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すれ違いの結婚  作者: 桜子
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僚という男

僚は、とにかく多趣味である。


車、モトクロス、ウィンタースポーツ、加えてパーティも大好きだ。


独身時代から求めるものは自由、そして刺激。

詩織はそんな俺を全部わかっていて、理解してくれる貴重な存在。


今日みたいに1人出かけても、誰と?とか何処に?など、一切言ってこない。

詩織は料理もうまいし、部屋もキレイにしてくれる、しかも経済観念がしっかりしている。

元妻にはとても怖くてカードなど渡せなかったが、詩織はきちんと家計簿をつけ、レシートまで保管する。しかも「家計の内訳がいつでも見れるように」と目の届く範囲においてあり、月末には、食費にいくらかかったか、貯金はいくらできたか、など報告してくる。


小さい頃、おこずかいだけでやりくりしていたクセだという。



僚は今の現状にとても満足していた。



今まで付き合ってきた女どもは、少し他の女と話したりしただけで、ぐちぐちと文句をいったり、すねたりしてきてメンドクサくなってきては、別れてきた。

付き合う前に必ず、束縛しないというのが条件と言ってあるのに…

一度結婚したものの、なんとその妻は若い男とあっさり浮気し、すぐに離婚した。



でもいつまでも1人でいるわけにもいかないんだよなぁ…と考えていた矢先だった、あの奥手の塊の詩織から告白を受けたのは…



自慢のアルファロメオに乗りながら、ふと僚は詩織の事を考える。



詩織は家庭が複雑だ。

なんでも父が浮気して、詩織の本当の母親を追い出し、浮気相手を後妻にしたらしい。

詩織は、グラマーで傲慢な姉と、すぐ暴力を振るう父と継母にいじめられて育ったからか、

はたから見れば「かわいい」と「美人」両方の魅力を備え持っているのに、本人は全くその自覚はない。



詩織を連れてパーティ行くと、必ず誰かから「あの子は誰?」と聞かれるのが嬉しくて何度も何度も集まりに誘っては、俺の女友達と紹介して、いい気分になったものだ。


詩織は身持ちが固く、誰にも電話番号はおろか、メールアドレスさえ交換しない。

理由は5年にも及ぶストーカー男のせいだ。

彼女は「私何か怨みでも買うような事したのかな…」と悩んでいたが

俺は「それは詩織がかわいいからだ」とは絶対に言わなかった。

結局ストーカーは誰だかわからず、彼女はとうとう引越しをした。


それから詩織は、一度や二度会ったくらいの男には絶対に軽々しく連絡を取り合ったりしないのだ。


そんな彼女を、「俺だけの女友達」として自分に沿わせることは、男心をくすぐるのだ。



とは言っても、詩織には常に男はいた。



専業主婦である継母に中学から小さい頃から弁当さえ作ってもらえなかった環境は、ごく自然に料理を上手くしていった。しかも従順であの見た目。

大抵の男は、彼女の一途さと家庭的な性格にあぐらをかき、浮気心をだし、詩織から別れを告げられる。


あまりにも詩織が従順だから浮気の一つや二つでは別れないだろう、と男はタカをくくるのが大きな間違いだ、と俺は思う。


浮気が事実だとわかれば、その場で別れるというのが詩織という女。

その場でおこりもしない、泣きもしない、わめきもしない詩織は、俺の前だけでボロボロと泣くんだ。


別れても一ヶ月とおかず、新しい男がいい寄ってきて、押されて押されてしぶしぶ彼女は付き合う。


詩織は本当にモテる女なのに、自覚がないのが、また魅力の一つであるのだと思う。




そんな彼女を「自慢の女友達」において置いた理由は、詩織と絶対に別れたくないから。



自分の女にしてしまえば、いずれ別れが来る。

詩織は愛に飢えてるから、束縛するだろうと考えていた。

彼女と会えなくなる事、束縛されること、僚にとって最も意に沿わぬ事だ。



友達なら絶対に別れる事はない。



だから彼女には手を出さなかった。

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