プロローグ
初、小説です!ドキドキしながら書いてます
思いっきり切ない大人のリアルストーリーを書いていきますので、よろしくお願いします
桜井詩織は「いってらっしゃい」とにこやかに笑い、誰よりも愛しい夫・桜井僚を送り出した。
結婚して半年、いわゆる新婚といわれる時期だが、休日の今日も、僚はどこかへでかけてしまう。
詩織はキッチンの窓から見える雲ひとつない青空を見て、小さなため息を一つ、ついた。
僚と結婚するまで、長い長い友達期間があったから、彼がどんなに束縛を嫌い、自由を求める性格かを充分わかっていた。だからあえて誰とどこにいるかなど聞きはしない。
ただ、笑顔で送りだすのみ。
そもそも僚の妻になれた事が奇跡。これ以上望むのは贅沢なのだ…
二人の出会いは、友人の知り合い同士。何度となく偶然にすれ違い、さすがに3回目にばったりカフェで出会ったときは、互いに「何かの運命かもね」と笑いながらアドレスの交換をした。
僚はとにかくモテる男だった。スラリとしたスタイルに、優しげな顔立ちに、気さくな性格、男女問わず誰にでも受けるタイプの男だった。
出会った当時僚には可愛らしい彼女がいたが、10才も年上の男に寝取られて別れたとき、めちゃくちゃにあれた僚を、詩織はバイトを休み、海に連れて行った。
堤防に座る詩織に膝枕にされ、夕方までぼーっとした彼は少し落ち着いたようだ。帰り際僚は「お礼」と言って詩織のほっぺにキスをした。
その瞬間から、詩織の長い長い片思いが始まった…
それからというものの僚は、どこか女性に対して一歩距離を置き、新しい女に目移りし、飽きたら捨てを繰り返すようになり、詩織はそんな彼をずっと見つめつづけていた。
詩織は元々華やかな家族の中で浮いた存在で、豊満な姉からは「地味ね」浮気を繰り返す父からは「ブス」と言われ育ってきた為、驚くほど自己評価は低かったが、けして元が悪いわけではない。髪をきちんと整え、化粧をするようになってから、実際寄ってくる男はたくさんいたのだ。
ただ、詩織本人は気付くこともなく、いつまでも容姿にコンプレックスを持っていた。
長い片思いに耐え兼ね、何度も何度も告白しようとしたが、恋人になって捨てられるよりずっとそばにいられる一番の女友達の座に甘んじた。
僚は集まりやパーティに事あるごとに、よく詩織を誘う男だった。行けば彼の女に会うのがイヤで、ほとんどは断っていたが、あまりに誘いをむげにすることができず、出席したことが何回かある。
決まってその場で「彼は私のものよ」とこれ見よがしにアピールしているわがままそうな女達に、嫌悪感しかわかない。そしてそんな自分にウンザリする。
僚はどうして、こういう集まりに、私をしつこく誘うのだろう…。
「私、大勢での集まりは苦手なの」と何度となく僚に言ってきたが、
「大丈夫だから!」「楽しいから!」あげく「絶対に来い!」と言われしぶしぶ参加することがほとんどだった。
彼が散々付き合って、結局結婚したのは、ダンサーの女性。
詩織が見てきた歴代の僚の彼女の中でも、目立つことが好き、注目されることが好きの、とにかく派手な女だった。彼らの結婚式はこれ以上無理、と思うほどの作り笑顔を振りまいた。帰り道、詩織はあふれる涙を止めることが出来なかった。
そんな派手な女との結婚など上手く行くはずもなく、「離婚した」というメールを受け取ったのは一年後。
もう躊躇はなかった。
一生に一度の勇気を振り絞り「あたしじゃ、ダメ?」と彼に言った
僚は詩織の告白にとても驚いていたが、最終的に首をたてに振ってくれたのだ。
この日から新たな詩織の苦しみが始まった…
さて、次は夫・僚のお話です