2-1 そりゃモニター上や画面上に映ってたりするドジは可愛いけれども
雷と白夢は屋敷の外へ出て、白夢の知り合いの元へとゆく。
「おい。どこ行くんだよ」
まず最初に思いついた疑問が白夢に投げかけられる。
「ふふ、見てからのお楽しみというやつだ」
クスリと笑いながら白夢は答えた。
「・・・で、後どんくらいなんだ」
「そうだな、大体ー・・・あ、着いた」
そのボケに対してズシャーっと雷が滑る。
「お前漫画みたいなすべり方するんだな」
「うるせぇな! って・・・んだここ・・・?」
雷は白夢が指し示した物件を見る。
「桜葉・・・書店・・・?」
「そうだ、まずは入って確かめろ」
♪カランコロン♪
白夢が書店の扉を開ける。
すると、中の少年が元気よく
「いらっしゃいませー!」
と答えた。
「っとと、白夢嬢様じゃないですか!また本を買いに来たんですか?」
少年は白夢に問いかける。
「ああ、今日はラノベでも買いにこようかなと」
「それでしたらこちらに新刊がありますよっ」
少年が本が積まれている場所を示す。
「そうか、ありがとうな」
「いえいえ! ってそこに居るのは・・・?」
少年が雷に気づいたようで白夢に問うように言う。
「敏さんでもないし・・・執事でもない・・・?」
「紹介する。この馬鹿は明坂雷という奴だ、私の近衛執事をしている」
「誰が馬鹿だ!」
「そうでしたか!えっと雷さん・・・ですか、以後お見知りおきをお願いします。僕は転坂落馬と申します」
「え、ああ・・・こちらこそ、よろしく」
「近衛執事とはいえ、執事同士。仲良くやっていきましょう」
「え、あ。うん・・・」
雷は頷くと白夢にささやき問いかける。
「えーっと・・・俺はあの人に敬語じゃなくていいのか・・・?」
「ああ、近衛執事は同年代の方でもタメでもいい。どちらか好きなほうを選べ」
「そ、そうか。んで・・・落馬君はどういう人なんだ?」
「落馬は・・・ん、その説明は後だな。今落馬の主が出てきたようだ」
白夢がレジの方に指を指す。
白夢と同年齢らしいきれいな、そして清楚そうな少女がそこに居た。
「あら、白夢。いらしてたの?」
その少女は白夢に問う。
「ちょうど今さっきだな。どうだ、景気の方は」
「一応うまくやってるつもり、この前男の人が伝記を大量に持ってきてくれて、それを店に置いておいたから品揃えはバッチリ」
「うん、まあ・・・頑張れ」
「ええ。・・・そちらのお方は誰ですか?」
「この馬鹿は以下省略」
「省略するな!」
「あら、近衛執事ですか」
「なんで分かるんだ!?」
「どうも初めまして。桜葉伊月といいます。あそこの落馬君は私の執事です」
「それは直接聞いてる。中々真面目そうだなぁ・・・」
「ええ、でもあの人、少しだけ不運なそうで・・・」
「そ、そうか・・・」
そこで落馬が脚立にのぼったままこちらを向く。
「伊月さん、そういうことは言わないでくだ・・・どうわ!」
不自然な体勢でこちらを向いてしまったため、バランスを崩し
ガラガラガッシャーン!
勢いよく脚立ごと倒れこんでしまった。
「痛たたたた・・・。あ、今のは違いますよ!たまたまバランスが崩れただけで・・・」
「落馬、人はそれを不運というのですよ」
「これは俗に言う・・・ドジ?」
雷は落馬達に聞こえないように白夢にそっと問いかける。
「いやいや・・・落馬の場合は一味違うぞ。なんていえばいいか・・・不運だ」
「へ、へぇ・・・」
「そういえば白夢、あなたは用事があるのでは?」
伊月が気づいたように言う。
「うむ、そうであったな。えーっと・・・」
先ほど落馬が指差した本棚の方で、目的のものを探す。
ちょうど見つかったようで、
「おーあったあった。代金は・・・500円か、ではここに置いておくぞ。うむ、ではこれで帰る。伊月に落馬君、また後ほどだ」
「はい、また今度です!」
「明日、学校で」
落馬と伊月が手を振りながら白夢を送る。
・・・落馬が強く手を振りすぎて机の角に手を当てる。
その状況を見ていた雷。
「いやぁ・・・落馬君は真面目だな」
「そうだな。それではすぐ帰るぞ、お前の明日の入学準備でも手伝ってやろう」
「ま、暇だしな」
「そういうことだ」
「そうだな〜・・・やはり入学するからにはインパクトのあるものが必要だな」
桜葉書店から帰ってきた白夢と雷は、入学準備をしている。
「よし、そうだ。自己紹介のときは『あれ?なんかこのクラスの女子達美人揃いじゃん!ヒィヤッホォ!こいつぁうっはうはだぜ』と言うがよい」
「入学初日から変態認定されてしまうわ!」
「いいではないか、学園最強の変態としてその名を轟かせるであろう」
「そんな称号持ちたくないやい!」
「まったく、わがままな奴だな・・・」
「どっちがだ!」
二人が言い合っていると、部屋にノックの音がする。
「うむ、入ってこい」
入ってきたのは敏だった。
「お嬢様、御来客が来ております」
「うむ、了解した。入るように促せておいてくれ」
「かしこまりました」
しばらくすると誰かがドアを開ける。
入ってきたのは白夢と同年代くらいの少女で、背は低めで髪が少し短い。
「お遊びにきました〜、ふぇ?なんか知らない人が来ていますっ」
その少女は雷の姿を見ると少し慌てた様子になる。
「こ、こういうときはどうしたらいいんでしょう。け、警察に通報ですか!?分かりましたです!」
「雹嘉、少し落ち着け。こいつ以下省略」
「省略するなって!」
「あ、近衛執事さんでしたか!これはすみませんでした!」
雹嘉と呼ばれた少女はぺこりと頭を下げる。
「だからなんで分かるんだよ!」
「で、どうしたんだ雹嘉。遊びに来たのか?」
「そうですっ!いやぁ大変でしたよー執事さんやSPさんに見つからないように・・・まるで忍者のごとくです!」
「うむ、そうであったか」
「オイオイオイオイオイオイ………」
「ふ〜む、そうだなぁ・・・よし、今日はトランプでもしよう。雷よ、ちょっと敏を呼んで来てくれ。あいつのことだ、仕事をほとんど終わらして暇してるだろう」
「分かった、すぐ戻ってくる」
雷は言われるがままに敏を呼びにいく。その間に白夢と雹嘉は談笑している。
「どうだった、逃げてきたときの感想は」
「それはすごいものですよ!なんていうかすごいのです!」
「ほう、そうか。すごかったのか」
「そうなのですっ!」
程なくすると雷が敏を連れてきた。
「お、これは雹嘉お嬢様。ご無沙汰しています」
「あ、いえいえ!こちらもご無沙汰していますです!」
敏と雹嘉が話していると、白夢が切り出す。
「敏、雹嘉、そろそろ始めるぞ。まずはババ抜きといこうか」
「わかった」
「かしこまりしました」
「いえっさーなのですー!」
白夢が手際よくカードを配っていく。そして配られたカードの中で被ったカードを捨てていく。
「ふむ・・・悪くはないな」
「うし、なかなかだ!」
「オレの手も悪くはないです」
「全然オッケーです!」
皆、思い思いの言葉を出す。
「では時計回りで、私→雷→敏→雹嘉の順番でいくぞ。では雷、私からカードを引いてくれ」
「わかった・・・これだな。次先輩っす」
雷が自分の手札を敏のほうに寄せていく。
「オレの運をなめるんじゃないぞ、雷」
「わかりましたから取ってくださいよ」
「先輩ショック。・・・これだぁ! お、2だな。被ってるから捨てるぞ」
敏が2のカードを捨てる。
「次は雹嘉お嬢様です、お取りください」
敏が雹嘉のほうに手札を寄せる。
「う〜ん、これは悩むのです・・・。とりゃ!」
雹嘉が勢い良く敏の手からカードを取る。
「ひゃあ!ジョーカーなのです〜・・・」
「いや、口に出したら駄目だろ」
雷が冷静に言う。
「ひぁ!そうだったんですか?知らなかったですー」
「オイオイオイ・・・」
「あぁ・・・可愛い・・・」
白夢が雹嘉を見ながらそう呟く。
「ん・・・?もう夕方か、そろそろ雹嘉の執事がくる頃だな」
「そうみたいですねぇ・・・。ではっ、そろそろ帰らせていただきます。また明日ーなのです」
「また明日だ、しーゆー」
「んじゃ雷、オレ達は仕事に戻るぞ」
敏が雷に指示を出す。
「はい、分かりました!」