口約束
銀竜のインと名乗った銀髪の女性はパッと見男装の麗人のような風貌だった
自ら母と名乗ったので女性だと判断できたが
何もしらない人から見たら判断がつかないかもしれない
そしてここにきて今まで知ることがなかった母の名をはじめて聞いた
ファーヴニルとは仰々しい名前だな
とか考えている間にヘレネスがやってきて俺を抱えた
「イン様お久しぶりです、すぐお茶をいれますのでこちらへどうぞ」
廊下を歩きながらインは話しだした
「あぁ、ヘレネス…君の娘はこの子かい?実に礼儀正しいね」
「いえ、この子などまだまだこれからです」
「君は自分にも厳しいが子供にも厳しいのかい?」
「私達の竜血はあまり濃くないもので幼い時から気は抜けません」
「そういえばそうだったね」
「こちらの部屋でお待ち下さい、すぐ奥様が帰ってくると思いますので」
「急にすまないね、今日帰ってくると聞いてちょっと話したくなったんだよ」
俺を小さな椅子に座らせると一礼してヘレネスはカンナと一緒に部屋から出て行ってしまった
「長老、あの娘はこの子付きになるのかい?」
「そういう話じゃな」
「そうか・・・少し安心したよ」
「何が安心なんじゃ?」
よく響く女の声が扉の前から聞こえた
「やぁ・・・2年ぶりかな?私の子を紹介した時以来だね」
「インよ、くるのが早すぎではないか?」
母が部屋に入って椅子にこしかけた
「今日はちょっと君に相談というか約束をしにきたんだ」
「約束とな?」
「君の子が5歳になったら私の子に会ってもらいたいんだ」
「・・・ふむ、まぁかまわんが?それだけか?」
「それだけならよかったんだけどね、ヤツらが動きだした」
「狙いは竜脈か?」
「だろうね、今地竜領の竜脈に姿をみせているようだ」
「なるほどのぅ・・・」長老がヒゲをさわりながら呟いた
「長老・・・後2年でよい結界の維持を頼む」
「わかっておる、そこらへんはまかせておれ」
扉が3回ノックされヘレネスとカンナが入ってきた
「失礼します、お茶の用意ができましたので皆様どうぞ」
「すまないね、ん~このすっきりした味わいさすがヘレネスだ」
「お褒めに与り光栄です」
「感想が早すぎじゃ」母が苦笑していた
「ところで君はどこへいっていたんだい?」
「水竜へ協力を要請したのじゃ」
「彼女のところにかい?難しいんじゃないかな」
「しかしこれは必要な事じゃ・・・ヤツらが本格的に行動しだす前に少しでも準備をしておきたい」
「確かにそうだね、竜達は最後には無条件で協力してくれるだろうけど人には準備が必要だね」
「国を動かすにはどこも準備が必要じゃろうがインよ・・・」長老がため息をついた
「ハッハッハ、そうだったね長老私達は国の頭だった」
「さて・・・話したい事は話せたかな?」
「内容が薄かった気がするのぅ・・・」
「よい、大体のことはわかったからの」
俺にはさっぱりだぜ・・・
「ヘレネス、明日からカンナには魔法の練習と血の制御の仕方を教えていけ」
「かしこまりました」
「じゃあ私はケトス君と遊ぼうかな~」銀竜インがニヤニヤしつつせまってきた
「い、いじめるでないぞ!」母があせってこちらにせまってきた
「あ~も~わかってるってば♪そうだな、昔話でもきかせるとしよう!」
「ま・・・まぁそのくらいならいいかの?」
「わたしもききたいです!」
「ではこちらにきたまえ!むかしむかし~・・・」
銀竜インは意外と子供の世話がうまいような気がした