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遭遇しちゃった

【逝こうぞ、逝こうぞ、共に逝こうぞ】


「嫌だ……嫌だ…来るな化物!!」


目の前に広がる、僕の身の丈の半分程もある化物。鳥や蛙や蛇や鳥や犬や猫や魚や花や鼠や、兎に角様々な生き物をごちゃまぜに、混ぜに混ぜたごちゃまぜな化物。

あれに触れられた植物は腐り、途中で#偶々__たまたま__#通りかかった猫は、あれに喰われた。

ぺたぺた、ぺたぺたと、ずるずるずると、ゆっくり確実に僕を追い詰める。

腰が抜けてへたり込む僕の後ろは壁。横も後ろも壁、前は化物。逃げ道がない。

助けて、嫌だ、死にたくない。あんな化物に喰われて死ぬなんてあんまりじゃないか。生きてりゃ少しはいい事があるかもしれないって、そう信じて生きてきたのが馬鹿みたいじゃないか。

全然幸せなんてなかったじゃないか、僕の人生。


【逝こうぞ、共に逝こうぞ】


鼻先に息がかかる距離で、ぐっと首を伸ばした化物が言う。

震えが収まらない。震えのせいで歯がかちかち音を鳴らす。蛙の舌が僕の頬を撫でていく。


【逝こうぞ、共に逝こうぞ、うぬの知恵を貸せ】


「……え…」


【うぬの知恵を貸せ、うぬの知恵を貸せ、うぬの知恵を貸せ、うぬの知恵を貸せ】


様々な口が、知恵を貸せと言う。


「か、貸す!貸すから殺さないでくれ!」


【何を言っている?我らはうぬを殺さぬ。うぬを迎え入れ、知恵を借りたいだけだ】


殺されないのはいいとして、迎え入れる?何を言ってるんだ?


【安心してよいぞ、我らは皆で一つ。一つで皆。孤独に震えなくともよい、我らは常に共に在るのだ。うぬは人だが、知恵を貸すと言ってくれた。特別に迎え入れてやろうぞ。その孤独と深い傷に免じて】


化物に全身を鷲掴みにされる。服がぼろぼろと瞬く間に腐っていく。

胸に衝撃が走る。見ると化物の腕が胸を貫いてる。心臓ごといかれたんじゃないのこれ?何が殺さないだよ。痛いじゃないか、こんなに血が溢れてるじゃないか。激痛で悲鳴さえ出ない。

あーあ……化物に殺されて死ぬとかホント最悪な最後……。


「……がっ…はっ…………!?あ……?いや、だ……入って、くる…な……!」


化物が胸の穴からどんどん入ってくるのを感じる。入り込んで、解けて、一つになっていく。

化物が小さくなっていく。それに伴い僕の意識は暗闇に墜ちていく。


【今は眠るがよいぞ。うぬの記憶を辿って家に帰ってやるからの】

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