悩み
今日の授業が全て終わり、俺は学校から解放ーーされたのはされたのだが、陽介のあの言葉がまたも耳から離れなかった。
『で、お前ほんとに弓場ちゃんのこと好きなの?』
好き、といった感情は高1までは持ったことはなかった、と思う。弓場を見て、あ、これが恋なのかなって感じたのが初めてだった。
「あ、」
そんなことを考えていると、目の前を例の少女が通った。ふぁさっ、と長い綺麗な黒髪が風に揺れる。大きめの瞳にすらっとした顔立ちは、祐希に改めて美少女だと感じさせていた。
かわいい。その一言につきる。だが思春期真っ盛りの祐希の心の中ではこのような思いが生まれていた。
ーーかわいい、と好き、は違うんじゃないか?
春海が前を横切った時、確かに胸がときめく感じがした。けれどそれはかわいいから、という理由だけだったんじゃないのか。
今までにないような感覚だった。
「なんか…情けないなあ」
そんなことさえも割り切れない自分の心に少し
ばかりの苛立ちを感じながら、帰りの時にいつも陽介と待ち合わせている正門へと足を運んでいった。
「おー祐希!遅かったな今日は」
「まあ、そのあれだ、いろいろあってな」
「おー?恋の相談なら乗りますぜぇ、恋愛解決人のこの陽介様が…って痛っ!」
陽介の言葉が終わる前に、こちらから終わらせにいく。
「…祐希さあ、前に挨拶代わりの叩きはやめろって言ってたじゃんか!自分でやるとか論外だぞばーかばーか」
「これは挨拶じゃなくて戒めだから」
「うっわーー屁理屈!」
ふっ、と自然に笑みが浮かんだ。気が軽くなった感じだ。
「ちょ、なに笑ってんだよ!」
「なんにもねーっ、よ!」
「いっったいって、バカヤロー!」
形勢逆転。今日は俺が2発いれてやった。やっぱり俺はこういう気楽な感じの方が似合ってるのかな。そんなことを思いながら、追いかけてくる陽介から逃げるように家の方へと駆けて行った。