1-5 爆弾男は喧嘩の元によくなるから注意しよう
休憩を終え、朝食の準備に取り掛かるため厨房に行く三人。
他のメイドや執事達もそれぞれの仕事にかかるようだ。
「もう既にコックが朝食をつくっている。オレ達は配膳なんかをするだけだ」
敏が初めての仕事を行う雷のために説明している。
「今日は白夢お嬢様だけの御朝食だ、オレ達三人のみでミッションを遂行する」
「先輩もミッションミッション感染されないでくださいぃ!」
「そうするミッション」
「語尾をミッションにしないでください!」
「二人とも漫才面白いよー」
「漫才じゃないですゥゥ!」
「ですぅ?なんだそれすいせいせk」
「言わせません!」
「で、だ。とりあえずそっちのサラダを持っていってくれ」
雷が敏のふざけを止め、しっかり仕事に入る。
「はいっす」
「魅衣奈はそっちのデザート持ってってくれー」
「いえっさー♪」
敏は魅衣奈達に指示を与えるとコックのもとへとゆく。
「今日の白夢お嬢様は何卒ご機嫌がよろしい。このご機嫌を害さないよう注意をお願いします」
「ええ、分かりましたよ凛坂さん」
「では」
そして敏は自分の配膳の仕事へと移っていこうとした。
「ふーん、普通に仕事は真面目なんっすね」
雷は意外だなというような顔で敏にそう言う。
「まーな。というかなんだその意外だなぁこの糞執事がというような顔は」
「最後の方いりませんって!」
「・・・まぁオレだって金を貰っているものだ、真面目にやらないでどうする」
「そうっすね・・・」
雷は少し疑問そうに考える
―俺の仕事ってこんな感じでいいのかな?
「お前は近衛執事だ、近衛執事らしい仕事をすればいい」
まるで雷の心を見透かしたように答える敏。
「は、はいっす!」
「よし、いい声だ。そろそろ行くぞー、白夢お嬢様が来られる頃だ」
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「ふあぁ・・・良く寝た。やはり日曜日はよいものだな」
二度寝から覚めた白夢は既に食事をする場に来ている。
「お嬢様、ご朝食をお持ちにあがりました」
敏が前菜その他を配膳しに来る。
「今日の紅茶はアップルティーだそうだ、しっかり飲めよ」
雷もそれに続き紅茶を配膳する。
「ほー、さまになってるじゃないか雷ぽん」
「へんな呼び方やめろって」
と、そこで
「はっくむー☆サラダだよーっと♪」
魅衣奈が白夢を呼び捨てで呼ぶ。
「へ?先輩ぃ?魅衣奈さんは白夢のこと呼び捨てでいいんですか?」
雷はまず一番に思った疑問を敏に問いかける。
「ああ、魅衣奈は白夢お嬢様の昔からの知り合いであり専属第一メイドだ。敬称敬語で喋らなくてもよいと白夢お嬢様から許可が降りたため呼び捨てでも構わないことになっている」
「そ、そうなんすか」
「でもちゃんとした仕事の中では敬語を使わなければならない。今日みたいに親御様が居ない時などはこのように喋ってもいいわけだ」
「ふうん・・・」
「ちなみに専属第一メイドというのは近衛執事と同期に生まれた極最近のものだ。ま、専属第一メイドは日本では魅衣奈くらいしかいないらしいが。んで魅衣奈は普通のメイドから専属第一メイドへと転職したわけだ」
「大体は分かりました」
「白夢お嬢様も昔からの親友である魅衣奈とはかしこまった喋り方はしたくなかったとおっしゃられていた。魅衣奈も同様にな」
敏がちょっとした解説を終えると
「お、魅衣奈姉さんありがとう」
と、白夢が調子よく喋る
「ね、姉さん!?」
「魅衣奈は白夢お嬢様から姉さんと慕われていてな、どういう経緯かは知らないが」
「なんか二人ともいいコンビっすね」
「そう思うだろ?俺もだ」
「今日は白夢の嫌いなトマトが入ってるからねーっ、しっかり食べるんだよー?」
「っうぇ!?トマトー・・・?」
白夢がげんなりした表情になる。
「んだよお前トマト嫌いなのか?」
雷が問いかける。
「雷ー、お前近衛執事ならトマト食ってくれ」
白夢はトマトをフォークで刺し、雷のほうへ差し出す。
「駄目だ、てめーが食え」
「うぅ・・・雷の甲斐性なし・・・」
「うっせー、黙ってろ」
そんな二人の会話を聞きながら
「いっやー、雷君もすっかり仕事に馴染んじゃってるねー」
「あいつ近衛執事の才能でもあんのか」
「そうなんじゃないー?」
敏たちは話している。
「おら食え食えー」
「いーやーだっ!」
「ふー・・・とりあえず午前の仕事は終了っと」
朝食を終えて自分の部屋で一休みする雷。
「そういやさっき先輩からスケジュール渡されたんだっけ」
雷は朝食を終えての敏との会話を思い出す。
『とりあえず午前の仕事は終了だ。俺達は執事としての仕事に戻るから、お前は白夢お嬢様の護衛、後はお暇を潰してあげてくれ』
『ご、護衛!?』
『ああ、岩崎家は日本有数の由緒正しき家系でいらっしゃる。それ故誘拐なんかもありえるわけだ』
『な、なんか大変そうっすね…』
『お前が仕事に慣れてきたら俺が直々に稽古をつけてやる。楽しみにしとけよーっ』
『え。あ、はいっす!』
『とりあえずこれがスケジュール表、分からなくなったら俺を探して聞いといてくれ。んじゃあな』
「これが渡されたスケジュールだな・・・って午後は全部白夢とつきっきりなのか?これはまた疲れそうだぜ・・・」
♪かーなーしーみの〜向こうーへと〜
と、そこで部屋の内線電話が鳴る。
「なんだこの着信音!?・・・もしもーし」
≪もしもしー、雷かー?≫
「白夢か。ああ、俺だぜ」
≪それでは私の部屋に来てくれ。場所は分かるだろう?≫
「ああ」
≪ボン○ーマンやろうボン○ーマン≫
「ボン○ーマン!?」
≪そうだ、SFCの5やろう≫
「わあった、すぐ行く」
≪ミスボンとCPはありだからな!≫
「わあったわあった!」
雷は乱暴に受話器をかける。
そして白夢の部屋に移るため廊下へと出る。
「確か・・・こっちだったっけか」
自分の記憶を頼りに廊下を進んでゆく。
そして白夢の部屋を見つける。
「ここか」
雷はコンコンッと扉をノックする。すると部屋の中から
「雷ー早く入ってきてくれー」
白夢の声が聞こえてきた。
「へいへい・・・っと」
「よし来たか。そこへ座ってくれ」
「・・・で、何でSFCのボン○ーマンなんだ?」
「この頃のやつは面白いからな、特に5は」
「そーいうもんか」
「そーいうもんだ。さ、始めるぞ」
白夢はSFCの電源を入れる。
そしてステージは一番の「ふつう」に決定する。
「私のプレイをなめるなよ・・・!」
「わかったわかった」
「む・・・」
しばらくの間ゲームを満喫していた二人。
しかし戦況は白夢の劣勢、雷はこの手のゲームには慣れているようだ。
「お前、また自滅してるぞ」
ブロックと自分の向こう側に爆弾を置いてしまい逃げられなくなった白夢。
「よ、よくあることなのだ!これくらいこれくらい・・・」
「ってお前さっきから連続だけどな」
「これからが私の本領発揮だ!」
「やってみろよ」
「あ、また自滅・・・」
「・・・天性?」
「うるさい!」
―――しばらくの間ゲームを楽しむ二人。
「ん、もうこんな時間か。そろそろゲームをやめようではないか、中々楽しかったぞ」
白夢が電源を切る。
「んだ?なんか用事でもあんのか?」
「うん、少し知り合いのところへな。お前もついてきてくれ」
「ま、それが仕事だしな」
「っとと、その前に・・・」
白夢は自分の机の引き出しを引き、紐状のリボンを取り出す。
「私の髪を縛っておいてくれ」
白夢は取り出したリボンを雷に差し出す。
「なんで俺が!?」
「他人にやってもらう方が綺麗にできるからだ!」
「わかったよもう・・・」
雷は渋々リボンを手に取る。
「で、どういう縛り方をするんだァ?」
「一縛りでお願いする。簡単に言えばポニーテールだな」
「ふぅん・・・その長ったるい髪どうするかと思えばポニーテールか」
「うむ、姉さんが教えてくれたのだ」
「へえ・・・」
雷は感嘆の声を漏らしつつ白夢の髪を縛っていく。
「これほどでどうですか、お客さん」
「おー!綺麗にできたではないかー!」
雷は髪を縛り終え、白夢はその出来ばえに喜んでいる。
「うむ、では外へ行こうか」
「おぅ」
PM14時、近衛執事とその主人は一度屋敷を出てゆく。