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女子高生のオモチャ  作者: 三ノ月
第七章 悪の脈動
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第○三八話 『嵐の前』



 夏休みも明け、街は少しずつ活気を失っていく。賑わいを見せた歩行者天国は、スーツを着た男女と制服姿の少年少女で埋まり、私服で歩く者はその数を減らしていた。

 されど浮かれ気分でいることには変わらず。余韻のせいもあるだろうが、その大部分はこれから起こる、街の大部分を巻き込んだイベントゆえである。

 川内市二校合同文化祭。新都、そして古都――いわゆる下町に存在するそれぞれの高校が合同で文化祭を行うという、字面そのままのイベントである。大規模な夏祭りが存在しない分、街の住人はこのイベントで精一杯楽しむのだ。

「今年はどことどこだっけ?」

「ホールドアの展望デッキで告白するとな……」

「さすがにその日はシフト入れないってば」

 そうして盛り上がる街並みを眺めつつ、聖は一人嘆息する。

「ん、どしたん」

「いや……ほら、今年ってウチじゃん? ちょっと準備のこと考えたら憂鬱だなって」

 それだけの大規模イベントだ。当然事前準備も大掛かりなものになり、生徒や教師にかかる負担も大きい。無関係な人からすれば単なるお祭りだが、当事者たちからすれば正直御免こうむるという声も多い。聖もそんな一人だった。

 一方、聖の隣を歩く彩音のように、祭りを純粋に楽しもうと息巻いている者もいる。

「そりゃそうだけどさ、準備なんて実行委員が仕切ってくれるんだし、そこまで大変なことはやらないでしょ。あたしら女子だし。心配しなさんな! 実行委員にでもならない限りそんなことにはならないから!」

「そうかな……?」

 だとしても、そもそも人混みというものが苦手な聖だ。雑多に行き交う人々、生徒。想像しただけで酔いそうで、やはり気分は好転しない。

「それに、まだ夏は終わりそうにないし」

 頭上で照り付ける太陽はその輝きの留まるところを知らず。ああ、もう少し夏休みが長ければ良かったのに、なんてぼやく。少しばかり伸びたところで、何の予定も入らないのだけど。ただ家でゴロゴロと過ごす。それだけで聖は幸せだ。

「まーたこの子はぐーたら思考で。年頃の女の子がそれで良いのかよ」

「良いんだよ別に。っていうか、年頃だろうが晩年だろうが、縁側でお茶飲む日常が一番に決まってるんだって」

 そう――日常、平穏、平和。ありとあらゆる停滞こそ、聖の望む理想の日々だ。変化は無く、刺激も無く、同じようで少しだけ違う毎日を生きていく。それだけでお腹いっぱいになれるのが、聖の長所であろう。

「だから彩音も、レッツ日向ぼっこ」

「あんたは猫か」

 ずびしっ。脳天に落ちた手刀は、聖に「あばっ」という可愛らし……くない声を漏らさせた。恨みがましく睨んでやると、愛しの友人は何処吹く風でそそくさと先を行ってしまう。

 何気ない朝、登校時間。何やら世間を騒がせているらしい、警察対応不可の奇妙な事件は起きる気配も無く。きっとそれらは、聖が生きる世界から遠く、それこそ地球の裏側にしか存在していない。


 ◆


「……ねえ、彩音」

「……なに、聖?」

 委員会室と呼ばれる、長机とパイプ椅子がそれなりの数並べられた教室で、聖は顔を覆って不幸を嘆いていた。

「実行委員にならなければ、大変じゃないんだったよね」

「……なっちゃったなー。あれフラグだったか」

 各クラスから選出される委員が数人であれば、こうなることも無かっただろう。しかし各クラスから十五人も出さねばならぬとなると、逃れられる確率はグッと減ってしまう。結果、運悪くも捕らえられ、聖と彩音は実行委員として名を連ねることになった。

「もう嫌なんだけど! 帰りたいっ!!」

 なぜこうも貧乏くじを引いてしまうのか。ガラ、と引き戸を開け委員会室に入ってきた教師――聖たちの担任を睨み、己の不運に口を尖らせた。

「そうだよ、決めるにしたってジャンケンとか立候補とかあったじゃん。なんでテキトーに選ぶとかそんな方法取っちゃったの佐知子さちこ先生は!」

「んん? なんだー、先生に喧嘩を挑む気かーい? いいよ、かかっておいで。先生はいつでも相手をしよう。なんつって、わっはっは! そんじゃ、第一回合同文化祭実行委員会を行います、っと」

 委員会室に集まった生徒の視線は教室の前方、一つだけ別枠で並べられた長机へと向けられる。正確には、その前に立つ女性教師にである。岩沼いわぬま佐知子さちこ、聖のクラスの担任であり、実行委員会の顧問を担当する独身女性。そのサッパリとした性格は生徒にはもちろん、職員内でも評判は良く、今回のように他校との交流を前提としたイベントには大体出ずっぱりである。

「んじゃまあ、軽く概要を説明しよう。えー、合同文化祭ね、今回ウチに回ってきたわけだけど。……あんま気負わなくて良いかんね? 基本的には新都側の学校が先導してくれるから、その指示に従う感じになるだろうし。だから私たちは、この学校での活動に専念します。出展の監査だったり、物品の注文、斡旋。まあ他にもやることはあるわけだ」

 そこで一度言葉を区切り、佐知子は視線を教室内に彷徨わせる。それがある一点に留まり、

「はいそこのきみ! 今、先生の話を聞いて難しそうって思った?」

「うぇ? え、ああ、……少し?」

 当てられたのは一人の男子生徒。唐突の出来事に多少戸惑いつつ、そして僅かな恥じらいを交え答える。

「おお、良かった。こんだけカッコよく当てといて、カッコよく『思わないぜ!』なんて言われてたらきっと立ち直れなかったよ。よし、話を戻そう。難しそうって思ったの、他にもいるだろう?」

 問われて、確かに、と頷く。正直何をすればいいのかわからないのが現状だ。そこに監査だの斡旋だのと言われれば理解も追いつかず、何やら面倒臭そうなこと、と思ってしまう。

「まあ仕方ないわ、私がそう感じるように言ったんだし。でもね、難しいことなんて何にもないよ。合同文化祭だとか言って大仰な感じにしてるけど、私たちがやるのは『普通の文化祭』だ。合同云々に関してはほら、さっきも言ったけど新都側がどうにかしてくれるから。あっはっは!」

 ……少々、無責任すぎやしないだろうか? 心配になる聖を余所に、その後も佐知子の話は続く。

「まずは自分たちのことがしっかりできないと。二兎追うものは一兎をも得ず、ってさ。身の丈に合わないことをしても、その先に待ってるのは破滅だけ。きみたちはさ、みんなの注目を集める場所で盛大にコケたい?」

 その問いには誰もが首を振った。ならば、と佐知子は、この実行委員会の明確なテーマを口にした。

「そんなわけで、我々の目標は『いつも通り』で行きます! はい、拍手!」

 広いとは言えぬ委員会室に集まった、二〇〇名近い実行委員は、この先生であれば酷いことにはならないだろうと確信する。なるほど、この手のイベントに引っ張りだこな理由が分かった気がする、と聖は得心した。

「委員会のテーマも決まったところで、今日やることの説明ね。近いうちに新都側の高校と合同ミーティングを行うんだけど、それまでにこっちの文化祭としてのテーマ、そして合同でやる際のテーマを決めなくちゃいけない。二つの学校とホールドアの一角を借りて行うのは知ってるよね」

「……え、そうなの」

「あんた、まさか知らなかったのか……?」

 佐知子の言葉に首を捻る聖に対し、まるで恐ろしいモノに出会ったとでも言いたげな表情で問い返す彩音。ああ、知らなかったとも。馬鹿にされたと思った聖は口を尖らせ、ブツブツと言い訳を重ねる。

「だって人混み苦手だし、そもそも一緒に遊びに行く友達もいなかったから、いつもいつも家で暇してたし……大体、同じ街って言っても新都と下町じゃ結構な距離あるじゃない。どうやって合同でやるの」

「そ、の、た、め、に! 間のホールドアを借りるんだって!」

「い、痛い。彩音痛い」

「こらそこー、話聞いてるかー?」

 脳天に幾度も振り下ろされる手刀は、佐知子の注意を惹いたことでやっとこ収まった。なんて酷いことをする友人だろうか。

「ったく……あんたのめんどくさがりは筋金入りか。いい? 例年、合同でやる二校はまず自分の学校で文化祭を行うの。普通にね。で、二日目からはホールドアの一角で出張出展。二日の休憩を設けて、後半は相手側の高校に出張して出展。まあハードよねえ」

「私、サボって良いかな」

「おいこら」

 合同文化祭は一週間行われる。……これは知っている。しかし、なぜそんなに長い期間行うのか、その理由までは知らなかった。まさか出展の丸ごと移動があるだなんて。

「絶対大変だよなんでそんな面倒なこと好き好んでやるの馬鹿じゃないのこの街……不合理だぁ」

「――んで、さっきからそこ騒いでるけど。そんなに合同ミーティングに行きたい?」

「へっ」

 再度注意されるが、それよりも後に続いた一文に目を点にする。

「そっかそっかー。そんなに行きたいなら仕方ないなー、生徒の自主性を重んじるのも教師の務めだしなー。……よぉーし、行って来い宮城! あとついでに加美かみぃ!」

「ええっ、あたしも!?」

「ちょ、待って……そんなの無理なんですけど」

 聖の抗議は聞き遂げられず。

「よし、メンバーも決まった、と。いやースムーズで良いね。そんじゃこっちからは生徒会の五人と、黒板に書き出した一〇人で。持ってく内容はこれからまとめて行くから、ちゃんと伝えてくるんだよ?」

 そんなこんなで、半ば強引に推し進められる実行委員が、本当の意味で開幕した。


 ◆


「まーたこんなところで街を見下ろして。お嬢様ってのはみんな、高いところがお好きなんスかねぇ?」

「――恭か」

 世間は長期休暇を追え、再度空気が変わりつつある。人の順応性とは案外高いものだ。オモチャによる異常事態も、いつの間にか『いつものこと』で片付いてしまう。特にこの夏休みは酷いものだった。盛った子どもが頻繁に暴れるものだから、危うく見世物になるところだった。

 何やら、また新たなヒーローが生まれ、そんな事態は回避されたようだが。

「何か思うことでもあるんで?」

「いやなに……平穏を肌で感じていただけよ。妾が暴れ、平穏を崩したこの街は、この展望台から見下ろせば、何もおかしなところなどない日常を過ごしておるではないか。妾はそれが、たまらなく――恐ろしい」

 例えば今ここで、色麻が小槌を取り出し、この街のどこかに落雷を落としたとする。前回は人気を気にしていたが、この例においては関係ない。どこで誰が笑っていようと、たった一振りで雲散霧消するのだ。

 しかしそれでも、落雷が落ちた一帯でどれだけの人が死のうとも、この街は一つ歯車を取りこぼそうとも、回り続けてしまうのだろう。

 歯車が欠けても動く時計仕掛けは、果たして正しいのか。

「相変わらず、見た目に似合わず難しいことを考える子どもッスね」

「ハッ、子どもは主もだろうに。でなければどうしてオモチャを扱えよう」

「……あー、まあ。確かに子どもなんスけど。オレのオモチャはちょっと違うんだってば。原理だけで言えば、大人でも扱えるッスよ、これ」

 恭が取り出したるは、黒い指貫グローブ。オモチャと呼ぶのかすら怪しいそれは、恭が父親から受け取ったものであるらしい。

「試作品、ってあの人は言ってたッス。未完成、とも。そんなものを自分の子どもに使わすなや、って」

「試作品、未完成……つまり、そのグローブから出る黒い靄は、そのグローブの力ではなく」

「ああ、そう。まるっきり『悪霊』の力ッス。ちなみに、あるオモチャの力をコピーした代物らしいッスけど、誰のだと思う?」

 授かり物であろうと自らの力だろうに、ふりふりとぞんざいに扱う恭に嘆息を一つ。ついでに答えも一つ。

「――イーターであろう?」

 おおよその察しはつく。恭がグローブを使った時、色麻はある文字列が浮かぶのを見た。Eater――よくよく見知ったものだ。恐らく、色麻をイーターにぶつけたのも、美詩女という幼女にイーターを襲わせたのも、その力を奪うためだ。

「あの男はどれだけ惚れ込んでいるのやら……」

「実の子ども放り出してこの街来るだけあるわ。愛されてるッスねえ」

 二人の逢瀬の間に、夜の街は変わらぬ日常を映し出す。静かに、静かに。ただ静かにその時を待っている。

「――嵐の前の静けさ」

 どちらがともなく呟き、これから起こるであろう人為的な災いに身構える。

 きっと、嵐はすぐそこまで迫っている。それまでに決めねばならない。

「……まだ迷っているなら、置いてくッスよ」

「……抜かせ。妾の前は、誰にも歩ませぬ」

 彼らの逢瀬は奇しくも、数日前のある正義の者達の行動と一致していた。しかしその目的、思惑、理想は対極にあり。

 月下、ついに彼らは動き出す。


 ◆


夏休みが明けて二週間、まだまだ先のように思える文化祭も、実のところそれほど時間は無いようで。無茶なスケジュールを数で押し切る形で進行していた。

「明日の合同ミーティングの会場はあちらさんの高校。バスで行くから、選抜メンバーは準備しといてね。つっても、その資料持ってくだけで良いんだけどさ」

 委員会室に集まった聖たちは、佐知子の言葉に顔を青くする者、来る祭りに胸躍らせる者と分かれており、聖は顔を青くする側であった。知らない面々と顔を合わせるという行為はいつだって胃を苦しめる。

「あんた、梁たちとは普通に話せたじゃん。人見知り直ったと思ったんだけど?」

「あれは夏休みだからって言うのと、いろいろなことがあってハイテンションだっただけで……」

 佐知子は気負う必要はないと言う。だが責任がその肩に乗っているのは確かであろう。合同ミーティングと言うからには、議題を設けいろいろなことを話し合うのだろう。もちろん自ら発言するなんて真似、毛頭するつもりはない。もし名指しされたらその時は――、

「死ぬね、確実に」

「分かってるじゃん、彩音」

 この二週間で文化祭のテーマ、合同のテーマ、各クラスの出展、その他諸々……最初の合同ミーティングまでに決めなければいけないことはしっかりと定まった。佐知子にはこれを伝えるだけで良いと言われていたが、もしものことがある。一応、覚悟は決めておこう。

 して、翌日。

「――うん、十五人全員いるね。それじゃバス乗って。出番の少ない我が校のバスを使える少ない機会だ」

 バスでの移動で四〇分。道中、下町から新都へと変遷していく様子を眺めていたが、まるでタイムスリップでもしたかのような気分だった。それほどまでに都市開発の差が出ているという表れでもある。

 ――新都。都市開発が進み、そこかしこで見られる摩天楼。低い建物が多い下町に対し高い建物ばかりだ。下町の住人が新都にくれば、決まって威圧感を感じる。意外ではあろうが、聖はそういった新都が嫌いではない。下町に身を置いていると、どうしたって都会じみたものに憧れてしまう。基本面倒くさがりな聖だが、少年のように心を躍らせることができる数少ない好きなものであった。

「さて、新都の町並みも堪能したし帰ろう」

「何言ってんの。本題はここからだっつの」

 良い笑顔で帰る旨を口にした聖だったが、その腕を彩音に捕まれ無理やりに引きずられる。ああ、やはり逃れることはできないのか。

 眼前にそびえ立つ私立高校。金のかけ方が違うことを、ここぞとばかりに喧伝しているように感じられる外観。要するに、前面ガラス張り。どこのお坊ちゃん学校だと言わんばかりの造形に、思わず眉間にしわを寄せる。

 正面玄関――恐らく昇降口であろう入り口は自動ドアで、奥に広がるのはやや低めの下駄箱。それがズラリと並んだ奥に開けた空間がある。そこには警備員と思しき男性数人が待機する窓口、そして二階に続くのであろう階段が二つ、さらにはエレベーターも存在した。

「どーも、私共は――」

 佐知子が何やら簡単な手続きを済ませ、立ち入りを許可する旨を示した名札を受け取る。それを全員に渡し、

「さあ行くよ。会場は三階のブリーフィング室っていう部屋だってさ」

 こういった場に慣れているのか、佐知子は特に臆することなくせっせかと先を行く。聖たちは、その後を追うので精一杯だった。


 ◆


「えー、では、まず自己紹介から。私は実行委員長代理、二年、利府りふジェインと申します」

 うわ、外国人だ。真っ先に抱いた感想はその一言に尽きる。金髪碧眼は当たり前、肌は白く、一目で日本人ではないことがわかる。いやしかし、名前からしてハーフなのだろうか。であればあながち日本人でないわけでも。そんな益体も無いことを考えながら、これから訪れるであろう睡魔と闘う覚悟を決める。

「早速ですが議題に移ります。まずは双方のテーマの共有、そして合同テーマの摺り合わせから。当方のテーマは『質実剛健』――これは、祭りであるからと浮かれず、今までこの学校が培ってきたもの、この学校で培ってきたものを存分に活かし――」

それから合同ミーティングは順調に進み、情報の共有は終わる。

「では次の議題に移りたいと思いま」がちゃり。「……ああ、遅刻ですね。貴方もこの学校の生徒になったのならば、相応の自覚を持ってもらわなければ困ります」

 ミーティング中のブリーフィング室の扉を開けたのは、私服姿の少ね――少じ――どちらとも言えない、中性的な容姿の誰かであった。

「すみません。私が最初に委員長『代理』と言ったのを覚えておいででしょうか」

 ジェインの言葉やら、この場所に現れた意味を考えれば、その人物が誰かを察するのは容易。

「……どーも、遅れて申し訳ない。実行委員長の二年、多賀城たがじょう恭士郎きょうしろうッス」

「――――」

 あれ、なんだろう。聖は彼――彼女――恭士郎に、懐かしい感覚を覚える。一度どこかで会っただろうか。いいや、これだけ印象的な外見なのだ、記憶に残っていなければおかしい。残っていないということは、つまりそういうこと。であれば、この懐かしい感覚は何なのか。

「ジェインさん、会議はどんくらい進んだッスか?」

「予定していた議題はほぼ滞りなく。合同テーマも摺り合わせが完了し、ここから先は顔合わせも兼ねた交流会にしようかと」

「わぁ優秀。オレよかよっぽどこういうのに向いてるッスよ」

「ふざけたことを言わずに働きなさい、怠け者」

 新都側の実行委員長らしい恭士郎は、ジェインの隣の空席に腰をかけ、

「では改めまして、大遅刻申し訳ありませんでした。実行委員長、多賀城ッス。今日の議題はほとんど終えたようだし。せっかく二つの学校の代表が揃ってるんだ、ジェインさんが言った通り、交流会でも始めましょうか」

 席に着いた途端、彼――名前からして、恐らく男であろう――はその雰囲気を変えた。なんとなくだが……聖は、その表情が気に入らなかった。







そんなわけで新章です。ここから先、これまでとは大分毛色が違ってきます。

登場人物が一気に増える。

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