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すれ違いの結婚  作者: 桜子
9/110

遅くなる理由

ようやく取れた昼休み、僚は妻が作ってくれた弁当を広げる。


貿易業界の仕事は一見華やかそうに見えるだろうが、時間勝負の世界だ。国が違うと、色んなトラブルが起こる。サラリーマンのように12時かっきりにランチがとれる事など、まずない。


こうして詩織がお弁当を作ってくれるようになって、わざわざ外に出なくても良くなった。コンビニに行く手間も省ける。おかげで仕事の能率があがっているのは、確かだ。





内助の功とはこういうを言うんだろうな。思わず顔がにやつく。





「お弁当ですか?美味しそう!」昨日から新しく入ったアシスタントの佐藤圭子が声をかけてくる。


「ああ、まあね」


「お母様が作ってくれてるんですか?…それとも彼女さん?」


「いや、妻だ。」


「えっ!?桜井さんって結婚してるんですか?」


「俺が独身だと思った?」


「だって、結婚指輪もしてないし、てっきり独身かと思ってましたぁ~…」明らかに落胆した表情を浮かべる。





結婚してもう半年以上経つのに、指輪を買ってないのは理由があった。



結婚するとき、もう結婚式や披露宴などウンサリだと正直に彼女に話した。


「もうそんな事を夢見る年じゃないわ。一切しなくて大丈夫よ。指輪もドレスもいりません」そう言ってくれた。


元妻とはオーダーメイドで指輪を作った。だがそんな指輪は一年と持たずゴミ箱行きだったではないか。結婚指輪は永遠の証?そんなのウソッパチだ。



「嫁さんは、そういう形にこだわらないんだ。それより書類今日中に頼む」


「すみませ~ん、今日親の具合が悪くてぇ、定時であがります~」スタスタと去っていく。





僚はあっけに取られた。




昨日まで「あたし桜井さんのためなら、なんでもします!残業でもなんでも言いつけてください!」と瞳キラキラ、ウルウルで、言ってたクセに。




それに比べて詩織は…。



結婚した途端さっさと退職したのには驚いた。仕事が生きがい、と言ってたのに。


一瞬、俺と結婚したのは専業主婦になりたいのからなのか?と思った。しかし3日後にすぐパートを決めてきた。と思ったら、2ヶ月前「フルタイムで働きたいから扶養外になりたい」と言ってきた。もちろん、快諾した。自立した女がいい。依存されるのは真っ平ごめんだ。


しかも働く時間はのびても、きちんと家事をこなしてる。お弁当も夕飯も毎日ちゃんと作ってくれている。



でも、いくらなんでも、最近の詩織はキツそうだ。仕事をして、家事をして。疲れているのが目に見えてわかる。そんな彼女を心配して、「無理に弁当作らなくてもいいぞ」と声をかけておいたが、あいつはああいう性格だから、明日もきちんとこしらえるだろう。




あいつは本当に働き者だ。いい嫁さんもらってよかったな…。





弁当を掻っ込んで、すぐに仕事に戻った。きちんと栄養が取れている体は、寝不足ではあるが体調がすこぶるよく、仕事もサクサク進む。おかげで今日は早く帰れそうだ…。




7時過ぎ、帰り支度をしていると、部下の山下進が「あれ、今日はもう仕事おわりですか?」と声をかけてきた。



「桜井さん、近くにいい店ができたらしいっすよ!一杯いきませんか?」



コミュニケーションも、仕事のうち。「わかった、じゃあ行こうか」



結局グデングテンに酔った山下をタクシーに押し込み、ようやく帰宅できたのは深夜一時だった。



詩織はすでに寝ていた。

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