夜の生活
大人の時間です
時計はすでに深夜0時を越えていた。玄関の扉が開く音がする。夫が帰ってきた。
「あら、おかえりなさい」
詩織は笑顔で話しかける。いかにも今まで夢中で本を読んでた振りをして。
「起きてたのか?」僚は少し顔を曇らせた。
今か今かと帰りを待っていたのが、わかってしまったのだろうか?
「今日お昼寝しすぎちゃって…全然眠くないの」
なるべく自然に、言い訳がましくならないよう、ゆっくりと答える。
「ならいいんだ。起きて待っていられると、無言のプレッシャーかけられてるみたいで、息がつまる」
完全に私の「眠くないふり」を見透かしている。
いつだって、彼の望むような妻でいたいと思うのに。そのためならどんな努力だってすると自分に誓ったのに。また私は失敗してしまったらしい。
これからは絶対起きて待ってるような真似はしまい!
「私は男の帰りを待ってるような女じゃないから安心して。もう寝るわ、おやすみなさい」
わざとあくびをして、本を持って寝室に向かう。もちろん部屋も別々だ。
「…詩織」僚が手首をつかむ。
「どうしたの?」
そのまま強引に振り向かされ、後頭部に手をまわされたかと思うと、深々とキスをされる。
「んっ…」思わず甘い声が漏れてしまう。
そのままソファーに押し倒され、下着ごと一気に引きずり下ろされる。
突然の夫の行動に、あえぎながら「あ、・・・イヤ」と思わずつぶやいた。
夫の好みは胸が大きく、グラマラスなタイプだ。連れていた女性もそこだけは絶対共通していた。それに比べて158cm、42キロの細い体はさぞかし貧弱にうつっていることだろう。
だからいつも部屋を真っ暗にして欲しかった。こんな明るい部屋で自分の体を見られるのは恥ずかしすぎる!
僚は、すぐに手を止めた。拒絶と受け取ったのだ。
「…悪かったな」脱がしかけの詩織の服をさっさと元に戻し、「お休み」と言って寝室に消えた。
ちがうの、ただ部屋を暗くしてほしかっただけなの…
いつでも、もっともっと触れて欲しい。
わたし、だけを…