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 影を束ねる。己が力をも束ねた。そして、生まれ出るは、ひと振りの刀。

 銘は「影虎」、自分という吸血鬼の源流とも言える己が牙。

 それが腰に確かな重みを感じさせたとき、同時に感じるのは刃物の持つ明確な重み(想い)。そして、影虎(相棒)を抜く。

 「一本だけか」張り詰めた空気を破ったの先ほどとは雰囲気の変わった両手で二本のナイフを弄ぶ金髪の声。

 「文句でもあるか」問いかける。答えは軽い笑みと俊敏な動きで返された。

 先ほどの軽薄な声からは考えつかないほどの俊敏かつ知性を持った動き。そのギャップに驚きながら無様に躱す。

 今、この場を支配するのは金属の奏でる音と夜の冷たい空気のみだ。

 金髪の動きは闇に紛れ、急所を確実に狙う。その動きは暗殺者のそれで、相当な代物だった。その動きは、この男の生きてきた年数では到底到達することは、不可能なレベルだ。

 しかし、その長い年月によって洗練された技能を凌駕しなければ、ここで無様に死ぬ。その結末のみは明確で、それは僕に緊張感を与え、自らを律するには十分だった。

 集中する。吹く風を。靡く草木を。邪念を。この世から自らの認識から廃する。そして己と相手の動きに神経を張り巡らせる。今までの無様に不格好に死に物狂いに躱していた。自分を忘れる。

 そして、認識する。動く風を。躱し。風に乗って剣を振るう。弾かれる。動揺はしない。してはならない。それは死への切符を意味してしまう。もっと、もっと削れ認識を。最小限の動きで躱して振え。

 そう自らを生きるために殺さなければいけないほどに、この男は強く師に対して純粋な敬意を持っていた。

 そんな男にも動揺が現れる。殺せない。スペックで上回っても殺せない。優位を取れても殺せない。特技を奥義を用いても殺せない。ミスは焦りを産み、焦りはミスの原因となる。

 そして、転機は訪れ、結末を迎える。

 男はナイフを外した。今しかないチャンスはもう来ない。そう思い。尊敬と畏怖の念を込め一撃を振るう。

 斬撃は男の腹部に浅く切りつけた。刀身が緋色に煌く。男はよろめき、尻餅をつく。

 そして、結末は新たなる始まりへバトンを渡す。

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