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七恋パラレルワールド  作者: 堀塚 刀夜
『始まりの物語――決意の入学式!』
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光を求めて 【後編】

 茂みに隠れながら、他の生徒の様子を探る。

 どうやら、森の奥に向かっているのが分かる。


 何があるか確認するためにも同じ方向に進む。

 茂みから飛び上がり木の枝に着地、枝を渡りながら移動する。

 こうすれば、他生徒と接触する可能性は低い。

 さっきの奴みたいに、襲ってこられても面倒。

 もし、枝の上で他生徒と接触してもお互い不干渉だろう。


 そして、向かった先は森の切れ目だった。

 森がなくなる手前の枝に立って、先を見る。

 何か建物が見えた。見た感じ大きく見える。

 あれが校舎?


 流箭の里関連の建物である事は間違いない。

 しかし、果たしてあれが校舎だろうか。

 炎城理事長は、森の中に校舎の入口があると言っていた。

 であれば、こんなに堂々とゴールが見えているのはおかしい。


 どちらにせよ、正解ではないと思う。

 となれば、森の中に入口があると考える。


 他の生徒たちが森を抜けた先にある建物へ向かう中、私はその建物に背を向けた。

 一面緑色の世界、草木しか見えない静かな森。

 太陽光も気持ちよく、森林浴ができそうだ。

 

 多くの生徒があの建物に行ったせいか、人の気配が少なくなっている。

 でも、まだ終わっていない。

 終わっていれば、同じようなアナウンスが森中に響くと思うから。


「ん?」


 そう思っていると、耳に届くおかしな音。静かになった森だからこそ、聞こえたのだと思う。

 森で聞こえる音にしては、やけに不似合いな機械的な音だった。

 音のした方角へ地面を蹴って走る。

 そんなに遠くないから、すぐに着く。


 見えてきたのは、土が大きく盛り上がった光景だ。

 そこに数人の生徒が立っていた。

 私は気配を消しながら、一番近い木の幹で隠れて様子を見る。

 よく見ると、盛り上がった土はまるで大きく口を開けたように入口を作っていた。


 入口を見ると奥は暗くなっていて見えない。これが校舎への入口?

 生徒たちがその入口へと入っていく。

 私もその生徒たちの後に続くために、急いで入口へと向かった。

 しかし、生徒たちが入った瞬間、盛り上がった土は一気に地面へと戻ってしまった。


「仕掛けはどこ?」


 そう口にしながら、土が盛り上がった部分の周辺を探す。

 開閉式だとすると、地上のどこかに入口が開く仕掛けがあるはず。

 見た感じ、地面におかしな点はなさそうだ。

 そう考え、周辺の木々を見た。


 すると、木肌と同じ色をしている大きな突起を見つける。

 目を凝らすと、人工物だと分かる。

 好奇心も手伝って、その突起をぐっと押してみた。

 突起は木の幹に沈み込んだが、何か起こる気配はない。


 考えられる可能性はいくつかあるけど、おそらく一度しか開閉しないような設定をしてあるのだと思う。

 となれば、急いで次を探そう。


 しかし、盲点だった。森の中と言われたから、どこかに隠し通路のようなものがあるのかと思った。

 それが地下から出てくる入口だったなんて……

 つまり、校舎が地下にあるという事。

 そうと分かれば、先程のような入口がないかを探せばいい。

 一つ、という事はないはずだ。


 一つであれば、さっきのように一度しか開かないというのは、おかしい。

 そこまで意地悪でもないはず。

 ただ……どの入り口が正解か、という問題はあるかな。


 でも、それを判断する要素が今はない以上、勘でいくしかない。

 まずは当たりを付けよう。

 そのために、これまでの状況を整理してみる。


 スタート地点からすぐの所には罠が多く、中程には何もなかった。そして、奥を進んだ先に校舎を思わせるような建物。

 肝心の校舎への入口は、地面に隠れている。

 入口は一つではない。となれば、正解の道と間違いまたは遠回りの道がある事が考えられる。


「スタート地点かな……」


 ぼそっと口に出してしまう。

 他の可能性は考えにくい。

 正解を隠すなら、罠の中って事かな。

 とりあえず、自分の勘を信じよう。


 そうと決めたら、後は行動。

 急いでスタート地点に走る。

 簡易的な罠を避けながら、盛り上がっていそうな地面はないか探す。


 でも、地面に怪しい所はなかった。

 これは当てが外れたかな……

 そう思っていた私の視線に不自然な蔦が見えた。


 枝から下に伸びている蔦。

 明らかに引っ張る事を目的としているように感じる。


「罠かな?」


 気になるけど、何もしないっていう選択肢はない。

 周囲を警戒しつつゆっくりと蔦を引っ張る。

 その瞬間、地面を揺るがす、機械音がすぐ側で聞こえる。土が盛り上がり始め、大きな口が開く。


 そうしてできた入口の前に立って、一度深呼吸。

 そして、足を踏み入れる。

 すぐに背後で大きな音がして、地上の光が閉ざされた。

 真っ暗になると思った時、白い明かりがついた。


 無機質な通路が先に続いている。

 上の生命力溢れる森に比べると、こちらは機械的な造りだ。

 そのまま道なりに進むと、エレベーターが見える。


 ボタンを押すと扉が開いたので中に入る。

 どこで降りようかと、ボタンを見たがすぐにエレベーターは動き始めた。

 目的地まで直通で進むように設定されているようだ。


 そして、到着を知らせる電子音と共に扉が開く。

 扉を出た先は広い空間だった。

 その中央には二人の人間が立っているのが見える。

 近付いていくと、その姿がはっきりとしてきた。


 一人はおかっぱ頭に赤いマフラー、忍び装束を身に付けた少女。もう一人はスーツを着ているけど、胸元のシャツが大胆に開いて下着が見えている女性。


「君は確か古影風華君だったかな」

「そうだよ」


 スーツの女性が私の名前を告げてきた。この人が炎城理事長か。


「おめでとう、君が一番乗りだ。良くここへの直結の入口が校門の近くにあると分かったね」

「勘」


 私は話す事があまり得意ではない。だから、このように単語単語で話してしまう。

 失礼だとは思うけど、我慢してもらうしかない。


「なるほど。勘も実力のうち……違う、運も実力のうちだ。舞花もそう思うだろ?」

「そうですね。勘だけで罠が多いスタート地点で入口は探さないとは思いますけどね」


 私の短い言葉からも難なく会話に繋げてくれる二人。

 それを嬉しく思う。――顔には出ていないけど。


「ありがとう」

「いや、気にする事はない。さて、賞品だったな。これから用意してくる。ついでに、アナウンスもしてくるから少し待っていてくれ」


 炎城理事長はそう言って、私が乗ってきたエレベーターの方へ歩いていった。


 舞っている間、する事もないのでじっとしている。

 すると、舞花と呼ばれた人が私を見ているのが分かる。

 だから、何か用なのかと彼女に視線を向けた。


「古影、影に必要なものは何か分かるか?」


 いきなりそんな事を聞かれた。

 必要なもの……


「光……」


 気が付いた時には口に出していた。


「その通り、光だ。古影も光を見つけられるといいな」

「うん」


 光だ……彼女に、そう告げられて胸の中が熱くなった。

 理由は分からないし、なぜ彼女がそんな事を言ったのかも分からない。


『新入生諸君に連絡する。一人の生徒が私の下に辿り着いた。現時刻を持って終了を宣言する。各自、森の中にある地下への入口から誘導に従って私の所へ来るように以上だ』


 放送が聞こえた。

 それからすぐにトレイに何かを乗せた炎城理事長が戻ってきた。


「待たせたね、風華。さあ、この二つから好きな物を選んでくれ」


 差し出されたトレイには、長い砲身があり柄のようなものが付いている黒光りのする武器と二挺の砲身が短くナイフのような武器が乗せてあった。


「こっちを」


 迷う事なく二挺のナイフのような銃剣を取った。

 もう一本の方は私には向いていない。

 一度、構えてみるとしっくりときた。


「様になっているようだ。これは特別製でね。今日支給されるガンブレードとは耐久度や扱いやすさが違う」


 武器は支給制なのか……


「ありがとう」

「どういたしまして。さ、そろそろ他の生徒たちが来る頃だろう。入学式を始めなければな、舞花一緒に来てくれ」

「分かりました」


 ぐっと伸びをしながら、舞花を伴いながら炎城理事長がどこかに行った。


 ――光。


 なぜか、その言葉だけが自分の心の中に強く残っている。

 私はきっと影の中で生きるだろう。

 それでも、そんな私を照らしてくれる光があるのだろうか……


「光……か」


 そうなれば、嬉しい……本気でそう思う。


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