胸の内
「じゃ、行ってくる。」休日の今日も、僚は出かける。
「あ、待って!はいこれ、言われてた来月のシフト」と詩織からメモを渡された。
「わかった。」僚は受け取ると、車に乗り込み、発進させた。今日は仕事仲間らと釣りにいく予定だ。
すると慶介から電話がかかってきた。
「おおい、今度の連休だけどさぁ」
僚は先ほど渡されたメモをがさがさと取り出した。「悪い、その日はダメだ。」
「へ?確か昨日はあいてるっていってなかったっけ?」
「その日曜日は詩織がようやく休みをとってくれたんだ。だから…」
その先は恥ずかしくて言えなかった。
「はいはいわかりましたよ、ご馳走様。じゃあまたな!」慶介はくっくと笑いながら電話を切った。
詩織はまた働き始め、頼まれたからと言っては、週末に仕事を入れる。
今では僚が彼女の日曜日休みにあわせていて、それでようやく一ヶ月に一回二人の時間が出来ている。
僚は二人の時間が少ないのではないかと言ったことがあるが、
「一緒にいるほど、ケンカは多くなるから、これくらいが私達はいいんじゃない?」と平然と答えられてしまった。
彼女というとおり、確かに言いたいことを言い合う今、ケンカは多い。
こうして結局のところ、あまり二人の生活は変わっていないと感じた僚はある日、正直に胸をうちを明かした。
「日に日にお前がどうしてほしいのかわからなくなっていくぞ。」
「じゃあ、もっと考えたら?」と見事にさらりと流された。