不意打ち
学校から家に帰ると、祐希はベットの上にばふっと覆いかぶさった。
ーーそんな簡単にバレるものなのかなぁ。いや、あいつにバレるのは今はもうどうでもいい。問題はあの子にバレているかだ。
「…さすがにバレてたら行動的にわかるっしょ!」
今の俺はそう楽観的に考えることしかできなかった。
翌日、学校に行くと俺の席に陽介が座っていた。
「おい、そこは俺の席だぞボケ陽介」
「おう、誰が席間違えるかアホ祐希」
名前の前にプチ暴言をつけるのが最近の2人のプチブームになっている。
「んで、なんで座ってんの?」
「ん?ああ、そりゃちょっぴりお前に聞きたいことがあってな」
ほんの少し、ドキッとした感情を押し込める。
「ど、どーしたよ」
「ズバリ聞くぜ。お前ーー」
普段ならどこぞの24時間営業コンビニ野郎みたいにボケーっと聞いているだろうが、今回ばかりは昨日の事もあり少し心が揺れている。ゴクッ、と唾を飲み込む。
「ーーお前、昨日のドラマ見たーー!?あれやばくね!?キュンキュンが止まらねぇよおい!まだ心臓バクバクバックマンだぜ!!」
あー……
「……んー、そーだな、おうそろそろ席につけよ授業はじまんぞ」
なんか助かったというか期待はずれというか…助かったんだろうけどさぁ…
「なんだよー塩対応だなぁ!お前の心は鉄人何号なんだよ!」
忘れてた。こいつはしょーもないことしか言わない、いわゆるしょーもない製造マシーンの事を。
「はいはい1号でいいです、ほら早く」
席につけ、と言おうとした時だった。
「で、お前ホントに弓場ちゃんのこと好きなの?」
バクン、と心臓が鳴る音が直に聞こえたような気がした。
「……」
陽介の2日目の不意打ちに、今度は言葉すら出すことができなかった。
「まーそうだよな、お前恋するの初めてだもんな!まあ恋してるかどうか分からんから聞いたんだけど!ハハ」
そういって陽介は自分の席にゆっくりと戻っていった。あー眠っ、と髪をボリボリとかいている陽介とは裏腹に俺の心臓の鼓動は今だにバクバクと鳴り、止まる様子すらなかった。