表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すれ違いの結婚  作者: 桜子
104/110

心の奥

「お前がメイファンと俺の仲を疑ったのは、きっと当然の事だったんだ。俺はお前と結婚していなければ、確かに彼女と関係しただろう…。」



僚のその言葉に、詩織は凍りついた。



だがすぐに、自分を奮い立たせた。


しっかり事実を受け止めるのよ。私には、もうなにも怖いものなんかない。





「そうね…二人にとって、あたしこそが邪魔者だったんだわ。」





「メイファンの勝気そうな瞳に引かれてた。でもいつも思ってた…彼女はどことなく、誰かに似ていると…。でもずっとわからなかった。だが今日お前の姿を見てようやく気がついた。



お前に似てるんだ、と。



強い自立心、いつでも先を見て歩いている姿、やたら正義感が強い強気な態度、意思の強そうな瞳…全てお前とかさねてたんだ。メイファンだけじゃない、今までの女もどこかお前に似ているところを探してた。」






「わ、私は…あの女性とは、似ても似つかないわ!あなたは勢いで結婚したものの、私がいる家に、帰りたくなかった…。だからあんなにも仕事にのめりこんだのよ。


あなたにとって、私は全てのおいて役不足だった。そんな事はとっくにわかっていたわ。だから今更責める気もないし、目移りしたからと言って慰謝料を要求する気もないの!」




一気に涙が溢れ出した。




「せめて、せめてキレイに別れてあげたいと思っていたのに…。ただそれだけが私があなたにしてあげられるたった一つの事なのに…どうしてそれすらもさせてくれないの?



 私は、そんないいわけじみた言葉を聞きたくて、わざわざここにきたんじゃないわ。

 

 

 

本当に愛しているのは、彼女なんでしょ?私は本当に何もかもわかってるのよ。お願いだから、これ以上惨めにさせないで!」






叫ぶように言い切った瞬間、詩織は僚に抱きしめられていた。




「本当に、違うんだ!結婚してから、お前の側にいることがどんどん居心地がよくなって…ゆっくり時間をつくるために、必死で仕事をこなしてたんだ。


昇進もかかっていた。あとひとつ上にあがりさえすれば、あちこち出張にいく事もなくなる。俺を動かす原動力はいつだってお前なんだ!」






「何を言ってるの?意味がわからないわ…」



詩織は腕を振りほどこうともがいたが、さらに強く抱きしめられた。





「俺がずっと手を出さなかったのは、絶対に離したくなかったからだ。


俺は最初のあの苦い経験から、自分の女にしてしまえばいずれ別れが来ると思い込んでいた。俺の側からお前いなくなることなんて、考えることさえ出来なかった。だからずっとずっと手をださずに我慢してきた。




…自分でも気づかないくらい、お前は…ずっとずっと…俺の心の奥に…いたんだ…。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ