3:遭遇
俺は
今とっても
むしゃくしゃしてる。
どうしてかって?
それはパチンコで
大損したから。
ちなみに
俺は25歳の
定職に就かない
フリーター 高橋 健一。
というか
仕事もあんましてないから
ニート同然かな。
ちょっと前まで、
自宅住まいだったんだけど、
親父がついに
キレて
家を追い出されてしまった。
そんな俺の家は、
意外とでかくて
父は医者
母は化粧品会社の女社長
なんていう
とんでもない
エリートお坊ちゃん
だったりする。
だから
親戚みんなが
俺は父親の病院を継いで
エリート街道を
突っ走ると思っていた。
俺も当然
そうなるべきだと
思っていたし、
医者の父親を
尊敬し目指していた。
そして
医者になるために
どんな努力も
惜しまなかった。
中学・高校には県きっての
進学校に行き、
大学には、
超一流と言われる大学の
医学部に進学した。
遊ぶ時間なんて、
中学から
持ったことなんてなかった。
朝から晩まで
ずっと勉強。
苦にはならなかった。
なんといっても
夢のためだったし、
勉強は
面白いようにわかった。
でも
学校では
常に戦いだった。
成績によって
クラスは決められて
一番下のクラスになれば
生徒中から見下され
一番上の生徒には
誰も意見出来なかった。
まさに資本主義の学校だ。
だから
俺が
本当の友達と言えたのは
小学校の友達4人
だけだった。
全てを放り出して
遊びに行きたくなったことも
何回もある。
けど、
それが
一番、正しい道で
走り続けていなければ
みんなから
引き離されてしまう
と思っていた。
休むなんて出来ない。
ただ
ひたすら
前へ、前へ
進み続けろ。
だけど
突然、足は止まる。
俺は
大学に行って
何かが違うと思った。
見せかけだけの友人も、
楽しみのひとつさえない
俺の今の生活も。
ひとつが間違いだと思うと、
ふたつ、みっつ、と
いつの間にか、
全てが間違いなんじゃないか
と思い始める。
今までの努力、
犠牲にしてきたもの、
俺の人生でさえも。
結構、
俺は親にも言わずに
大学を辞めた。
その事を知った
親父は
俺を殴った。
小学校の時に
友人を
怪我させてしまった時
以来だった。
やがて、
俺は家を追い出されて
思い出の場所に
住んでいる。
帰路の途中、
唯一の戦利品の
チョコレートを
手にしながら
今日の晩飯は
これで我慢するしかないな
と考えた。
家の前にたどり着くと
扉が開いていた。
ボロいから
しょうがない。
いつも通り
部屋に入ると
月明かりが
ほのかに部屋の中を
照らしていた。
次の瞬間、
俺は心臓が
止まるかと思った。
ガサガサッ
闇の中で
何かが突然動いた。
「ん…?」
闇の物体が声を発し
俺は思わず身構えた。
暗さに目が慣れてくると
それが人だとわかった。
「お前、誰だよ!?
ここは俺の家だ。
……ぁ、通報!!」
ポケットから携帯を抜き取った。
「待って!!
僕怪しい者じゃなく……
こんな所に
人が住んでるとは
思わなくて。
つい、懐かしくて。」
不法侵入しときながら
結構失礼な奴だ。
まぁ、そう思うのも
無理はない。
……懐かしい?
「懐かしいって
どういう意味だ?」
「……いや、ここは元々
僕らの秘密基地
だったからさ。」
そういって、
その男は
あどけない顔で
俺に微笑みかけた。