理由では無いと知り、安堵したのもまた事実。そーですか観光ですかそうですよね。


 そして僕らはそばにあった喫茶店に入り、しばらくはダイオーとのほほんとした話に花を咲かせていた。


 そっか、ノストラダムスの大予言は当たっていた・・・というか、少なくとも彼はウソは言っていなかったのだな。確かに大王(ダイオー)は降ってきたものなあ。


 僕も今日のことは日記に書いておこう。ノストラダムスがそうであったように、今度は『ゴンザレスの史実』とかいうタイトルで、今日の出来事が後の世に語られたりする日が来るのだろうか。まあ、次にダイオーが遊びに来る時には、もう僕もこの世には居ないのだろうけど。


 ああ。事実は予言より奇なり・・・ってトコですか。あ、ウエイトレスさんコーヒーお代わりね。


 大予言もフタを開いてみれば、ひねもすのたりのたりかな。そんな俳句めいた感想も浮かんでしまう、時は1999年。うららかな午後のひとときであった。



 敬具


  -----------------回想シーン終わり-----------------------



 追伸


 予言者様。上記が私が今日体験したことです。


 ですが、やっぱりあなたの予言にはウソが含まれていました。

喫茶店で三杯目のコーヒーを飲んでいるときに、ダイオーが性別でいうと女性であることが判明いたしました。


 そう。あなたは『恐怖の大王』ではなく『恐怖の女王』と表記すべきだったのです!




 かなり昔に書いた作品を「ヘタすると平成っ子の中にはノストラダムスって何?なんて人も居るかも知んないなあ」なんて想いながら2018年3月25日になりたての、夜勤から帰宅しての今、ブラッシュアップしてお送りしました(その平成ももうすぐ終わりそうです)。

 こういうのは世間的に注目度の高いその事象が起きる以前と以後とで作成する内容がすごく変わると想うんですが、ノストラダムスの大予言というものを知っていさえすれば、この形式なら1999年以前と以後のどちらでも読み手には楽しんでもらえる(内容にさえなっていればですが^^;)かなあ、とかとか。


 ともあれ。

毎度ツッコミどころの多いpurumi作品を、ここまで読み通してくれたあなた、ありがとさんです(^-^)。






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