休日の過ごし方
休日の朝、朝早く起きて僚が向かった先は、会社だった。
日曜日の静かなオフィスは、人がまばらで、スーツでなく私服でいいから、リラックスして快適に仕事がこなせる。億単位で扱う仕事が増えてきたため、慎重に進めたい商談の前には、あえて休日出勤をするようになった。
詩織に「仕事に行く」というと、きっとお弁当やら、朝食やら、せっせと用意しだしてしまうだろう。仕事も家事も頑張ってるから、俺の休日くらい、ゆっくり寝かしてやりたい。そう思ってまだ寝ている間にこっそり出てくる。
あいつ、まだ寝てるかもな…。
詩織の寝顔を想像しニヤけつつ、書類を取り出す。今度の商談先は中国だ。総責任者に抜擢された。これが上手く行ったら、間違いなく昇進は確実だ。妻は喜んでくれるだろう。
…あいつの事だから、昇進したなんていったら、はりきってケーキとかシャンパンとか用意しちゃうかもな。と思うと俄然やる気が出てきた。
よし、揚げ足を取られないようにしっかりせねば!意識を書類に集中させ、仕事に没頭していった。
気づいたら日が暮れていた。お腹がぐうっとなる。
コンビニに行くのもめんどくさくて、たっぷりミルクの入ったコーヒーを何杯の飲んだから、お腹はタプタプで気持ち悪い。いつもこうだった。詩織と結婚するまでは。
さて、帰るか。きっと妻もゆっくりとすごせただろう。
手料理も捨てがたいが、夫婦水入らずで外食でも…と思った瞬間、携帯が鳴った。
着信名は保。
「おい、今何してるよ?」
「今、ちょうど仕事終わった所だよ」
「ちょーどいい、今飲飲み始めたところなんだ、お前もこい!」
「ん~どうしようかぁ・・・」
「あ、ひどい!こんな振られたてのボクをほっとくつもり?」
「振られたって誰にだよ?前、飲み会で知り合ったカオリとかいう女か?」
「それ、いつの話だよ。今朝通勤途中で見かけた女子高生にアドレス教えて?って言ったら、バカじゃないって言われたんだ、振られたんだよ~」
お前は、アホか・・・・。
「今日は、ちょっと・・・」
「なんだよ~、冷たいな~、ひどいな~、俺さみしくてしんじゃいそうなんだよ~、慰めてくれたっていいじゃんかよぉ~俺達の友情ってそんなものかよ~」
「わかったわかったよ、すぐいく。いつもの店だよな?」