竜玉の間
翌日集められた領民達の前で俺はファーヴニルの息子だとお披露目された
この時初めて領主の子として認識されたのだ
領民達は歓喜した
そして嘘の情報を掴まされる
俺が各国へ期間留学しにいくという事だ
その場で疑問を口にする事もできず
幼いのに立派だとか
竜人様の子はやはり出来が違うなど
嬉しくもない言葉が飛び交った
領民達が解散した後俺は母に聞いた
疑問がいくつも浮かぶからだ
その中で一番気になる点だ
やはり何故誤情報を領民に与えたのか
「母さん、何故留学など嘘をついたのですか?」
「ケトスよ民が知る事ではないのだ特に竜人が何をして何を守っているのかなどな」
すぐ傍で歩いていたヒューレンさんがこう続けた
「民達の多くは竜人がこの地を治める人としか認識がないのさ竜人は一部の物好き以外は王族という認識に近いからね」
よくわからない世界だ俺がこの世界の住人じゃないという事を再認識させられた気分だ
「全てを説明するには普通の人に必要のないことじゃ」
母さんが領主だったので今は本来使うはずだった屋敷にいる
ここは母さんが育った場所だそうだ
俺はその屋敷の一室で静かに待っていた
「ケトス様、準備が出来たそうです」数回のノックの後カンナの声が聞こえてきた
「わかった、今出るよ」
部屋から出るとヘレネスとカンナが立っていた
「ケトス様今から竜玉の間に行きます緊張せず、ついてきてください」
静かにそう言うとヘレネスが屋敷の中にある一室に案内した
竜玉の間
竜玉の間は殺風景で薄緑の部屋中央台座に緑の玉が置いてあるだけだった
そこに母さんとヒューレンさんがいた
「ケトス心して聞くがよい竜玉に触れると竜核を通して意思が混入してくるじゃろう、だが恐れるなそれに耐えれば
今後の竜玉に触れた時もさほど苦労しないじゃろうて」
なんでもないように言葉を続ける
意思が混入?誰のだ?俺は俺でありつづけるのか?
俺の理解の外で事態が少しずつ進行していく恐怖があった
「母さんを・・・信じます」
だが一度失った命だここで終わってもいいだろうという諦めがあった
もともと俺はいつ死んでもいいと思ってたタイプなのだ
ただ突然の死に納得がいかなかっただけなのだ
納得のいく死など無数の死のなかにいくつあるのかわからないものなのだが
意を決して小さな手を竜玉と呼ばれる玉にのばす
触れた瞬間
どこぞのゲームにあるような世界にダイブする感じになり
視界が黒くなる
その瞬間心臓に触られたような感覚におそわれた
そして声が聞こえた
-汝我と理想を共にするか否や-
誰だ
-汝魔の者を無常の敵と見ゆか-
魔の者魔物の事か・・・?
-汝世界は一つに在らず-
わかってるさ・・・だけど俺じゃ今は証明できない
-否、理を見つけよ-
理・・・
-汝我と共に在り-
俺が答える前にいきなり繋がりを絶たれたように視界が竜玉の間に戻った
気づけば凄い汗だ
息も少しあらかった
「ケトス大丈夫か?やはりキツかったか?」
少し心配そうに俺の顔を母さんが覗き込んでいた
「大丈夫です、誰かはわかりませんが声が聞こえました」
「して、何と申しておった?」
数回言葉を交わしただけだけど
世界は一つじゃないとか魔の者を敵にするなとかそんな事だったっけか?
意味があまり理解できないな・・・
「世界は一つに在らず、理をみつけよと・・・それと魔の者を敵にするなと?」
「そう・・・か、魔の者とはおそらく竜人以外の人外の事じゃな・・・」
「人外ですか?俺は竜人以外では妖精しか見た事がないですね・・・」
「よし、わかった竜玉の間を閉めよ今日アーカーシャへ転移門を開く出立の準備をせよ」
その言葉を聞くと皆一斉に動きだした
俺も荷物を少し準備しよう
どのくらいの期間アーカーシャにいるかわからないからな・・・
数時間後
何もない大きな一室に皆が集まっていた
カンナは背中にリュックを背負っている
俺も必要最低限の物を持ってきた
母さんが両手を高くあげ何やら集中しだした
転移門とか言ってたからゲート・オブ・バビ○ンとかいうのかな?
とかそんなあほらしい思考をしていたら
「転移!門!アーカーシャ!」
何の変哲もない呼び出し方だった
「ケトスよしばらく会えなくなるが息災でいるのだぞ」
母さんが俺に声をかけてきた
「はい、言ってまいります」
少し離れたところでヘレネスがカンナに何かを言っている
準備が出来たのかカンナがこちらによってきた
「ケトス様行きましょう」
「うん」
ヒューレンさんがゲートの前に立って俺達を待っている
「ヒューレンさんアーカーシャまでよろしくお願いします」
「ハハ、すぐつくだろうけどあちらについたら一休みするといいよ」
ヒューレンさんが母さんを少し見る
「姉さん行って参ります」
「頼んだぞ」
その言葉を聞き三人で転移門をくぐったのだった




