プロローグ 5月2日
2020年。ここはM県のある中学校。築72年。コンクリート式だが、木造建造の教室も多くある。2000年ぐらいに増築もしたらしい。制服は学ラン、セーラー服。いい意味で「歴史ある学校」、悪い意味で「おんぼろ学校」という感じである。学校よりも広い、こう・・・
「おい」
・・・学校よりも広い、校庭が特徴で野球やサッカーの大会も多くはこの場所でおこなわれてい・・
「おい」
・・・この場所で・・
「おい『ザコ』!無視してんじゃねえぞ!」
頭の中に、女子の怒号が響く。その声で僕の体はビクつく。この声は本当に嫌いだ。
「いいから早く、ターゲットの場所教えろ!」
「はい!」
返事の声が裏返る。これ以上面倒になるのはまずい。ただでさえ彼女の僕に対する当たり方は何故かはわからないがひどいのに。その謎を考える暇もなく、僕は手元にあるノートパソコンのキーボードを震えながら打ち込んだ。
「目標は2‐Sへ移動中です。近くにある階段を使えば、2‐Bにでるので・・」
「2‐Sってどこだ!」
「えっ」
いい加減おぼえてくれよ。
「おい、早く教えろっつてんだろう」
「え、えーと、り、理科室です・・・・。」
「そう言えば早く済んだろうがよ。ちっ!てめえのせいで遅れたらどうすんだよ。」
ひどい責任転換だ。覚えおいてくださいって言ったものを覚えていない自分のせいではないだろうか。
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「いつみてもお前と彩のくだりはおもしろいな。」
「・・・それ本当に言ってる、銀。」
どう考えてもただ悪口、理不尽、わがままを言われまくっただけだ。だがそんな彼、風水 銀は僕と彩さんとのやりとりを"くだり"といつも見ていることのような言い回しで(まあ、事実だけど)微笑みながら言った。
「そんなことより、おい彩、聞こえて」
「お呼びでしょうか、銀君♡」
反応が早い。僕の時とは、180度対応が違う。
「ターゲットはその先だ。いつも通りやれ」
「はーい。わかりましたー♡」
この反応の変化について考えると、毎回、女子って怖いなと思う。
「羽里 彩、風水さーじゃない、銀君のためにターゲットを虫の息になるまでなぶり殺しちゃうぞ♡」
今"さま"って言いそうになったよね。後、可愛い声と裏腹に言ってることがすごい法律に触れそうなことなんだけど。
「ああ、わかった」
納得しちゃったよ、銀。あの狂気の発言を冷静に受け止めるとは。でも、本当に殺されると困るから、
「あの、わかってると思」
「今、君の声は聞きたくないの『クソザコ』君」
ついに、クソがついたよ、泣けるね。
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でも、しょうがない事だ。僕は銀や彩さんとは違うんだ。彼らがいないと、僕は何もできないのだ。彼ら、『覚醒者』のおかげで僕のランクは低い方とはいえなんとか維持できている。
2020年、このM県にある中学校はカースト制度と呼ばれる学生一人一人をランクで分け、己の力、知力、そして覚醒者特有の能力でランク最上位「神」の称号の獲得を目指す。その称号を得たものは1回だけどんな願いもかなえてくれる。一人でも、複数でも。